2009年5月15日<No.052>
良い季節になりましたが?
4月、5月は庭の花々や新緑でなんとなく嬉しくなる季節。素人の間違った山菜採りによる事故を除けば食中毒の発生は少ない時期でしょう。ただ、祭日休暇が多くなって気もそぞろなるせいでしょうか、異物混入事故は多くなるようです、食品メーカーの従業員のみなさん、ご注意のほど。
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| スズランとミヤコワスレ、けなげに咲いています |
さて、ここのところの新聞、テレビ報道はいつものように、どこも新型インフルエンザ関連のニュースばかり。感染者数は30数カ国で6千人、死者は60人をオーバーした、WHOの国際チームでの推計では致死率は0.4%でアジア風邪に匹敵など、嫌がおうでも目や耳に飛び込んでくる毎日です。
この影響は問題を多発してきた食品業界にも及び、当初外食関連などでは「当店ではメキシコ、アメリカ産豚肉は使用していません」と張り紙をするなど、過剰反応がみられたようです。先日、当方客先のメーカーさんでもこれに関連した話が出ました。納入先から「新型インフルエンザ対策としてメーカーに調査を依頼しています、ついては貴社のエキス製品の殺菌温度を教えて欲しい」との依頼が来ましたとのこと。「どうせ、この問題についてのさほどの知識のない上司に云われて依頼したのだろうが、云われた部下も大変だね、それを聞いてどうするんだろうね」と話しておいた次第。
風評被害の拡大防止ということなのでしょうが、食品安全委員会から〈 豚肉・豚肉加工品は「安全」と考えます 〉という委員長談話が出ており、これで十分と思います。さらに農水大臣の会見でも繰り返し強調していますが「輸入されている豚肉は殺菌(滅菌?)されているので安全」というのは頂けません。CDCの「適正に取り扱われ調理された(71℃以上)豚肉製品を食べても安全です」からきているのでしょう。国民に誤った知識をあたえないように、このような発表は専門知識も兼ね備えた食品安全委員会なり、国立感染症研究所に一本化すべき。
大手のメディアではあまり取り上げていませんが、日本でのCDCに当たる?国立感染症研究所岡部センター長は記者会見で、「今回のウイルスは弱毒性で、軽視もできないが極端に恐れる必要もない、正しい知識を身につけて行動すべき」と述べていますがその通りでしょう。
素人目の話ですが、新型インフルエンザ対策は通常の季節性インフルエンザと同様の対策しかないと思います。主な感染経路は飛沫や接触感染で、その防止は、人混みは避ける、マスクで飛沫を広げない、鼻汁や痰などを含んだティッシュの適切処理、正しい手洗いの励行など。そしてタミフル、リレンザのような抗インフルエンザ薬も効果はあるようですし、先にはなりますがワクチンも用意されることでしょう。
通常のインフルエンザは第5類・定点観測感染症に指定され、国立感染症研究所や地方自治体の感染症情報センターなどから週報として公表され、グラフで発生状況も確認できます。消化器感染症ではありますが、最近食品業界で問題となるノロウイルスも同様に公表されていて、当方の従業員教育でも「そろそろノロウイルス感染が増えてきました、これからは手洗いを念入りにして事故防止をしましょう」というように利用しています。
新型インフルエンザの国内感染は未だありませんので(カナダの研修旅行から帰国した学生・教員の4人の感染は確認)無理でしょうが、○○日現在、感染者は××人、死者△△人といったその時点での数字からは何も得られない。東海コープ事業連合商品安全検査センター長の斉藤さんがフードサイエンスで述べているように、行政情報やメディアの報道には毎日出てくるWHOやCDCのデータをグラフ化して提供して欲しいとのこと、ごもっとも。
ちなみに、毎年流行する通常のインフルエンザはワクチンも結構行き届いているのでしょうが、1年間に約1,000万人が罹患して約1万人が死亡しているという研究結果のあるとのこと(厚労省:事業所職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン)。
WHOでは機内検疫が感染拡大を減らす効果はないという見解を示しているようですが、日本(と中国)では水際作戦とかでまだ続くのでしょう。空港での完全防護服を身につけた多くの検疫所員が機内に立ち入っての行動や、病院での感染疑いのある帰国者の隔離状況などの映像を毎日見せつけられては、どんなに冷静な人でも恐怖にさいなまれるに違いありません。メディアの報道姿勢が問題とされるこの頃、何とかなりませんかね。

2009年4月6日<No.051>
活力のない社会に?
中国産うなぎを三河一色産と偽装した事件で不正競争防止法違反による神戸地裁での公判が始まり、主導した2人には2年6月が求刑されたとのこと。それでも産地偽装は相変わらずでタケノコ、フキ、ハマグリなど、山形の業者では餅の期限偽装など、どこまで続くのでしょうか。昨年夏までの好景気も地方の中小食品関連までは行き届かない中で企業の存続、従業員の生活を守るためということなのでしょうが。嘘をつくのは悪いことですが気の毒にも感じるこの頃です。
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20年ほど前に購入したアカヤシオつつじ?が満開と
なっています |
3日、農水省が発表した前年度のJAS表示違反による改善指示は118件と19年度の4割り増しで、都道府県によるものは77件と2/3を占めています。また、昨年12月まで45件だった都道府県の指示・公表は約3カ月間で77件に増えたとのこと。この増加は、JAS表示違反での指示と公表が都道府県で一貫していないという批判で、1月に農水省消費・安全局から発出された「JAS法に基づく指示・公表の指針の改定について」を受けてのものでしょう。
そんな中、タケノコの産地偽装を続けてきた福岡の業者は「20数年前から中国産を国産と装っていた、取引先の問屋から取引停止もあり、つぶれるかも」との中で告白に踏み切ったとのこと、よほどの覚悟を決めた行動だったのでしょう。偽装は昨年12月でやめ、未出荷分と自主回収した計70トンは焼却する方針とのこと。それでも福岡県からJAS違反の改善指示がなされて、HPで公表されています。これまでの不正を悔い改めたいと思っても、その結果として倒産の憂き目に合うとわかれば誰も好きこのんで告白などはしない、闇に埋もれて延々と摘発が続くことになります。
そして、千葉県は県内業者の産地偽装を知りながら、JAS法に基づく改善指示をせず、公表もしなかったとして、農水省は3日、千葉県に対し、速やかに同法に基づく指示や公表を行うよう文書で要請したとのこと。これまでは、それほど悪質ではないと判断して、情状酌量で改善指導で済ませてきたきたものまでも洗いざらい公表ということになるのでしょう。食品業界は地方の中小零細が支えてきました。これらが消えてしまえば地方自治体の財政も逼迫し、今叫ばれている地域間格差は益々広がって活力のない社会になることが危惧される。
農水省・消費安全局の基本理念には、1.消費者の視点を大切にして、国民の健康を守ることが何よりも重要であるという考え方の下で、「食」の安全と安定供給を確保し、消費者が「食」に対する信頼感を持てるような政策を実施します。2.食品の安全性を確保し、家畜や農作物の病気や害虫を防ぐために、科学的な根拠に基づき、国際基準に沿って、リスク分析の考え方に従って施策を実施します。3.「食」に対する消費者の信頼が得られるよう、安全性をはじめとした食品に関する情報の提供が必要で、個々の食品についても、わかりやすい表示を進めることにより、消費者が正確な情報に基づいて食品を選択できるようにします、とあります。
しかし現在の状況はどうでしょう。消費安全局の業務の中心は、「食の安全性」に直接関連するとは思えないJAS表示違反の根こそぎの摘発とその公表という制裁措置。消費者の「食」の信頼感を高めるというのが目的のはずですがとてもそうは思えない、メディアの火に油をそそぐ報道と相まって、逆に不安を高めているように見えるのは当方だけでしょうか。
昨秋、政府の事故米を悪用した不正転売事件が起きました。農水省では、これを契機に12月から輸入米についてカビ発生の点検を進めてきましたが、検出が相次ぎ、約2カ月で57件に上った、また、12月15日にカビ状の異物が発見されたものからはアフラトキシンB1も検出された由。それ以前は、このような問題を抱えた米も野放しで売り渡されていたということでしょうね。管轄の総合食料局の廃止が検討されているようですが、食糧庁の廃止に関わる組織変更でもわかるように、名前を変えるだけで根本的な対策は取られないのでしょう。
事故米不正転売事件に関して、当初被害業者とされていた酒造会社が三笠フーズに精米の依頼時に等級の低い米に差し替え、その利ざやを双方で折半していた問題も発覚しました。この米を使用して醸造した酒のラベルには、原材料として「米」で表示しているのでしょうから、法令違反にはならないと思いますが?。
最近は企業倫理やコンプライアンスという言葉が盛んに使われます。不二家問題で信頼回復対策会議議長をつとめた郷原弁護士は、コンプライアンスとは法令遵守だけではない、社会的要請に応えて企業の目的を実現することと述べています。社会的要請はその時々で変化していくものでしょう。「これまで問題がなかった」、「他の会社もやっているから」では生き残ることが難しい時代にあるのでは。

2009年2月4日<No.050>
フグによる食中毒
ここ数年1月には何かが起こると前にも述べていますが、今年は平穏に済んだようです(産地偽装、意図的な異物混入は相変わらずですが)。中国製冷凍ギョーザによる食中毒事件発覚から1年たち、国内メディアでは一斉に特集を組んでこの事件を報道しています。キーワードは中国産と冷凍食品、このような悪意のある事件は産地や特定の商品に限ったものではないのですが(国内で頻発している針などの危険異物や殺虫剤混入をみればわかりそうなもの)。この事件を受けての東京都の調理冷凍食品への原産地表示が6月に始まります。大手メーカーはその対応が着々と進んでいるようですが中小零細さんはどうでしょうか。
そして、昨年起きたメラミン問題の中国での裁判では元酪農業者ら3人に死刑、乳製品大手メーカー「三鹿集団」の前会長には無期懲役(上告はしているようですが)、幹部3人には懲役5〜15年が言い渡された由。罪状は公共安全危害罪とのこと、何ともおそろしいと感じたのは当方だけでしょうか。役人の汚職での極刑判決も耳にします、このようにしないと中国政府の体制が維持できないということでしょうか、
先月末、隣県鶴岡市の料理店でフグ食中毒事故が発生して客7人が中毒症状を訴え、うち1人が重体に陥ったとの報道がありました。毎年フグによる食中毒は発生していますが最近はほとんど家庭での調理でしょう。
また、フグをめぐっての問題は築地市場でたびたび発生しています。ここ2年の間に、仲卸業者による資格のない販売業者への販売、大手卸による資格を持たない仲卸業者への販売や仲卸業者の調理師による内臓の不法投棄などが発覚して都条例違反で行政処分を受けていますし、今年1月半ばには仲卸による配送先の間違いも起きています。微生物による食中毒と違って売買の双方で気をつければ問題は起きにくい性質のものと思いますが。中小零細業者にはこのような情報は届かないのでしょうか。
この料理店では鮮魚店からヒガンフグを未処理のまま購入し、調理して客に提供したとのこと。その後の調査では料理店経営者はフグを取扱う資格がなかった、フグの種類や精巣、卵巣の区別もつかなかったと報道されています。お客さんを喜ばせようと思ったのでしょうが、調理未経験(これまでは調理済みのものを購入)でとは、何ともはや云いようがありません。
一部のメディア報道では、東北ではフグの販売、調理についての条例制定がないことを指摘しています。当地域でもフグの取扱いは、ふぐ販売等営業届出施設で経験があり、実技を含めた講習を受けて登録者としての登録が必要となっています。事故を起こした料理店では、営業開始時に保健所に対して「フグは取り扱わない」と説明していたとのことですから営業禁止処分もやむをえないでしょう。
今回の事故に関して当方の地方紙にフグを売った側の鮮魚店の取材記事が載っていました。「料理店主とは10年来の付き合いで、資格は当然持っていると思った」、「うちの店でもこれまで未処理のものは仕入れしていない、販売用ではなく自宅で食べるため市場で購入した」、「店の隅に置いていたものを料理店主に欲しいといわれ、なじみの客だったので」など。そして、「料理店主に『資格を持っているか』と聞いていたらこのような事故は起きなかった、残念でならない」と後悔の弁。
これからになりますが、健康被害を受けた料理店客から損害賠償訴訟を起こされる可能性は十分にあります。似たような訴訟では平成11年に発生したイシガキダイによるシガテラ食中毒事件があります。この時は不法行為ではなくPL法による訴訟でした。対象の割烹料理店側は開発危険の抗弁が存在するとして争いましたが、公表された事例が複数報告されて保健所などでも入手可能であるなどで、被告は認識することが不可能であったとはいえないとして、PL法で客8人に対して1千200万円強の賠償命令を受けています。訴訟を起こされた場合、当事故では民法の補完法であるPL法ではなく、明確な根拠での不法行為責任による訴訟になるのでしょう。お客さんを喜ばせようという善意で、背伸びしてしまった代償は何と大きなものだったのでしょう。
八王子の道の駅で販売されていた薫製品(スモークベーコン)でも無許可製造販売が判明し、保健所は食品衛生法違反で当該業者に製造の中止、製品の撤去が指導とのこと。零細業者さんといえども提供する製品、法令の知識、情報の収集などに努めないと食品業界全体に迷惑を掛けることになります。
ここ数年、年末になるとノロウイルス感染症・食中毒が多発して大騒ぎになりますが、昨年はさほどではありませんでした。が、感染症情報を見てみますと観測数はここにきてかなり高いレベルにあります。当地域でもここのところ、仙台と気仙沼のホテルで60〜70人規模の食中毒が相次いで発生しています。加熱以外これといった対策がないのが実情ですが、手洗い、二次汚染防止にはご注意のほど。

2008年12月31日<No.049>
良い年への気配
今年は師走まで食品問題が多発した一年、今月半ばには生産者の写真まで偽造したタケノコ産地偽装も発覚しました。もうけが年々少なくなって、まじめに食品を作っていたのでは会社がつぶれる、背に腹は代えられないということでしょうか、わからなくもないですがここまできたかという感じです。このような悪徳業者がつけいる隙を作ったのは、過ぎた「国産食品信仰」のある消費者自身ともいえるように思いますが。
12月26日に農水省の「食品ロスの削減に向けた検討会」から「食品ロスの現状とその削減に向けた対応方法について」という報告が公表されました。検討会は今年8月から始まったようですが、どうせ省益拡大のための御用検討会だろうと小生は気にも留めていませんでした。しかしその報告内容を見ると、農水省の役人の中にも良識ある人もいるのだと感じた次第。
検討会では、昨年多発した菓子業界はじめ種々の食品業界からのインタビューで食品ロスの実態を調査分析し、食品製造業者、食品流通業者、外食産業、消費者とそれぞれの連携で取り組むべき課題と対応方法を示しています。この中には最近の食品業界の不祥事の原因と重なる問題が多く指摘されています。賞味期限の設定や流通業界の1/3ルール、賞味期限切れ原料使用など、前回書いた期限に関する「加工食品の表示に関する共通Q&A」の一部改正はここから来ているのでしょう。いずれにしても、判断が明確になるのは食品製造メーカーにとって歓迎すべきこと。
また、大規模小売業者による優越的地位の乱用防止目的になりますが、このような調査は公取委で行っている「独占禁止法に関する相談事例集」が毎年公表されています(今年は9月)。また3月には同様の目的ですが、農水省の外郭団体である(財)食品産業センターから「平成19年度食品産業における取引慣行の実態調査報告書」も出ています。最近の食品不祥事の原因のほとんどは企業倫理、コンプライアンス問題とされて食品製造メーカーが悪者にされてきましたが、これらの報告書を見れば小売流通側にも大きな原因があることがわかります。
報告書では農水省が取り組むべき課題と対応方法も示されてはいますが、その周知や各種情報の提供などうわべだけのように見えます。これまでのような周知の方法をとるのでしょうか、報告書について取り上げているメディアの報道はほとんど見かけません。安全性に問題ないとみられる単純な賞味期限印字ミスや今回の事故米についても触れて欲しかった。そして、残念ながらマスメディアについては除外でしょうか、不安を煽り、食品ロスの助長に一役買っているのはメディアで間違いないと思います。一歩踏み込んでここも対象にした調査にしてもらいたいものです。
毎日新聞の小島記者によれば、「医療現場ではメディアセミナーやメディアドクター、メディア・パトロールの動きが活発になってきたが食品業界ではなぜこのような活動が広がらないのか不思議。今後は、メディア報道の問題点をもっと具体的に指摘しながら、記者と議論する機会がほしい」とのこと。このような博識のある人がいるのに他紙と同様に誤った報道が出るのは組織としての問題かなと思います。大腸菌群を大腸菌と報道されれば食品製造側の被る打撃は甚大。誤った情報を流さないようにするためにはこのような活動を地道に進めていくべきでしょう。そしてそのような活動を広げるのは国の責任と思いますが。
リスクコミュニケーションの重要性が指摘されています。しかしそちこちで頻繁に開催されている今の国主導のものは効果を上げているのでしょうか、消費者、食品事業者にとって参加する意義があまりないように感じます。不祥事が起きると「法令に違反するとは知らなかった」というような業者のコメントが未だに出てきます。食品業界は中小、零細がほとんどで、このような場に出ても時間の無駄と思うでしょう。経営者自らが現場で汗を流しているのが実情、保健所でのセミナーのように出席を義務づけた、きめ細かい指導が必要に思います。
先日当地の地方紙に、食べられるのに捨てられる食品を有効に生かそうと、NPO法人など市民団体が国内で6番目のフードバンクを設立したとの報道があり、食べるものに飢えていた時代に育った者としてはうれしく思った次第。フードバンクについては、前述の農水省の検討会報告でもディスカウントストアでの通常販売外のルートでの廉価販売とともに触れられています。このような活動が広がって欲しいものです。
昨年の世相を表す漢字一文字は「偽」で、今年は「変」となりました。来年はすばらしい「変革の年」にしたいものです(似たような「改革」は、現在の種々の格差を生み出したように望まない)。

2008年12月02日<No.048>
加工食品表示共通Q&Aの改正
2001年9月にBSE問題が発生して農水省の失政が断罪され、約2年を経て食品安全基本法が公布されました。この時期には役割を終えたとして食糧庁が廃止され、その業務は総合食料局、そして大部分の職員は新たに設置された食の安全のリスク管理部門のいわゆる食品Gメンとして消費・安全局に吸収された。そして、そのマンパワーを背景にして、さほど悪質とは思えない食品の不適正表示までも次々と摘発してきたというのが実態のように思います。
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| 雪もちらつき始めましたが、庭のもみじは真っ盛り |
その消費・安全局のHPには、少し前から「もったいないことしていない」というロゴが出ており、期限表示の説明がされています、「安全にさほど問題があると思えない食品を、表示違反として廃棄物を増やすような施策を推し進めてきた」という一方で。「消費・安全局の中でさえも縦割りでバラバラ、どうしようもない」とあきらめていました。そんな中、ミートホープ事件以降疎外されていた「食品の表示に関する共同会議」で、期限に関する「加工食品の表示に関する共通Q&A」の一部改正が出てきました。
改正の内容の主なものの一つは、バイイングパワーを背景にした小売業界の要求とそれに安易に応ずる食品製造業者に関するもの。加工食品の賞味期限設定では、保存試験により品質が十分保たれていると確認された期限に安全係数を掛けて算出されますが、用いる安全係数には特段定めがなく、業者によりバラバラで極端に小さいものもあり、期限超過に拍車をかけているものもあったのでしょう。「商品の品質のばらつきや付帯環境の変動が少ないと考えられるものについては、0.8以上を目安に設定することが望ましい」とされました。
また、1/3ルール(賞味期限までの期間を製造業者、販売業者、消費者で均等に分け合うという商習慣)については、製造業者は賞味期限の1/3を超過すれば販売業者に納入できなくなり廃棄せざるをえないということも多々あったのでしょう。法令では、関係者で期間を分け合うという概念はなく、従って法令上の根拠はないことが示されています。
もう一つは「加工の段階での期限超過の原材料の使用に関して」で、安全性に関連する消費期限についてはその使用は厳に慎むべきものとし、一方で賞味期限を超過した原材料の使用は、社内基準を策定の上、最終製品の品質に問題ないことを科学的・合理的な方法で確認するとともに、その関係記録・帳簿等を保存するなど、慎重かつ十分な管理の下で行われれば禁止されるものではないという内容で、これは不二屋・不祥事問題での厚労省の判断と同じもの。これに当てはめると、昨年7月当地で発覚したマルハ子会社での期限切れ原料使用問題は安全性を確認していた(当然社内基準、記録もあった?)との報道もあり、当該企業が非難されるべきものではない、県の対応のまずさを業者に責任転嫁をしたということになる。
Q&Aが示されたからといってどの程度実効があるかは疑わしいですが、一歩前進ということでしょうか。期限表示関連の自主回収をみていると、ダントツで多いのは印字の作業ミスで、一向になくなる気配はありません。これについては、科学的な根拠に基づいて設定された期限を超えて表示を行った場合は食品衛生法第20条で禁止されている「公衆衛生に危害を及ぼす処のある虚偽の又は誇大な表示」に該当することになるということで、今のところ救いがないということでしょうか、公衆衛生に危害を及ぼすようなおそれがある場合という注釈はありますが。食糧の大半を外国に依存し、不法投棄が横行するゴミ大国の汚名はいつになったらなくなるのでしょうか。例えば印字ミスをした場合、監視機関に申告してその立ち会いのもとにラベルを貼り替える(その作業に必要なコストは当該企業が負担)など方策はあるように思いますが。
政府事故米不正流用事件は一応終末に近づいたというところでしょうか、先月25日に有識者会議調査報告書(第一次取りまとめ)が公表されています。農水省側の、このような事態を招いた深因は 1.自分の取り扱っている職務が国民の「食の安全」につながっているという自覚や責任感の欠落 2.目先の仕事をこなしていればよいという官僚主義的体質であるとし、@農水省総合食料局幹部の責任が最も重い A福岡農政事務所の幹部職員、特に農政事務所長の責任は重い BBSE問題の反省を生かせず、歴代大臣、事務次官をはじめ本省幹部職員にも強く反省を求めるとしています。そして関係職員の処分発表。
また不正流用問題の対策として、米流通システム検討会では米トレーサビリティの導入、米、米飯と米を主原料とする加工品への原料米原産地情報伝達などの義務づけと監視強化などが。農水省改革チームでは地方農政事務所の廃止と総合食料局、地方農政局のあり方見直しなどがあげられています。ただ、農政事務所の食品表示監視や農業者支援機能は今後検討の必要とのこと、これはこれで残すということになるのでしょう。
農水省の不手際が監視の強化にすり替えられ、新たな予算の獲得、権限の強化につながっていくのでしょうか、なんともはやずる賢いというか。

2008年11月01日<No.047>
キッコーマンに学ぶ
政府事故米不正流用事件、中国での乳製品へのメラミン混入とそれに起因する輸入加工品でのメラミン検出頻発、中国産餡からのトルエン等の検出、健康被害まで起きた中国産いんげんのジクロルボス混入、日清食品製カップヌードルでの防虫剤(パラジクロロベンゼン、ナフタリン)検出。そして伊藤ハム東京工場地下水のシアン化合物検出による製品回収と、何とまあ、次から次へと食品に関する事件、事故が続くのでしょう。消費者は何を食べたらよいのかわからないという心情もうなずける状況と思います。
これらの事件・事故がメディアの手に掛かると、さもほとんどの食品関連業者が悪徳業者のように仕立て上げられるから困ったものです。毎日新聞編集委員の小島正美さんも著書〈 誤解だらけの「危ない話」 〉の中で次のように述べています。「人々は食べ物を買うだけでなく、メディア情報を買う“情報消費者”でもある。メディアはその消費者に情報という“商品”を売ることによって成り立っている。そして人々は情報を買うことで判断の良し悪しを決めている。この構図が「過剰でゆがんだリスク観」をつくったり、逆に過小なリスク観を形成する。
中略。食の問題で不祥事が起きると、それは企業のモラルが問われているのに、食の安全・安心が脅かされるといったおかしな報道まで出てきた。」。その通りなのでしょう、メディアには誤った報道の影響を考えてもらいたい、十分に勉強してその報道には責任を持ってもらいたいものです。
当方の勝手な推測にはなりますが、前述の事件、事故について述べてみます。政府事故米不正流用事件は前回述べましたが、中国乳製品のメラミン混入も同種の問題で中国の悪徳業者による金のためには何でもやるといった類の事件。家畜や養殖水産物飼料への混入など幅広く使用されているとのことで問題解消までは少し時間がかかるかもしれません。健康被害が起きたいんげんジクロルボス混入事件では確認されたのは1件ですから恐らく社会への不満分子の仕業、今年春先から続いている縫い針混入等の延長上にあるものでしょう。中国に限らず不満分子はいるものです、特に資本主義の弊害である格差社会の広がり、不況に陥った現在では。
カップヌードルでの防虫剤検出ではパラジクロロベンゼンが180ppmという高濃度で検出されたというのがあるので何とも云えませんが、恐らく家庭内で使用している防虫剤成分が容器を通して浸透しまったのでは。パラジクロロベンゼンは常温では固体で、昇華で飛散してしまいますし、包装には穴は開いていない、工場在庫品からは検出されないということをみると意図的な混入ではないように思います。日清食品では春先に容器材質を変更し、それ以降に多発しているとのこと、売り伸ばし(経費削減?)を図った材質選定ミスでしょう。事例として、9年前石川県の学校給食の紙パック牛乳でシンナー臭等の苦情があり、原因として保管冷蔵庫の塗装工事で庫内に充満していた有機溶剤が紙パックを通して牛乳に移行したとされ、このような苦情は結構みられるようです。
健康被害も起きたとされる伊藤ハム製ウインナソーセージからは高濃度のトルエン、酢酸エチルが検出されたとのこと。原因は使用した包材の製造ミスによるもののようです、賠償問題になるかも。中国製餡でのトルエン、酢酸エチル検出も同様のものかかもしれません。
また中国の報道で、日本から輸入された醤油などからトルエン、酢酸エチルが検出されたと公表されましたが、この問題に対してのキッコーマンの対応はさすがと思わされました。キッコーマンは「公表された「『公務小醤油』という名前の商品はない」は当たり前ですが、「しょうゆ中に微量のトルエンが含まれていることは学会での定説とされており、酢酸エチルは醸造物中に香気成分として含まれる。検出量も微量で、人の健康に影響を及ぼすものではない」とホームページ上で公表しました。これでマスメディアも付けいる隙はないように思います。酢酸エチルは異臭苦情でよくみられ、酵母などによって生成されることは知っていましたが恥ずかしながらトルエンはわかりませんでした。これに限らず、食品添加物でも自然に存在するものもあります。
当方も客先には「最近の問題に対しては、使用する納入原料への一層の注意と情報武装も必要です」と話しています。医薬品メーカーでは情報収集のための部門(学術課?)などが設置されていて、何か問題が発生した場合は即座に調査するところが設置されているようです。今後食品業界にもこのような部署(委託でも?)が必要なのではと思っています。
大変なのは伊藤ハム東京工場の地下水からのシアン化合物検出です。柏保健所の調査では東京工場や周辺の地下水からは検出されないとのこと。公表が遅れたことが問題とされていますが、即座に公表していれば大ごとにはならなかったのでしょうか? 食品工場で使用するには地下水はリスクが大きい、水道水を使用すべきという意見もありますが、酒造業界などでは使用水(伏流水)にはこだわります、悩ましい問題です。

2008年9月27日<No.046>
事故米スキャンダル
今月初め、不祥事が続き信頼が失いかけている食品業界に政府の事故米を悪用した、とんでもないスキャンダルが発覚しました。ミニマムアクセス米輸入の際、カビ毒や基準超過の農薬が検出されて工業用用途に限定してて販売される政府の事故米が、三笠フーズという悪徳業者によって不正転売されて食用として広範囲に流通したとのこと。同様の不正転売をした買受け業者が複数あり、事故米を使用した食品の流通は当県にも及び、正に日本全国総なめという事件となりました。
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真夏に咲く花と思っていたサギソウ、今になって
咲いています。天候不順のせいでしょうか。 |
従業員の衛生管理意識の向上のための教育の参考資料として厚労省の「輸入食品違反事例」をみることがあります。違反の場合の処置としては「廃棄、積み戻し指示」となっていて、政府の輸入米も同様の措置がとられているもの、また、国産のものでもカビなど生えたものは廃棄されるものと思っていました、浅はかでした。
国が厳重に管理するということで制度が成り立っているのでしょうが、食品衛生法違反であっても政府の輸入米では事故米として、工業用用途とはいえ国内に流通できるというのはどうみても理に合わないようです。政府の対応策緊急取りまとめでは「輸入検疫で問題ある場合は輸出国に返送、保管中にカビ等が発生した場合は廃棄処分」とのことですが当然でしょう。
農水省は工業用糊の市場(ほとんどないとのこと)も把握せずに事故米販売のノルマを課せられて大量に買ってくれる業者はお得意様、何度も検査に立ち会いながら不正の痕跡も見つけられない。検疫で引っ掛かって買い戻しをした輸入商社にはこの悪徳業者を紹介するありさま。行政は付き合いが薄い業者にはけんもほろろだが、一度仲良くなるとなれあいが止めどなくなることの典型のようです。
コメについては以前から様々なブレンド偽装等が問題にされていました。また、その流通業者は規制緩和を受けて誰でも参入できるようになり、流通が複雑になりました。このようなところに事故米を売りさばくなどもってのほかと云わざるをえません。そしてそちこちからの圧力があったにせよ、末端の零細業者まで含めての有無を云わせない公表。プロなのだから目利きはできるという人もいるようですが、高額の費用を掛けて残留農薬の分析でもしない限り判別は難しい。事故米とは知らずに購入し、原料として使用した末端業者は風評被害で存亡の危機にあるという。今回の事件では食の安全を守るべき厚労省は前面に出てきていません、農水省の問題で当方には関係ありませんということでしょうか。
メディアの報道によれば、三笠フーズでは不正がバレないように「伝票偽造、二重帳簿作成」、「農水省の調査時には様々な偽装工作」、実際の効果はどれほどかはわかりませんが「長期保管で農薬を薄め、毎回ではないが濃度検査も」と当初から食用転用目的。販売は関連のダミー会社、ペーパーカンパニーをかませてそのたび毎に利ざやを稼ぎ、仲介業者には伝票操作依頼等々。販売先などそちこちに偽造証明書の乱発、そして事故米ばかりではなく使用用途が限定されている加工用米も主食用米に混入などが明らかになっています。
現場従業員には「チョット水に濡れただけのもの」と騙して「いつかはこうなるかもしれない」と不安を感じさせ、全従業員解雇通告時の事業部長の話での「日本一モラルのない会社に勤めたことに心を痛める・・・」を経営者は何と思っているのか、正に金の亡者以外の何者でもないと思います。
小生は誰からか、いつの頃からかはわかりませんが、人に迷惑を掛けるようなことはするなと教わってきました。ほとんどの食品業者さんも同じだと思っています。ほんの一握りの悪徳業者のおかげで業界全体が不信で覆われてきているように感じます。ようやく警察当局の家宅捜査もはじまりました。一刻も早く事件の全容の解明が進めてもらいたい。そして農水省の検査、監視の実態、現在の政府米の売却制度の問題まで踏み込んでくれることを期待したい。
メディアの報道は相変わらず、どこをみても量は多いが内容は似たり寄ったりで、不安をかき立てるものばかり。騒ぎが収まれば一斉に記事はなくなるのでしょう。現在、中国の乳・乳製品へのメラミン混入が発覚し、これを原料として中国で製造された丸大食品の菓子等の回収騒ぎも発生しています。昨春、中国製ペットフードへのメラミン混入事件が起きましたが、その後の報道はどうだったのでしょうか。事件の報道の仕方はこれでよいのでしょうか。今マスコミ倫理懇談会なるものが開かれているようですが、どこでも良いから一度自分たちの報道の仕方について検証してみてはと思うのですが、これが報道の自由というものなのでしょうか。
このような犯罪に対して、農場から食卓までの危機管理など中小零細業者ではとてもできることではないでしょう。しかし、国の管理も信用できない今、いつでも被害が自分のところに降りかかってくることを肝に銘じて、普段から知識、情報を収集して対応できるようにしておくしか生き残る術はないように思いますが。

2008年8月28日<No.045>
まだ安心できない微生物管理
関東以南では連日30度を超す猛暑が続いているようで、心から残暑お見舞いです。当地はといえば、昨年は暑さが続いて小生もぐったりでしたが、今年は一転して雨降りで肌寒い毎日、夏休み中の子供たちには少々かわいそうでした。例年ですと梅雨どき、殺菌作業をしないこともあって当家の庭のさるすべりのつぼみにはうどんこ病が発生しますが、暑さの到来とともに消えてまあまあきれいに咲きます。今年はというと、見るも無惨な状態になっています。うどん粉病はカビの仲間で生育適温が20〜25℃、納得させられる状況です。
こんな低温気候の環境でも、当地でのこれまでの食中毒発生件数は昨年と比べてさほどの変化はみられません、外気温の影響が事故発生の一因になることは確かですが。昨年は9月に入ってから患者数600人強の腸炎ビブリオ食中毒、300人強の腸管出血性大腸菌O−157食中毒事故が発生し、この2件の事故だけで年間の患者数の8割弱に達します、これからが発生本番かもしれません。そして腸炎ビブリオ事件ではこの1件の事故発生で廃業に追い込まれたとのこと、ご注意のほど。
当方の夏場の従業員教育では、細菌、カビの話やその危害の防止法などについて、特に力を入れて話すことにしています。このような内容の教育を比較的暇な2〜3月に実施しても危害発生時期まではもたないと思うからです。しかし、その作業現場は猫の手も借りたい繁忙時期で、実施を延期をしてもらいたいとの連絡をよくもらいます。「事故が起きて多額の費用を掛けて回収したり、納入先の信頼を失ったら何のために苦労をして製品を作っているの」などと話をすると一時的に理解はしてもらえるのですが。普段手の届かない定期清掃の時期も「やれる時期」ではなくて、「やらなくてはいけない時期」に実施すべきと話していますが、従業員教育も同様でしょう。
厚労省が公表している昨年度の食中毒発生状況をみると飲食店、仕出し屋、旅館そして学校給食など家庭での調理(調理後にあまり時間をおかないで摂食)の延長上にある業種が77%を占めています。そして、食中毒原因物質別発生件数はというとカンピロバクター32%、ノロウイルス27%、サルモネラ10%となっています。当地でも同様な傾向で、最近はカンピロバクターが多く、この食中毒発生原因施設は飲食店がほとんど。
不明というものが結構あるので何ともいえませんが、原因施設が製造所というものはありません。
製造所と飲食店、その違いは業者数の違いもあるでしょうが、食品の品質のとらえ方にあるのではと思っています。食品製造・加工業者は五感を満足させる品質とともに、安全性、食品法令遵守なども含めた衛生管理も求められます。優良企業といえども事故を起こせば広がりが大きく、取引先の信用を失って組織の存続も危うくなる危険性をはらんでいることを理解しているからでしょう。ただ、ノロウイルスや黄色ブドウ球菌など感染源が人とみられる事故の原因施設が製造所というのは散見されます。近年は、手洗いはどこでも徹底されているのでしょうが、人の管理は難しいものだとつくづく思います
一方で、飲食店の品質は店の雰囲気、料理の見た目、うまさ、香りなど客の五感を満足させるものになるでしょう。頻繁であれば別ですが、食中毒を起こしてもせいぜい短期間の営業停止程度。PL訴訟になった千葉のシガテラ食中毒のような事件はめったにない。費用と時間を掛けて従業員教育をする余裕もない、せいぜい強制的な保健所の講習を受ける程度と思います。このような一時的な短時間の講習ではせいぜい「付けない、増やさない、殺すの食中毒防止の3原則を守りましょう」などが中心となるでしょうがこれらは作業場内での二次汚染防止の問題。
カンピロバクターは少量の菌の摂取で感染が成立する食中毒菌ですが、市販の鶏肉などではほとんどが汚染されている(平成19年度厚労省調査ではミンチで17.1%)とみるべき。その防止対策として「増やさない」は効果はないので「手洗いを徹底して付けない、加熱して殺すが有効です」、だけではこの菌による食中毒は防げないように思うのですが。時間的な制約はありますが、保健所の講習などでも、もっと基本的な自然界におけるミクロフローラや原料食材の汚染状況など、一次汚染も含めて周知を図らないとこのような食中毒は減らせないように思うのですが。
公表された自主回収を見ていると、今年は膨張や変敗といった微生物原因のものが多く感じます。カビの発生も例年は10月、11月に多く、これからが本番でしょう。夏の繁忙期も終わり、施設・設備の徹底清掃の時期と思いますし、冷蔵・冷凍設備などの点検も。食品偽装問題や意図的な危険異物混入事件は相変わらず続いていますが、こちらの方も手抜かりなきように。

2008年7月31日<No.044>
行政の規制強化
ミートホープ事件から1年、またまた飛騨牛、そして「ウナギロンダリング」という言葉も生まれた中国産ウナギ、フグの偽装も発覚していて、このような不祥事がどこまで続くのかと心配になります。
健康被害を伴う事件事故への対応は厚労省、保健所の案件ですが、このところの不祥事のほとんどは安全性には直接結びつかない不正表示に関するもの。不正表示は意図的な不正な表示、広告で儲けるといった虚偽表示と規制法令の変化に対応できない不適正表示に分けられるでしょう。
虚偽表示についてはもちろん社会的に許されない行為ですが、数年前までは景表法(優越誤認)や不正競争防止法(虚偽表示)で、違反をすれば不正行為の抑止力として見せしめ的な摘発が行われてきたように思います。それでも業績不振で背に腹は代えられないということなのでしょう、次々と不祥事が発生します。
先送りはされましたが、不当表示に対して取引額の3%の課徴金を課す独禁法改正が次期国会で成立手はずになっています、先ずはこれで様子を見てはと思うのですが。最近の行政の規制のやり方は、不祥事に対してどこに問題があったのか、十分な検証をしないまま法令を成立させてしまっているように見えます。
そして、最近の食品表示に関する不祥事はほとんどがJAS表示がらみで始まっています。景表法や不正競争防止法では不正行為の抑止目的だと思いますが、JAS法による摘発は意図的な悪質なものから法令の理解不足原因のものまで根こそぎのように感じるのは当方だけでしょうか。いつごろからこのようになってきたのか、推測を交えて述べてみます。
その分岐点は2,000年のJAS法改正なのでしょう。それまでは消費者保護基本法を受けて約60品目(現在の個別品質表示基準の元)に、消費者の選択に資するという目的で決められていました。基準の内容は、対象業界団体の意向を聞きながら協議の上で進められ、ある程度食品衛生法との整合性も取られて策定されたので、その業界にはまあまあ理解されていたように思います。
この時期は堺市のO−157食中毒を始めとする食中毒事件が多発して食の安全性が叫ばれ、また食関連の施策が業界寄りとの指摘がされる中で、農水省ではコメの生産調整などを取り仕切ってきた食糧庁が役目を終えたとして、その存在も取りざたされていた。このような状況に対して、農水省には何と頭の良い(悪知恵?)役人がいたのでしょうか(現在の混乱を予測?)、消費者保護を名目にしてJAS法になじみのなかった全ての食品業界に網が被せる法改正がなされたのです、それも原産地表示まで付加して。
そして、加工度が低く生鮮食品に近い加工品8品目(現在は20食品群と4品目)にも原産地表示を義務づけた。以後、食品表示110番の設置による告発の推奨、食品表示Gメンの配置(配置された食糧庁の約1/4の人員体制)、消費安全技術センターでの品質表示確認分析技術の開発を後ろ盾とした頻繁な表示調査の実施と次々と手が打たれた。
一方で、食品表示のあり方については2002年に厚労省との共同会議の中で進められている。この会議には業界、消費者側委員もおり、当初は無理のない常識的な検討がされていたようだが、2005年にはその報告を受けて基準となる製造年月日の定義のないままに期限表示設定ガイドラインが公表された。これにより中小零細の多い食品業者といえども科学的根拠資料の保持や、根拠のないままでの変更はできなくなった。
昨年来の不祥事の多発から益々規制強化は進んでいます。業者間取引へのJAS表示適用、警察との連携、地方自治体での表示監視協議会の設置などは実施済み。そして原料原産地表示だけでも、東京都の「冷凍加工食品の原料原産地表示」、農水省の「加工食品の原料原産地ガイドライン」、そして遅れた形で食品の表示に関する共同会議での「食品の原産地表示の大幅増検討」など。また、食品全般にトレーサビリティ制度導入や直罰を課すJAS罰則強化。政府の消費者庁設置や食品表示法令の一本化などが進められています。
当方にはこのような規制強化で意図的な悪質な虚偽表示は防げるとは到底思えません。規制が増えればそれなりに予算も役人の数も必要になる、巨額の財政赤字だろうが企業がつぶれようが知ったことではない、正に役人天国。食の不安を煽っているのは行政とメディアでしょう。告発、摘発、メディアのバッシング、規制強化、取締り強化の悪循環続かないように、そして活力のない社会、不況とならないことを願うだけ。

2008年6月23日<No.043>
ヒスタミン食中毒
先月末に、中国産冷凍ギョーザ問題を受けての日本生協連の第三者検証委員会の最終報告と、当面の対策の進捗状況が出ています。そして政府では消費者行政推進会議がまとめた最終報告をうけて、「消費者庁」設置に向けた動きが始まったようです。ただ、このような対策で昨年来の食品業界の不祥事、事故がなくなるかは、はなはだ疑問に感ずるのは当方だけでしょうか。
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| 梅雨どきの花、サツキ。八重咲きが気に入っています。 |
そんな中の今月半ばに「冷凍ソテーで女児がじんましん 生協、2万2000個宅配」という記事が載りました。またも生協さん、私どもには日本生協連もパルシステム生協連も同じ生協。パルシステム千葉のHPのお詫びと報告をみると、「消費者から6月に宅配した〈かじきまぐろの和風ソテー〉を食べてじんましんになった、1件だけではあるが調査でヒスタミン中毒と判明したので4、5月の届け分を含めて廃棄を願う(当商品は冷凍品で、4月からの新商品)」とのこと。食中毒発生はさいわいにも1件だけのようで、ヒスタミンの生成量もさほど多くはなかったのでしょう。発生後の対応はまあまあ評価できるとしても、商品開発の時点で発生の予測はできなかったのでしょうか。
近年、日本では低温保存、低温流通が発達してヒスタミン食中毒発生は年に1件、多い年で3〜4件と少なくなりましたが、昭和48年には愛知県で患者数2,600人強に達する大規模食中毒が発生しているのです。そして、1990年代10年間の発生事例の原因食品には「かじきまぐろのフライ」、「かじきまぐろの照り焼き」、「かじきまぐろのピカタ」と、「かじきまぐろ加工品」が20%強(他のマグロも含めると半分)も占めています。これらの事例をみれば衛生管理に手抜かりがあれば発生するという予測はできそうなものです。雪印食中毒の場合もそうでしたが、どうも食中毒発生の歴史が粗末にされているように感じますが。
当方の客先には水産関係が多い関係上、その従業員教育では必ずヒスタミン食中毒についてのはなしをします。「ヒスタミンは赤身魚に多いヒスチジンからモルガン菌などが持つ脱炭酸酵素で生成する」、「ヒスタミンの生成は鮮度が低下して腐敗する前に始まっている」、「化学的危害に分類されているが細菌性食中毒としての対応が必要で、低温管理が重要」、「ヒスタミンが生成してしまうと加熱してもダメ」など。
日本ではヒスタミンの法的な規制値は決められてはいませんが、欧米では魚体での分布のバラツキを考慮した基準、注意喚起レベルなどが決められていますし、HACCPでの危害物質にも取り上げられています。検査ですべて食品の安全の確保はできませんが、検証のための検査は危害防止のための有力な情報となると思います。ヒスタミンの検査はHPLCなどが一般的のようですが、操作が煩雑で食品業界向きとはいえません。最近は操作が簡単なヒスタミンチェッカーのような測定器が開発されていて、管理用としては十分に思います。
読売新聞の記事には「原材料のクロカワカジキはインドネシア産。現地の工場で切り身にする際の温度が高く、鮮度が落ちる過程でヒスタミンが生じたとみている」とあります。食のグローバル化が進み、世界各国から食材が入ってきます。その調達にあたっては、調達先の衛生管理状況を十分把握した上での輸入が必要で、生協さんも中国産冷凍ギョーザ問題で学んだはずです。その矢先の事故、打ち出した当面の対策は日本生協連が供給する商品に限ってのもの、会員生協の独自開発品?は別ということなのでしょうか。
日本生協連のHPには、生協は「安全性の確保」「品質の確かさ」「低価格の実現」の3つの基本を大切に考え、組合員の意見に耳を傾けながら商品を開発していますとあります。また、パルシステム生協連のHPにはパルシステムは産直と環境にこだわり、安全で安心な食材をお届けする生協(コープ)ですと載っています。中国産冷凍ギョーザ事件は別としても、偽装牛肉コロッケ事件ではミートホープに悪いうわさがあって取引をやめた業者もあったとも云われていますが、そのような情報はつかんでいなかったのでしょうか。そして、予測可能なヒスタミン食中毒事故など、安全、安心を掲げて売り上げを伸ばしてきた生協さん、どこかおかしいのでは。「低価格の実現」、「利益至上主義」に重きが移っているように感じます。最近、メディアの取材では苦労して現場に足を運ばなくなった、役人のはなしの垂れ流しなど、楽をした不確かな情報の報道が云われますが、食品業界もでしょうか。
当地もようやく梅雨に入り、高温、高湿の時期に向かいます。ノロウイルス食中毒事故も少なくなってきましたが、ビブリオ、サルモネラ、黄色ブドウ球菌など従来の食中毒はこれからが本番です。昨年当地で発生した大規模ビブリオ食中毒では厚労省から通知が出ており、その中では低温管理設備の故障なども指摘されています(当該業者さんは廃業に至ったようです)。工場内を点検して不具合があれば早急に補修の時期です、特に低温管理設備は。

2008年5月28日<No.042>
異物混入防止にピリピリの食品業界
中国の胡錦涛国家主席が来日し、福田首相との会談では中国ギョーザ問題の捜査進展についても取り上げられるのかと思いきや、ほとんど触れられずじまいのようです。中国側としても早期解決が必要との認識はあるのだと思いますが何とか解決してほしいものです。
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気候のせいか庭の花が一気に咲いて終わりました。
今は何というドウダンツツジなのか、ひっそりと。 |
そして日本生協連は第三者検証委員会の中間報告を受けて当面の対策を発表していますが、その中に、輸入食品について全ロットでの残留農薬検査等を実施しますとあります。マスメディア、消費者団体の突き上げを受けての対策でしょうがこのような犯罪は危機管理の分野。非破壊検査法でも開発されれば別ですが、犯罪による健康被害防止のために検査するのであれば全数検査が必要になり、これでは売るものがなくなります。
さて、当方のメシの種である従業員教育の内容についてですが、このところは様変わりしてきています。暑さが増すこの時期は、これまではカビやバイ菌の知識、増殖防止の考え方、やり方が中心でした。増殖防止には洗浄や殺菌、水を使用した清掃の後には洗浄水を残さないこと、作業場はできるだけ早く乾燥状態にする工夫など。
ところが中国産ギョーザ問題発生以降、国内のあちこちで農薬や針・クギなど危険異物の混入事件がひっきりなしです。当県ではあまりないようですが、隣県の福島などでは頻繁に発生して県でも注意を呼びかけていますし、県警には「異物混入事案対策室」を設置したほどです。模倣犯なのか愉快犯なのか、ほとんどが威力業務妨害容疑の事件でしょうが、中には製造時の混入のものもあるようです。
福島県内のスーパーなどではハンド式の金属検知器を導入して商品一つ一つ検査を始めたとのこと、金属片混入防止にピリピリしている状況が伺えます。危険異物ばかりではありません、これまでも糸くずや髪の毛などよく見ないと発見できない異物の混入苦情はありましたが益々増加する一方にあるようです。事実、納入先などから頻繁に苦情の連絡が来て、メーカーは発生原因や対策などの報告書作成ばかりでなく工場監査などの対応にてんやわんやの状況も見受けます。
異物混入防止対策が待ったなしで、当方の従業員教育のテーマもいきおいそうなってきます。3S(整理・整頓・清掃)の徹底、異物混入防止を念頭に置いたレイアウトの再考、開放部分はできるだけ少なくする、これまで発生した混入異物から異物源のリストアップと混入危険の少ない代替品への変更、できないものは点検の徹底、そして異物混入事例研究などで、これらの内容は基本的な問題の再確認ですが。
工場内を巡回してみると整理整頓もですが、特に清掃方法に問題がみられる場面を多く見受けます。従業員教育では清掃は異物混入の危険性のない場所に移動してから開始するのが基本ですよとうるさく話していますが、忙しさに紛れてでしょうが原料や仕掛品をきちんと片付けをしないでいきなり水を使用した清掃を初めてしまう。取り合えずなのでしょうが、片付けをしても食材を開放状態で冷蔵庫内などの床に直置きしたままなど。
また、苦情事故品の異物をみると持ち込み禁止品など工場内では混入可能性のないものもあります。そのような場合は日常の点検記録でも取っていない限り「当工場で混入したものではありません」と断定できませんし、報告書を作成し得意先に提出しても納得してもらえません。衛生管理を意識した新設の施設ならともかく、休憩室や事務室などは作業場とは別棟、更衣は休憩室でがほとんどでしょう。その休憩室、事務室と作業場の行き来による持ち込みも否定できないのです。見逃されやすいのですが、こうした付帯設備の改善と整理、整頓、清掃の徹底も疎かにできません。
こうした内容のはなしをすると、その時は理解できているようですが現場に戻るとついつい仕事に追われてなのでしょうが、元のもくあみに戻ることが多い。せっかく苦労して製品を作っても苦情で戻ってきたり、多額の回収費用が掛かったりしたら、何のために仕事をしているのかわからないことになります。繰り返しの教育がと、つくづく思います。
健康被害に直接結びつかない異物混入や食品表示、規格基準違反などによる自主回収が多くなり、食品メーカーさんも大変です。これからは暑さが増してきます、このような対応に追われるばかりに昨年発生した大規模腸炎ビブリオ食中毒のような事故対策も疎かにならないよう、注意が必要な時期に入ります。

2008年4月21日<No.041>
品質管理部署設置が不可欠な時代
中国産ギョーザ問題は真相は未だに闇の中ですが、これでもかと騒ぎ立てたマスメディアの報道はここにきて一応収まってきたようです。食料品の値上げ合唱の中、生活弱者の食はどうなるのか、治安の悪化にはつながらないだろうかと日本の近未来に一抹の不安を感じるこの頃です。
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当地の桜も散りました。我が家のカイドウの花が
賑やかです。 |
最終報告書は5月末ということですが、4月11日にこの問題の渦中にあった日本生協連の第三者検討委員会の中間報告がありました。これを受けての日本生協連の当面の対策では、「ブランド責任者としてふさわしい品質管理の仕組みを早急に再整備するため、今後、必要な人材の配置やシステムの構築に、経営資源を集中的に投入します」とのこと。「安心・安全」を売り物にしてきた生協も、売上げ至上主義に走り、品質管理を疎かにしてきたことを認めたのでしょう。
昨夏、懇意にしている食品業界団体の人間から、「傘下のメーカーで新たに品質管理を任された人がいて、これからどのような仕事をしていけば良いのか悩んでいるので相談に乗ってもらえないか」という話がありました。何度か話したことのある人だったので、一杯やりながらはなしを受けました。聞けば、これまでは「テクニカルサービスの仕事をしていて具体的な売上げ目標があり、その達成が数値で出てきたのでやりやすかった。今度の部署では何を目標にしてやったらいいのか悩んでいる」とのこと。
そうなんですよね、間接部門の仕事というのは縁の下の力持ちで、具体的数値目標が設定しにくく、評価もしにくいところです。そのために食中毒事故を起こした雪印の遠因と云われているように、技術屋の冷遇がまかり通る、特に技術畑出身の経営者でないところは。売上げで1億円の利益を稼ぐのも、事故を起こして1億円の損失を被るのを防ぐのも同じ1億円なんだけどね。具体的数値目標が必要なら、貴方の会社でここ2〜3年のクレーム情報は纏めてあるのと聞いたら、「あります」とのこと。それでは、そのクレーム情報の件数を前年度の何%削減を目標にする。削減するために、クレームの原因分析をして工程の改善、従業員訓練や削減キャンペーンを計画したらと話しましたら「すこしふっきれた気がします」との返事。4,5日前に、その食品業界団体の人間に「彼氏は元気に仕事しているの」と聞きましたら、「問題なくやっているようです」ということで、当方のはなしも多少参考にはなったのかなとうれしく思った次第。
一部の大手企業を除けば、品質管理担当部署を設置していますというところでも、実際の仕事の内容は検査業務でしょうか。仕事の結果が目に見えるからということでしょう。最近の食品業界の不祥事に対しての行政の監視強化で、何事にも科学的根拠を示せというご時世ではこれはこれで必要でしょう。中小零細企業といえども期限表示の裏付けとなる保存試験なども行って結果を保持しておかないと、ふりかかる火の粉を払うこともできません。
このような仕事は品質管理担当部署の業務の一部で、根幹となる部分はもっと範囲が広い。JISには「品質管理とは買手の要求にあった品質を経済的に作り出すための、全ての手段の体系」とあります。品質の中心課題はやはりクレーム防止になると思いますが、担当部署としてはクレームの原因調査と対策立案、工場監査による工程改善、品質に関するマニュアルの作成整備と遵守の確認、従業員教育と啓蒙業務などなど。
そして昨今の自主回収のほぼ半分が不適正表示で、規格基準違反を含めると6割が法令違反関連とみられます。頻繁に改正される食品関連法令への対応も担当部署の業務でしょう。また、消費者心理などの環境変化に対応した社会倫理感を持って、偽装表示などにみられる誤った方向からの是正も。これらの業務の評価はなかなか目に見えません。結果として「品質管理担当部署は金食い虫、商売の邪魔」という間違った評価になる。
しかし昨今発生している問題から品質管理を疎かにすれば企業の存続は危うくなるという経営意識は多少は浸透し始めているように思います。食品産業は一部の大手企業を除けば中小零細がほとんどで、品質管理部門に多くの人材を配することはできません。クレームなどの発生に際して、おおよその原因を想像できる知識を持った意欲のあるオールマイティな人材を何としても育成しないと生き残ってはいけないように思います。人材の育成といっても前述したように範囲が広く、かなりの時間が掛かります。短期的な視点では、とりあえずは外部委託も併用して、そして腰を据えて人材を育成すべきと思いますが。
中国産ギョーザの模倣事件でしょうか、清涼飲料水への農薬混入や針、クギなどの危険異物混入事故が相次いでいます、ご注意のほど。

2008年3月22日<No.040>
食品メーカーさんは大変です
中国産冷凍ギョーザ問題を受けて、日本国内ではチャイナフリーの大合唱、中国側はといえば山東省を中心にして事実上の日本向け食品の輸出停止状態のようです。この問題については未だに闇の中、一刻も早く解決して欲しいものです。検疫所での加工食品の残留農薬検査が始まっていますが、各地方自治体もこれにならって、トップ肝いりで農薬検査の拡大を始めています。ただ、未だに加工食品での実用性が検証されていない検査キットも用いられているようで、このような方法での結果を公表するようなことになるのでしょうか、混乱してはしまわないのでしょうか。名古屋コーチン偽物問題では、DNAの簡易識別法での検査結果を学会発表した畜産草地研究所の検査手法が不適正と指摘されています。
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| アセビの花、庭の片隅に咲いていました |
このような中で、東京都では国内産の冷凍加工食品に原材料ごとの原産地表示を義務化する条例改正を行う方針とのこと。ある大手の冷凍食品メーカーの「えびシューマイ」の原材料欄には「たまねぎ、えび(タイまたは中国)、魚肉すり身、つなぎ(でん粉、卵白)、豚脂、植物油脂、砂糖、食塩、やまいも粉、ほたてエキス、えびエキス、しょうゆ、発酵調味料、オイスターソース、乾燥スープ(ほたて)、えびパウダー、香辛料、皮(小麦粉、でん粉、大豆粉)、調味料(アミノ酸等)」とあります。この中には省略規定で隠れているものもあるかもしれません。これらの原材料毎に原産地表示をしなさいということなのでしょうか。
JASの個別品質表示基準「冷凍しゅうまい」でも文字の大きさは8ポイント以上となっていますが、とてもではありませんが無理では(インスタントラーメンの表示に比べればまし?)。消費者はこのような表示をいちいち見て購入しますでしょうか、見るのは面倒くさいになってしまうと消費者のためにはならないように思います。さすがに全ての加工食品に義務づけとは考えてはいないようですが。
そして農水省は19日、流通、外食産業を含めた食品関連業界全体に向けて、「加工食品に係る原料原産地情報の積極的な提供について」という通知案とともにQ&Aを発表しました。容器包装への表示では、品質表示基準の一括表示欄や特色のある原材料表示に沿った欄外での表示を示しています。一括表示では個々の原材料の後に括弧を付して原産地を表示するとのこと。括弧書きでの表示は複合原材料、アレルギー、遺伝子組換えや食品添加物表示などがあり、一括表示原材料名の欄は括弧書きだらけになるのでしょう。
食品業界で実行可能な、また消費者にわかりやすい表示を踏まえての省略規定や一昨年8月のわかりやすい表示方法への改正が行われたのではないでしょうか。消費者の選択に資するという名の下に、手のひらを返したようなやり方には賛成できません、さすがに義務づけではなく、ガイドラインのようですが。時間を掛けて、冷静な議論がされていたとみられる食品表示に関する共同会議は蚊帳の外、開店休業でしょうか(近々開催されるようですが)。マスメディアや消費者団体に迎合した拙速な法令改正は軽々にやって欲しくはありません。
4月1日からは業者間取引にも原材料表示などJASによる表示義務づけが始まります。まじめな加工食品の原材料メーカーさんは表示の見直し作業にあたふたしていることでしょう。これまで業者間では品質規格書による詳細な情報提供での取引が一般的で、良心的な供給業者さんは包装へのラベル表示も併用しているようです。Q&Aによれば、供給業者は最終商品の製造業者が正しい表示ができるような情報を伝えられれば良いということで、伝達手段としては包装へのラベル、納品書、品質規格書などいずれでも良い、表示形式もかならずしも品質表示基準にはこだわらないなど弾力化がいわれています。しかし、当方が品質規格書、包装へのラベル表示を併用している製品についてJAS表示担当部局に問い合わせをしたところ、包装へのラベル表示をした場合は品質表示基準に則っての表示が必要とのこと。
この法令改正のもとはといえば、ミートホープでの農水省の対応のまずさの問題でしょう。現状では加工食品の原材料供給者に対してJASに基づく措置が行えないのは法規制の欠陥として、その責任を法の不備に転化しています。益々複雑になる食品表示、そして表示ミスがあれば最終的には自己責任、このような法令に振り回される業者さんには同情してしまいます。また、複雑になれば意識的な不正表示、偽装表示が入る隙間も多くなることも懸念され、消費者にとってもマイナスと思いますが。
警察の鑑定では、中毒を起こしたギョーザからは3000ppmを超える高濃度のメタミドホスが検出されたとのこと、やはり中国産ギョーザ問題は犯罪か特殊な事故、そしてミートホープ事件も欲に目がくらんだ経営者が起こした、どちらかといえばまれな問題に思えます。これらに関しての行政の連絡体制と対応のまずさ、生協などで現場から異常(臭い、手触りなど)が上がってきているのに、上層部が放置したという危機管理意識のなさこそが問題にされるべきでしょう。表示にばかり目が奪われて、本来の食の安全管理に手落ちが起きないように願うばかりです。

2008年2月16日<No.039>
メタミドホス、ジクロルボス
昨年初めにも、「1月には何か大きな問題が発生します」と書きました。今年は起きなくて済みそうかなと思っていた矢先の30日、「中国製ギョーザ10人中毒 殺虫剤混入、女児一時重体」というニュースが飛び込んできました。「それみたことか」とばかりに、ほとんどのマスメディアが次々と国民の不安を煽る記事を書き立てました。厚労省でまとめている健康被害の届け出では、13日現在5000人を超したとのことですが有機リンによる中毒は当初の10人だけで、他は全て否定されています。おそらく、届け出のほとんどがこの時期に多発するノロウイルス食中毒などではと思ったりしますが。
そして国内あげての中国産食品、冷凍食品排除の大合唱、手作りギョーザの活況映像垂れ流し。メディアの視聴率稼ぎには格好の題材でしょうが、食糧自給率39%のこの国でいつまでも続くとは思われませんが関連業者にとっては災難です。中国側が「日本のメディアは冷静かつ科学的にこの問題に臨んでもらいたい」と注文を付けたとのこと、何でもありという風潮もあるやに聞いている中国を全て支持するわけではありませんが、的を得た発言のように思います。これでお役人さんは大手を振って組織、権益拡大に走るのでしょう、メディアはその片棒を担いでいるとは思いませんか。
これまでの殺虫剤の検査結果では、健康被害が発生したギョーザの皮から残留農薬では説明がつかない高濃度で、そして回収された未開封の検体からも同様のメタミドホスの検出ということからみると殺虫剤を故意に混入させたとみるのが妥当でしょう。ジクロルボスの高濃度検出についても同様と思います。。また、日生協連の検査ではメタミドホスが低濃度で検出されたものが9月8日製造の商品に集中しているとのことで、これも人為的混入かもしれません。
13日の中国の国家品質監督検査検疫総局の記者会見では、人為的混入の可能性は低いとの見解を強調したとのことですが、真相の究明は今後の日中双方警察当局の捜査結果を待つしかありません。グリコ・森永や和歌山毒物カレーのような事件にみるまでもなく、故意の毒物混入などは防ぎきれるものではないと思います、いつ起きても不思議ではありません。問題は被害発生の拡大をどのようにして最小に抑えるかでしょう。
その他にも残留農薬の可能性も否定できませんし、徳島・コープ石井店でのジクロルボスの検出では、店内で使用の防虫プレートが原因とされましたがこのようなものもあるでしょう。防虫プレートについては、平成16年に厚労省から「ジクロルボス蒸散剤の安全対策について」という通知が出ており、「飲食する場所及び飲食物が露出している場所では使用しないこと」と明記されています。農薬飛散まで問題にされるポジティブリスト制度ができた今、店舗とはいえ食品を扱う場所で防虫プレートを使用しているとは迂闊ではすみません。残留農薬の微量検出も検疫所や地方自治体の検査などで輸入品のごく一部が排除されるのみで、今回のように大がかりな検査をやれば出てくるのかもしれません。
当方の従業員教育では「食品のプロでしょう、五感を研ぎ澄まして事故を防ぎましょう。いつもと違うことを見かけたら、上司に報告するなどすぐに行動を起こしましょう」と話していますがどうなのでしょう。今回の事件では、ダンボールに染みが付いていた、おかしな臭いがした、ベトベトしたなどが報告されていたようですが、報告を受けた側の当事者意識や想像力のなさ、処置のまずさが指摘されています。また、国や地方自治体側の連絡の遅れ、対応のまずさも。何でもマニュアル、マニュアルの世の中のせいでしょうか。マニュアルに出ていない突発的な問題には無力のようです。期限表示のミスや原材料表示順など重箱の隅をつついたような問題に右往左往して、木を見て森を見ずのように感じるのですが。
そして、昨年の食品不祥事、今回の事件をからめて、農水省は食品表示の業者間取引への義務づけ、食品表示Gメンの配備、やっと始まった原産地表示の見直しなど、厚労省は検疫業務の拡大、輸入業者への安全管理ガイドライン策定など、公取委は課徴金制度拡大(不正表示に3%)、5省庁合同の監視強化目的の食品表示連絡会議の設置等々、関係省庁の権益拡大への動きが始まっています。
前にも書きましたが、食品表示一つをとっても種々の法令、所管官庁があって複雑怪奇。福田首相肝いりの消費者行政一元化や、国民生活審議会提示の食品表示関連の法令一本化など、それ自体は評価できますが、今後の関係省庁の抵抗で骨抜きにならないことを祈ります。食品表示法令一本化については製造年月日表示の復活も検討されるとのことですが、その明確な定義づけや、難しい加工食品の原産地表示などをどうするかが前提とはなりますが。

2008年1月27日<No.038>
表示問題はどうなるのでしょう
パソコンの調子が悪く更新したのですが、データの移行に手間取って雑記帳も間が開いてしまいました。昨年の食品業界はなにもかにも「偽装偽装」とたたかれ続けました。ここにきてマスメディアのたたき疲れも出てきたのでしょうか、多少静かになってきたように感じます。
政府の方も、これらの問題の払拭にやっきとなり、先般の通常国会開会での首相施政方針演説では縦割りの消費者行政を「統一的・一元的に推進するための強い権限を持つ新組織を発足させる」と表明し、関係省庁に適切な処置の勧告権限などを与える新たな組織を作る検討を進めているようです。何かまた、屋上屋を作るだけといった税金の無駄遣いになるような気がするのは当方だけでしょうか。そして、食品表示Gメン設置など監視の目の強化だけは確実に進んでいるようです。
昨年噴出した問題については確かに悪意のある詐欺的行為のものもあるでしょうが、法令の不備や周知不徹底によるミスまでも同列で報道されているのが大部分と思えます。これらをきちんと整理し、どこに問題があるのかの検証をしないうちの対策といっても、食品業界を益々混乱に陥れることが心配されます。発生した問題の多くは表示の問題が発端となっていますが、これには食品衛生法、JAS法、景表法などいろんな法令がからんでいます。それぞれ「健康被害の防止」、「消費者の選択に資する」、「優越誤認の防止」など法令の目的が異なるということを盾に、その一元化といっても関係省庁がおとなしく引き下がることはないでしょう。
ここのところ、国も地方公共団体もHPで回収情報公表の花盛りになってきていて、一部では条例などで義務づけているところもあります。厚労省も農水省も自主申告ということは謳っていますが半ば義務づけのように思います(申告すれば罰則は軽くしてやるという意図がみえみえ)。両省の公表内容をみると、双方で同じような期限表示ミスの申告情報が掲載されています。食品の表示については共同会議が設置されて一元化が図られ、運用もその方向にあるのだろうと思っていたのですが、ここに来て縄張り争いの様相を呈してきているようです。食品を自主回収するというのは企業サイドの問題で、これに行政が口を挟むのは如何なものでしょう。小さな問題まで国の介入はして欲しくない、行き過ぎた企業活動の妨げが起きないことを望みます。
昨秋問題となった赤福さんもやっと操業再開に近づいてきたようです。製造年月日については厚労(保健所)や農水部局に問い合わせてもまともな返答は返ってきません。包装してから冷凍保存・解凍しても、半製品で冷凍保管、解凍して包装出荷してもその商品の安全性に違いは起きるとは思えません。「むきもち」などのような引け目を感じる行動があったので無理だったかもしれませんが、赤福のような体力のある業者さんが行政訴訟を起こしてくれると食品業界にとって大きな貢献になったかもしれません。
表示法令の不備を叫んでも企業にとっては何にもなりません、自分の所に火の粉が飛んでこないように自己防衛するしかないでしょう。ここにきて、2,3の企業さんから表示の指導を要請されていますが、特にJAS法による表示は何ともわかりにくい。どこかの説明会でJAS法の表示は複雑で理解できないという報道がありましたが正にその通りだと思います。JAS法による表示は、一般適用の品質表示基準(横断基準)と個別品質表示基準があります。将来的には一般適用の品質表示基準に統合する方向になることで検討されているようですが、現在は両法令とも生きています。
表示を作るにあたっては、全ての個別品質表示基準内容の理解が必要になります。その商品が個別品質表示基準の定義に当てはまるのか、使用する原材料にその基準があるのかを確認しなければなりません。それをやらないとまるで違ったものになり、法令違反ということになります。農水部局に問合わせても個別の疑問には答えてくれますが「その表示でよい」という確認はしてくれません。間違った表示の在庫製品を抱えるようになっても、JAS法には直罰がないのだからまずは自分で作った表示で出したらよい、要するに自己責任だそうです。行政はゴミが発生するのを奨励しているとしか思えないのが実情のようです。
ミートホープ事件を発端に、業者間取引に原材料などの表示を義務づける法令が4月から始まります。従来から、ほとんどの業者間取引では納入規格書を元にして取引がされてきました。これに原材料表示がされていれば個包装品には特に表示が必要がないとのことですが、コンプライアンスに熱心な企業さんは表示すべきというところが多いようです。表示をしてしまうとJAS法の品質表示基準に従わなければなりません。しかし、もともとJAS品質表示基準は消費者に情報を提供するためのもので、業者間取引にそれを当てはめるのは無理があります。何とかならないものかと思うこの頃です。

2007年12月7日<No.037>
製品回収の判断
今年も師走に入りましたが今年は食品企業の不祥事が延々と続いた一年になりそうです。ここにきて、ファーストフード、コンビニ業界にも飛び火しています。赤福や船場吉兆は未だに先が見えないようですが、白い恋人の石屋製菓はほぼ発覚前の業績に回復したとのこと、不祥事発覚後の対応が明暗を分けることがはっきりしたように思います。この辺が峠でしょうか、それともまだまだ続くのでしょうか。
利益最優先でウソをつく、自分のところだけ儲かればよいという一部の詐欺的業者が社会的制裁を受けるのは当然でしょうが、大部分は真面目な業者だと思います。単純なうっかりミスもマスメディアの手にかかると同じ偽装のように報道され、消費者も行政もそれに踊らされているように見えるのは当方だけでしょうか。それに敏感に反応して、食の安全に直接関わるとは思えないものまで回収するなどで食品業者の疲弊が進み、そのツケが消費者に回ってこないことを願うばかりです。
先日、突然当方宛に消費者の方からメールを頂きました。内容は、「大手のM食品メーカーのグラタンを食べたのですが、中に繊維質の硬い異物が混入していました。メーカーに連絡したら担当の人が来て、異物を持ち帰って分析するとの話でした。その後消費者センターに問い合わせをしましたが、そのメーカーでは自主回収はしないとのこと。解決するまでは怖くて購入できない、他のメーカーでもそうなのでしょうか」ということでした。
「大手のメーカーさんですから苦情に対しての回収基準は決まっているでしょう。健康被害の恐れや被害拡大の可能性などによりクラス分けしていて、回収を判断しているのではないでしょうか。分析結果の返答をお待ちになっては」と返答しましたところ、「判断基準があるのですね、納得しました」とのことでした。
ところが、昨日のこちらの地方紙のくらしの欄に、「缶詰に金属片 宮城は報告書、大阪は自主回収 同じメーカーで対応に違い」という記事が載っていました。当地の女性がツナ缶を開けて食べたところ、鈍い痛みが走り、確認したところ金属片が混入していた。メーカーに連絡し、調査の結果は金属たわしの一部と判明したが製品の自主回収は行わない、今後万全な品質管理に努めますという報告書だけだったという。
一方大阪で、同じ工場で製造されたツナ缶にカッターナイフの刃片が混入していたという苦情が発生してニュースで報道され、メーカーは万全を期して自主回収を決めた。同じ金属、同じ工場のものなのに対応が違う、この女性は納得できないとのこと。当然な疑問でしょう、大手であるこのメーカーの消費者側に立っていない判断基準には当方も疑問を持ちます。2年前に、(財)食品産業センターが出している「食品企業のお客様・事故対応マニュアル作成のための手引き」に製品回収の判断が示されています。参考にすべきと思いますし、広く周知をはかって公的な基準としても良い代物と思います。
このような直接健康被害に結びつく回収は別として、安全には直接結びつかないとみられる、単純な期限表示ミスのような自主回収のなんと多いこと。食糧自給率が39%まで落ち込む中、不法投棄まで起こす多量の産業廃棄物を発生させて。マオタイさんの「もったいない運動」までもないですが、戦後の食べるものにもことかく幼少時代を過ごした当方としては何とも嘆かわしい。
そちこちの地方自治体で自主回収の報告義務づけが始まっていますが、当方には行政の責任のがれで回収を後押ししているとしか思えません。そのような報告を義務づけるのであれば、きちんとした回収基準も明確に示すべきだと思います。法令の改正にあたってはその運用ということで、最近は様々なQ&Aが示されるようになっています。行政には回収事例などかなり集積しているはずです。これを基にして、自主回収の基準Q&Aのようなものを作って示すべきではないでしょうか。
当方の勝手な意見になりますが、単純な期限表示ミスのようなものが発生したら、業者は監督機関に届け出をする、そして国が保証した訂正シールのようなものの配布を受けて訂正するという方法などもあるのでは。有料でよいと思います、訂正に行政の立ち会いが必要であればその人件費も業者が負担すればよい。食には限りませんが、資源の乏しい日本の中で有効に活用する、次世代への環境に配慮する知恵を国全体で絞り出すことが必要に思います。
先日、崎陽軒のシューマイで自主回収がありました。原料に使用した干し貝柱の表示順が間違っているという理由です。崎陽軒では水戻しした重量で計算したとのことでしたが、実際は干し貝柱で計量、使用したようです。これとて、品質としては何も変わらない、回収して廃棄となるのでしょうが何とももったいない。

2007年11月9日<No.036>
どこまで広がる不適正表示
赤福が店頭で売れ残った商品を回収し、冷凍保存して再出荷していた問題で、伊勢保健所から食品衛生法に違反したとして無期限の営業禁止命令を受けました。そして、大館市の食肉加工製造会社「比内鶏」、有名料亭「吉兆」グループの「船場吉兆」、伊勢の和菓子屋「御福餅本家」などで次々と問題が発覚しています。いずれも発端のほとんどが告発で、農水省によれば食品表示110番への通報は、今年6月から10月までで前年同期の3.2倍の1,938件に上るという。
これらの事件は、ミートホープによる牛肉偽装や比内地鶏偽装、そして牛肉、うなぎ、たまねぎの産地偽装などの詐欺ともいえるものと、製造日(最終容器に入れられた日?)の定義が不明確などの法令の不備や、行政の周知不徹底による悪意のない違反に分かれるのでしょう。これらがマスメディアによって一律に報道され、それに迎合したように監督官庁の法令違反、行政処分の判断もバラバラになされているように見えます。農水省を初めとした行政も対策本部の設置、取り締まりや罰則強化を掲げていますがこれで問題が解決するでしょうか、食の安心が回復できるでしょうか。悪意のある詐欺的行為にはある程度の効果はあるでしょうが、法令無知による違反にはほとんど効果はないように思えますが。
最近では、原材料の表示順でのJAS表示違反という案件も見られてきています。不適正表示の指摘を受けた伊勢の太閤餅社の社長さんは「40年前からの表記。不注意で(重量順にするとした)JAS法を見落としていた」と話していると報道されています。そして、また聞きの話で申し訳けないのですが、このような報道が次々とされている中、当地の結構名の売れた伝統菓子店の社長さんが「うちはJASは関係ないから心配ないよ」と話していたとのこと。当分は不適正表示摘発の嵐は止みそうにないようです。
現在のJAS品質表示基準は平成12年7月に全ての食品に義務づけられましたが、それまではJAS規格のある加工食品を中心にして約60品目だけにありました。JAS規格認定の技術的基準には品質管理責任者の選任が必要でしたし、JAS協会を中心とした講習会も頻繁に開催されて品質表示基準の周知も図られていました。これらのメーカーでは、JAS品質表示基準は食品衛生法との整合性が取られていて、これに合致していれば表示に関する問題は少ないことは理解していたでしょう、JAS法が身近な存在であったのです。
一方で、ほとんどの食品メーカーはJAS品質表示基準はなじみのない法令でした。それぞれの地域には「健康被害の防止」を目的とした食品衛生法の下に保健所が設置され、講習会の開催や現場指導を含めて細かな対応をしてきました。営業施設には食品衛生責任者の設置が義務づけられています。そして保健所は業者の身近な相談機関として利用されてきていたのです。そこに全ての食品に「消費者の選択に資する」目的のJAS法の網が被せられたのです、大企業から果ては零細業者まで。大企業は別として、経営者も現場で働かざるを得ない零細業者では自らで情報収集をといってもなかなか難しい。
ここにきて各地でJAS表示の講習会やセミナーなどが頻繁に開催されるようになってきました。農水省や地方自治体はJAS法の周知徹底がいかに不備であったか、やっと気付いたのでしょう。ただ、農政局HPの「食品の業者間取引の表示に関する説明会」の案内には、対象業種は「消費者、生産者、製造者、流通業者、行政関係者、その他」となっていて広範囲です、そして「定員になり次第締めきる」とのこと。この中にみやげものなどの零細製造業者が入れるでしょうか、対象業種を絞った、もう少しきめ細かな対応が必要と思いますが。
これまでの偽装といわれる問題は食品製造業者だけの責任でしょうか、小売流通業界に責任はないのでしょうか。取引が始まってからは欠品を起こすとペナルティが課せられ、何度も繰り返すと取引停止。小売流通側は取引先を変更するだけでどこも傷まない、バイイングパワーの論理がまかり通ります。そして最近は、あれほど騒いだ中国食品の安全問題についてのマスメディアからの報道はほとんどありません。視聴率の問題でしょうが、軽微な表示違反まで一斉に同じ報道に走ります。消費者の食の安全への不信醸成への責任はないのでしょうか。これらの業界ごとに対象を絞った行政の説明会なども必要に思います。
島根県菓子工業組合主催の食品表示勉強会が開かれたそうです。食の安全を守るための法の複雑さに、製造業者からは疑問の声が相次いだとのこと。前述した従来からある品質表示基準(個別品質表示基準)は業界団体からの意見を取り入れて決められています。現在の品質表示基準も業者の意見を取り入れた間違いの起きない法令にしてもらいたいものです。
そして現在、食品表示に関する共通の相談窓口は設置されてはいますが全国に数カ所です。このような機能を持った気軽に相談できる窓口が必要ではと思います、三重県の保健所のように共通の窓口を謳ってJAS法については知らなかったということでは困りますが。縦割り行政の中で、それぞれ目的が違うのはわかりますが食品製造業者にとっては同じ食品表示なのです。

2007年10月18日<No.035>
イカ塩辛による食中毒
当地は大分寒くなってきましたがこれで平年の気温とのこと、今夏は記録的な猛暑が続いたおかげで、当家の庭木も3本ほど枯れました。そして、カビ・腐敗など食品の微生物原因の事故も多発したようです。7月から9月までの腐敗・変敗による自主回収は、昨年と比較してみますと17件と約2倍になっています。
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キンモクセイの花も終わり、今は四季咲きのバラが
満開です |
北海道の食の信頼をゆるがす事件は当地にも波及し、前回述べたように9月には2件の食肉業者の期限がらみの不祥事が発覚しました。その間を縫って発生した水産業者製造のイカの塩辛による腸炎ビブリオ食中毒事故は関東以北をかけめぐり、一気に全国版となって厚労省からも注意喚起が出るような事件に発展しました。
小生が幼少の頃、イカの塩辛製品などは店では売っていなかった?のか、どこの家庭でも自宅で作っていたように思います。冷えびえとした冬の寒い時期に熱々のごはんに乗っけて食べたものですが、かなりしょっぱかった記憶があります。しかし今、スーパーなどで売られているものはそのままで食べられる酒の肴になるような薄塩のもので、年中販売されています。
真水に弱いということだけ強調されていますが、腸炎ビブリオが生育できる食塩濃度は1〜9%、海水と同じ3%程度が増殖至適濃度とされています。イカの塩辛の食塩濃度はもともとは10%以上あったようですが健康志向とかで食塩が悪者にされ、徐々に減少してきて現在は5%程度が主流になっているとのこと、このようになってきますと加熱殺菌工程を加えることはできないでしょうし、昔は常温で保存できる発酵食品とされたものは生鮮食品と何ら変わらないものとして取り扱っていく必要があると思います。
10年ほど前までは三大食中毒原因菌といえばサルモネラ、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌。最近は腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌原因の事故は減少して、ノロウイルス、カンピロバクターに取って代わられた状況にあります。腸炎ビブリオ食中毒が減少した一つの理由として2001年の規格基準改正の影響が大きいとされています。この改正では生食用鮮魚介類を対象にして「成分規格」、「加工基準」、「保存基準」、「表示基準」などがが決められました。これらの基準も踏まえた取り扱いも必要となります。
イカの塩辛も旧来の保存食品の考え方で製造していたとすると運がいい、悪いの世界です。納入された原料が汚染されていないか、交差汚染はないか、保管温度・加工時間は?と常に問いかけて製造にあたるべき。特に温度は重要です、10℃以下できれば4℃以下での加工・保存が求められます。
食中毒といえば飲食店、旅館、弁当屋さんが相場ですが、雪印の事故でもわかるように食品メーカー製品によるものは広がりが大きい。この食中毒事故でも発生してからそちこちの地方自治体、厚労省のHPで注意喚起がなされましたがすぐには収まりませんでした。営業禁止という行政処分はすぐに出されましたが、刑事、民事訴訟などの後始末はこれからが本番。よほど注意しておかないと事故発生は企業そのものの存続がおかしくなるということを常に念頭に置く必要があるでしょう。
そして、またまた期限がらみの問題が明らかになりました、伊勢の老舗和菓子メーカー「赤福」です。今年は何度同じような場面を見ることになるのでしょう。赤福では配送車に残ったり、余分に製造した商品を冷凍保存し、解凍して再包装した日付を製造日とし、消費期限も合わせてずらしていた。保健所への相談では問題ないとのことだったが、農水省では包装前に冷凍し、それを製造途中として扱えば問題はないがこの件はそうではない、ということでJAS法違反で指示・公表となったのこと。共同会議の設置で食品表示の一元化が図られていると思っていましたが相変わらずの縦割り行政、何とかならないものでしょうか。
確かに、かまぼこ業界などでは年末の繁忙時期に半製品として冷蔵庫に保管して、出荷時に製造年月日を付けるのは合法とされて現在も続けられているはず。当方もある蒲鉾メーカーの冷蔵庫で、真空包装され期限表示のない製品(半製品?)を見て、「少なくともロット番号は付けておかないと何か問題が発生した場合には回収が大変ですよ」と話した記憶があります、このような例はいろいろなところにあるのでは。食品表示については一元的相談窓口の設置は僅かです、現在のところグレー部分は保健所とJAS表示担当部局両方での指導を受けるしかないようです。

2007年9月24日<No.034>
収まらない期限表示問題
不二家、ミートホープ、石屋製菓と立て続けの不祥事発覚、今年は食品業界にとって最悪の年になりそうです。内部告発による不祥事発覚、マスメディアの売上げ至上主義、貧しい知識に基づく大げさな報道とあら探し、行政の立ち入り調査、行政処分と各省庁からの通知の発出、そしてオーナー経営者の退場と同じ図式が繰り返されています。そして、この嵐はこれまで静かだった当地にも及んできたようです。
前述のような知名度のある企業ではありませんが、「精肉石川屋」という食肉卸業者がラーメン店に牛肉納入の際、解体業者が記入した賞味期限をボールペンで改ざんしたというもの。ラーメン店がこれに気付いて仙台市に通報、立ち入り調査で判明したようで、その後はほとんど同様の図式で進んでいます。
ミートホープ事件では、牛ミンチ偽装という詐欺的行為の陰に隠れましたが、期限切れ冷凍食品の日付を変えての再包装転売や原料肉の加工月日改ざんもあったようです。不二家不祥事では期限切れ原料使用が発端でしたし、石屋製菓の件では在庫調整のために、科学的根拠もなしに勝手に賞味期限を変えたというように、いずれも期限表示がらみが中心になっています。
不二家不祥事直後に実施された東京都の「食生活と食育に関する世論調査」では「鮮度や賞味期限を重視」する人が74%になっていますし、ミートホープ事件直後の大阪府の「食の安全安心について」のネットアンケート調査結果では、食品が安全安心だと思わない理由として「原産地や賞味期限の偽装表示」が86%に達しています。石屋製菓以降の今、このような調査を行ったらどのようになるのでしょう。どうも、食品からは賞味期限偽装が連想されるような状況にあるようです。
先日、夕飯の食材が不足して買い物を頼まれました。買い物袋を開けた我が家の主婦に、「これ棚の前の方から取ってきたでしょう」とのこと。「何で」と聞いたところ、「賞味期限が近いでしょ」と言われました。「ははん、世の中の主婦たちはあちこちから選択しているんだ」、そしてはじかれたものは期限切れとなり、膨大な産業廃棄物と化すのだろうなと思った次第。
どこで見たのか忘れましたが、消費者行動として期限間近のものには手が伸びないそうで、これはわかります。しかし、期限表示の長いものも添加物使用などの疑いがあるというので敬遠するそうです。食品添加物は表示が義務づけられていて見ればわかります、昔からある塩蔵、糖蔵、缶詰や冷凍食品などは知恵が蓄積された長期保存食品なのですが。一方で、繁盛しているラーメン店のテレビの紹介番組で、当店のうまい秘訣は何十年も継ぎ足し続けた秘伝のタレを使用しているからというような宣伝文句で、客が行列をなしている様子が流れますが、これはいったいどうなのでしょう。
このようなこともあり、製造メーカーは保存試験に基づいた可食期間よりもはるかに短い賞味期限を表示しがちです。欠品を起こせば小売業界からペナルティを課せられるということもあって、在庫は多めにしておくのが一般的でしょう。そして期限切れによるロスの発生。この悪循環が益々大きくなってきているように思います。先ずは生産ロット、適正在庫量の頻繁な見直しが基本でしょうが賞味期限の再検討も重要な課題と思います。期限切れ原料使用も問題になります、原資材発注に関しても軽視できません。
今月半ばの北海道新聞に「賞味期限を一日切れたプリンを買わされた」といって保健所に苦情を持ち込むという記事が載っていました、当地域の保健所でもこのようなことが結構あるようです。以前は販売店に持ち込むとかメーカーに苦情をいうのがほとんどでしたが世の中が変わりました。そちこちから告発が出てくることを念頭
におかなければいけない時代です。法令を守ったからといって十分ではありません、外部からおかしいと指摘されない行動が求められているようです。保健所などの監視機関も苦情を受けると、健康被害発生の恐れがなくとも動かなければたたかれます。
宮城県では、7月初めに報道された期限切れ原料使用のマグロすきみの件で、県食品衛生法施行条例改正案に対するパブリックコメントの募集がなされています(3年半前に厚労省からガイドラインが出ているがやっと)。その中には、どのように運用するのかわかりませんが、業者が自主回収をした場合の保健所への届け出義務が記載されています。自主回収までも行政が関与するのであれば、回収基準も決めてもらいたいものです。
まだまだ暑い夏が続き、大きな食中毒事故がそちこちで発生しているようです。当地でも水産加工業者製造のイカの塩辛で大きな腸炎ビブリオ食中毒が起きています。どこまで広がるかわかりません、ご注意のほど。

2007年8月29日<No.033>
二度あることは三度ある
例年30℃を越すのが数日あるかないかの当地も、今年の夏は連日35℃以上の猛暑日の連続。12日の報道に、食品衛生法の規格基準に適合しないことが判明したとの理由でアイスクリームを回収するという、これまであまり見かけたことのない内容のものがあり、これは何だろうと不審に思っていました。そして、盆休みの最中に“「白い恋人」賞味期限を「引き延ばし」、ブドウ球菌入り菓子出荷、アイスから大腸菌群検出・保健所が公表せず”などメディア格好の題材が次々と報道されました。
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肥料もやらないのに今年も咲きました、アメリカフヨウ
の大輪の花。秋ももうすぐです。 |
あ〜あ、今年は不二家不祥事、ミートホープ事件、そしてこの石屋製菓と三度目だ、不二家信頼回復対策会議の最終報告書でも、「不二家には、社会の要請の変化、環境変化に適応すべく抜本的な事業の再構築を求められていたが、それが行い得ないまま、問題が表面化することになった」との指摘があるのに。
食品企業に限ったことではないのでしょうが、参入時点では家族経営のような零細企業から出発しているのがほとんどと思います(特に食品関連では高度な技術も必要なく、参入しやすい?)。これはやむを得ないのですが、売り上げが大きくなるとともに管理技術も伴っていかなければ、どこかに無理が生じて転げ落ちる危険性もはらんでいるのです。売り上げが急激に伸びて、一代で大きな会社に築き上げたところというのは特に。
「賞味期限表示が義務だとは知らなかった」、「消費者は新しいものを好むので」とはこの社長さんの弁だそうです。社長さんが何から何まで理解している必要はないし、できないと思います。正しい判断が下せるように、取り巻きの人たちの支えが必要なのですが。コンプライアンスが云われる環境の中で、少なくとも「法令の知識は商売の邪魔になる(このようなトップの考えは、昔は結構あったようです)」という考えがあれば捨てるべき。そして、社長に耳障りな話でも進言できる風通しの良い企業風土を作り上げるべきです。
原因究明と再発防止に向けて、外部有識者によるコンプライアンス確立委員会が設けられたが、不二家さんとは違って前社長に近い委員が目立つ、衛生管理体制の不備がどこまで解明されるか不透明との報道。このような状況をみると、社内の取り巻きの人たちは都合の良い話だけしか社長の耳に入れないイエスマンばかりだったのではと勘ぐってしまいます。
当初の自主回収公表では、保健所から回収理由(大腸菌群検出)を記載するように指導されていたにもかかわらずに従わなかったとのこと。保健所はあくまで監視機関です、その助言には耳を傾けて良好な関係を保っておくべき。社長さんが身を引くことになったのも、そうでないと収まりがつかない状況になったからでしょうか。
そして、自主回収では例のない石屋製菓全商品の回収となりました。
大腸菌群検出については(マスメディアによる大腸菌との間違った報道は相変わらず)、多少検出されたからといって大騒ぎする問題ではないと思いますが、きまりはきまりです、原因を追及して改善すれば衛生管理の向上には効果を発揮します。大腸菌群が検出されて回収廃棄したアイスクリーム類商品の80%から大腸菌群が検出された、保健所では法令で決められた殺菌温度が守られていなかったと指摘しているそうですがそればかりではなさそう、殺菌工程以降の施設設備、機械類にも問題がありそうです。
当方も以前に、その基準のある食品の製造メーカーから、「大腸菌群が検出された、どうしたら良いのか」という相談を受けました。工程を見てみたところ、製造ラインに結露が結構見られる部分があり、ここを検査してみたらと話したところ、案の定検出されました。その部分を徹底した洗浄、殺菌を行った結果、製品にも検出されなくなったのです。そして、そのような汚染部分は他にもあるでしょうから今のうちに徹底調査をした方がいいですよと話してありましたが、熱が冷めたのでしょうか実施されませんでした。翌年の夏に、この汚染が再び浮上することになったのはいうまでもありません。
どのような工場でも、常時完璧な衛生管理がおこなわれているというところはないでしょうし、コストの面でもできないでしょう。。不二家や石屋製菓の例でわかるように(ミートホープのような詐欺的な事件は別として)、当初はさほど気にすべきとはみられない問題でも、一旦表に出てしまうとマスメディアなどに次々とほじくられることになり、会社存亡の危機にまで至る危険性をはらんでいるのです。いつも環境の変化へのアンテナを高くし、消費者側に立ってみて、当社の衛生管理はこれでよいのかを自問自答しなくてはいけない時代にあることを肝に銘じる必要があるでしょう。

2007年7月31日<No.032>
何とかならない、期限切れ原料使用問題
ミートホープ社の牛ミンチ偽装事件から1ヶ月が過ぎ、不安を煽るだけ煽ったマスメディア報道もいつものようにぱったりとなくなりました。ただ、京都の地球研の調査で、一般に流通している牛肉加工品の多くに豚や鶏の肉が混じっている可能性のあることが判明したとの報道がありますし、農水省の調査結果も8月には出ることになっています、大きな蒸し返しにならなければ良いのですが。そして、今メディアを賑わしているのが中国食品問題。中国政府も北京オリンピックを控えて、偽薬を承認した食薬管理局の元局長の処刑、安全性に問題のある食品会社のブラックリスト公表、違法食品の通報懸賞金の引上げなど次々と対策を講じ始めたようです。
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品種が多いので正しいのかどうか分かりませんが、
購入した時はヒメエビネでした。 |
そんな中で、今月初めに当地にある北州食品で、賞味期限切れのマグロすき身を使った商品を業務用に出荷していたと報道されました。宮城県はその報告を受けたが健康被害はなく、食品衛生法違反ではないので公表はしなかったとのこと。この判断に県の安全安心推進会議から批判が続出し、県は消費者への情報提供のルールづくりを検討するという。自治体による公表が届け出業者にマイナスになるとは思いませんが。東京都では自主回収報告制度で報告を義務づけて公表していますし、大阪、福井、長野、最近では群馬など、多いとはいえませんが自主回収が公表されています。
また、今月半ばには賞味期限切れ調味料を使用していたとして大塚食品が中国製スナック菓子の自主回収が報道されました。これなど、安全性には全く問題ないと思うのですが。不二家問題で衛生管理の不備が指摘されたことを受けて、ということでしょうがあまりにも敏感になりすぎでは。大塚食品の監査機能はきちんと働いていますよとのアピール、とも受け取れるのは当方の思い過ごしでしょうか。そして回収したものは産業廃棄物?、何とかなりませんかね。一方で、農水省の’06年度食品ロス統計調査(世帯調査)結果では、前年度より0.4ポイント低下したとのこと。
ウィキペディアには、保存食とは比較的長期間にわたって貯蔵するため、腐敗を抑制する加工や処理がされた食品をいうとあり、塩蔵、糖蔵、乾燥、燻製、発酵、缶詰や冷凍も含むとも。味噌でいうと、5〜6年経たものが食べ頃、さらに古い味噌を保有している家がお金持ちの証拠だったそうです。これが容器包装に入れて販売されるようになり、製造年月日そして賞味期限が表示されるように。消費者は日付を見て、より新しいものを購入するので、メーカーは意識的に期限を短く設定するようになります。
この例に限らず、メーカーサイドでは賞味期限には十分過ぎるほどの安全率が掛けてあり、あくまで目安ということをわかっていて、多少の期限切れは問題ないとなるのでは。実際にこれまでは、納入先から期限が多少切れていていてもかまわないから納入してくれというようなこともよくあったという話も聞きます。食品安全基本法には食品関連事業者の責務として、自らが食品の安全性の確保について第一義的な責任を有しているとあります。偽装は論外ですが、さほど問題にすることではないように思いますが・・・。
牛ミンチ偽装事件をきっかけに、現在農水省の「食品の業者間取引の表示のあり方検討会」で業者間取引での表示が検討されていますが、当然期限表示についても検討されるでしょう。現在食品衛生法、JAS法いずれでも、業者間取引での期限表示はほとんどの食品で義務づけされてはいません。不二家問題の期限切れ原料使用では、消費期限切れについては食品衛生法違反、賞味期限切れは違反ではないとされました。食品メーカーにとっては賞味期限切れの原料の使用はダメというような通知でも出してもらった方が良いのかもしれません、購入ロット問題、在庫管理コストを除けば。そして、現在は期限設定算出の安全率の掛け方はメーカーサイドに委ねられていますがガイドラインなどで示してもらった方がスッキリとするのでは。
13日、科学的根拠のない消費期限を表示販売したとして東京都の食肉販売業者が食品衛生法違反で公表されています。多くの小規模業者はこれまでは自分のところで保存試験をおこなって、結果に基づいた期限表示をしているところはほとんどない?、同種の食品の期限を参考にして記載しているのが実状でしょう。今後は零細業者といえども科学的根拠が求められるようになります、ご注意の程。
このような流れをみると、食品メーカーとしては使用する原料は小ロット発注にして在庫はできるだけ持たない、見込み生産をやめて製造ロットを小さくした受注生産への対応をとることになる、納入業者にもシビアな管理を要求することになるでしょう。期限設定のための保存試験や、微生物・アレルギーなど直接安全性にかかわるものだけでなく、DNAなど種々の検査も頻繁に要求される。いずれもコストを押し上げる要因ばかり。前回も述べましたが、零細企業は余程の知恵を絞り出さない限り生き残るのが難しい時代の方向にあるのは間違いないようです。

2007年7月10日<No.031>
まだこんな会社があったとは
前回の末尾に載せましたが、朝日新聞のスクープで北海道の食品加工卸会社による牛ミンチ偽装が報道されました。北海道加ト吉製造、日本生協連販売の牛肉コロッケの原材料は牛肉、牛脂と表示されているのに、朝日新聞社が実施したDNA検査では豚肉だけか、豚肉が大半を占めていた。そして北海道のミートホープ社が豚肉を使ったひき肉を「牛ミンチ」として出荷していたことが判明したとの内容。こころない一業者のために、また食への信頼が遠のくことになってしまいました。消費者を、取引先を騙していた、そして食品関連業界への影響などその罪は重いと云わざるを得ません。
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| 真夏の花、キョウチクトウ。しばらくは楽しめそうです |
その後の報道では、ミートホープ社は社長の指示により混入したのは、豚肉ばかりではなく、心臓、内臓、鶏肉、チャーシュー・ラムのクズ肉、果てはパン、血液や水注入などとのこと。農水省が実施したDNA検査でも牛、豚、鶏の遺伝子の検出が公表されています。また、外国産鶏肉を国産と偽って販売、牛個体識別番号を偽装していたことなども明らかになっています。これらはJAS法違反ですが、食品衛生法違反の案件も判明しています。解凍に雨水を使用していた、基準超過の発色剤が検出されたが回収命令が出される前に売り抜けていた、定かではないが大量の調味料使用など。いったい、この社長は自分のところで作ったものを食べてみていたのでしょうか。
そして、期限切れ冷凍食品の転売、他社の包材を偽造した鶏肉の販売、得意先に提出する証明書類や送品明細書の偽造、PL保険金の不正受給など。コンプライアンスが叫ばれていますが、全くの法令無視、「私が法律そのもの」というようなやり方で、おおよそ食品を取り扱う資格のない経営者だったのでしょう。このような会社には退場してもらうしかありません。
それにしても従業員はかわいそう、おそらく自分の会社で作られたものを自分の家族に食べさせたいとは思わなかったでしょう。自主検査で食品衛生法の食肉製品の基準に合わない結果が出ても、社長から偽造を指示されていたとのこと、検査担当者も自分の存在意義を否定された思いになるでしょう。内部告発も複数回あったようで、起こるべくして起こったということです。
内部告発を受けての行政の対応も批判されています。そして不毛なことですが、農水省と北海道は縄張り争いをめぐっての責任逃れ。農水省から事実関係の調査報告書が出ていて、農政事務所の対応は適切さを欠いたとあり、数ヶ月の減俸程度でしょうが対応者の処分を検討するという。仕事を失うという覚悟を決めて、サンプルや在庫管理表、果ては社長の指示書まで持参して内部告発を行ったのに取り合わなかったという役人の感覚が一般人にはわかりません。
農水省、北海道などもメンツをかけてDNA鑑定も含めた調査を始めていますし、他の地方自治体も食肉関連業界を中心にして立ち入り調査を進めています。これ以上に問題が広がらないことを願うばかりです。さらに農水省は業者間取引についてのJAS法の品質表示義務の適用について、「食品の業者間取引の表示のあり方検討会」を設置して検討を進めています。
一方で、苫小牧保健所にも複数回の内部告発があって立ち入り調査を実施したが、ほとんどは事前通告で検査はザルだったと指摘されています。今後は保健所の立ち入り調査も抜き打ちの方向で進むとみられます。食品業界は、社長までもが製造現場で働かなければいけない零細企業がほとんどです。抜き打ち調査が強化されれば生産が滞る事態も予測されます。他の業界もそうでしょうが、どうも零細企業は生き残るのが難しい時代の方向にあるようです。
そして、コロッケを製造していた北海道加ト吉にも責任の一端があるとの報道もありますが、販売していた日本生協連には責任はなかったのでしょうか。昨秋、日本水産はミートホープ社の悪いうわさを耳にして取引を停止したとのこと。うしろめたさがあったのでしょうか、問題のコロッケの過去販売分の返金をするという。これまでも食品メーカーに厳しい要求を求めてきた小売業界は食の安全・安心の御旗の下に、更にDNA検査結果の提出までも求めることにならないように望みたい。あくまで、とんでもない一業者が起こした事件です、ほとんどの食品メーカーはコンプライアンスを意識しながら、良識に従って業務に携わっていることをお忘れなく。
本日の報道では、パフォーマンスでしょうがミートホープと取引のあった北海道の冷凍食品会社がDNA検査を導入するという。流れはどうも悪い方向に進んでいるようです。性善説の考えを基に、社員の自主性に重きを置いた従業員教育をしている当方としては、何とも腹立たしい、このような事件が二度と起きないように願うばかりです。

2007年6月22日<No.030>
“ もったいない ”
ウィキペディアには「もったいない運動」について次のように記されています。ケニア出身の環境保護活動家であり、2004年に環境分野で初めてノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイが、2005年2月に京都議定書関連行事のため、毎日新聞社の招聘により日本を訪問したときに同社編集局長とのインタビューでこの言葉を知り、日本人が昔持っていた「もったいない」の考え方こそ、環境問題を考えるにふさわしい精神として感銘したという。・・中略・・。この意志と概念を世界中に広めるため他の言語で該当するするような言葉を探したが、「もったいない」のように自然や物に対する敬意、愛などの意志(リスペクト)が込められているような言葉、また消費削減(リデュース)、再使用(リユース)、再生使用(リスペクト)、修理(リペア)の概念を一語で表せる言葉が見つからなかったため、そのまま『MOTTAINAI』を世界共通の言葉として広めているという。
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当地も梅雨入り宣言が出ました。直前に咲いた
タイサンボクの花、何ともクラッシックな感じ。 |
今月1日、キッコーマンが米国の会社から輸入販売している健康食品の原料にガンマ線照射の可能性があることが判明し、納入先の健康食品会社とともに自主回収を行っています。前回も書きましたが、業務用原料は問題を起こすと広がりが大きい、現在公表の自主回収は25社に上ります。キッコーマンは以前にも今話題のジエチレングリコール入りのワインを欧州から輸入して問題を起こしており、この経験が何故生かされないのでしょうか。
現在、食品への放射線照射の検討が始まっていますが消費者団体は「それみたことか」と益々反発することになるでしょう。5年前に多発した不認可食品添加物でもわかるように、食品の法令はその国々の事情によって違うことを十分に確認して輸入にあたるべき。自主回収したものは廃棄ということになるのでしょう、もったいない。
一方で先月半ば、ヤクルトの販売子会社が賞味期限間近の飲料や食品など売れ残り品を回収し、短期間で大量に売れる別の取引先に再納品していたという報道がありました。この子会社では回収・再納品は「再利用」などと呼ばれて昨夏から4ヶ月間続けられ、今年1月の社内発表会で廃棄ロスの減少につながったという報告がされた。その席で「お客様へのサービスとしてはいい方法ではない」との指摘を受けて以後はやめたという。
社員の自主改善活動なのでしょうが、何とも短絡的過ぎはしないでしょうか。再納入先にはいったん店頭に並んだ商品であることを伝えてはいなかったとのこと、批判されても仕方がないようです。また、期限表示は保存方法とセットです、設定にあたっては安全係数は掛けて算出しますが表示を担保する保存条件が満たされているかも問題です。「もったいない」と「再利用」を両立させるためにはこれらの条件がクリアされているか、また消費者の理解を得られるかがポイントでしょう。「わけあり商品です、このような取り扱い・確認をしていますので安全性には何ら問題はありません」という掲示をして、消費者の納得を得て販売する分には問題はないとは思いますが。
数日前のこの件に関する報道では、ヤクルト本社の聞き取り調査で全国の販売会社の2割にあたる24社で同様の再納品が行われていた可能性があるという。その大きな原因として、製品を一定の数量以上を仕入れると、本社から販売会社に報奨金が支払われるシステムがあり、販売会社幹部の話では「販売会社に製品を売りつけるばかりで再納品のような方法を明確に禁じてこなかった本社側にも責任はある」とのこと。
そんな中での不二家不祥事に関連して、3月販売開始以前の安全性に何ら問題のない一般菓子の廃棄が報道されました。新しい不二家をアピールするために、これらを廃棄処分するという判断が一旦は下されたようですが「有効活用したい」との思いで、個人ではなく活動を行っている団体や労組などを対象にして4月初旬より無料配布をしているという(信頼回復対策会議・森田満樹さんのコラム)。今月初めにも新潟の社会福祉協議会に寄贈され、障害者や高齢者の福祉施設に配られたと報道されています、拍手、喝采を送りたい。
昨年公表された食品の自主回収を見てみますと、期限表示、アレルギー表示、規格基準違反などが2/3を占めています。大部分は健康被害を起こす可能性が少なくみられますし、運用によっては廃棄しなくてもよいものもあると思います。行政側も廃棄物を増やす施策を考え直す時期と思いますが。さしあたって食品メーカーとしては、少なくとも安全性に問題のない製品での回収が必要にならないよう、従業員教育を徹底してつまらないミスは防止したい。
そして19日、朝日新聞のスクープのようですが北海道の食品加工卸会社による牛ミンチ偽装が報道されました。いまだにこのような会社が存在していたとはあきれかえるばかり。監督機関である農水省と北海道は責任のなすり合いをしているとの報道もあり、今後どのようになっていくのか注目です。いずれにしても食品業界全体でDNA検査結果までも行き交うことにならないことを願うばかりです。

2007年5月29日<No.029>
相変わらずのアレルギー表示
一口サイズの「こんにゃくゼリー」を食べた7才の男児2人が窒息死したことが判明し、国民生活センターが注意を呼びかけています、何とも痛ましい。同様の事故は10年余り前に多発し、業界も注意表記などそれなりの対応はしていたようですが、それ以降も起きていました。先進国ではこんにゃく入りゼリーは危険な食品と認識され、特に欧州ではゼリー菓子へのこんにゃくの使用を禁止しているとのことで、厚労省など行政当局の対応が批判されています。
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2mを越すほどのオオムラサキツツジ。今年も見事に
咲きましたがそろそろ終わりです、梅雨も間近。 |
アレルギー表示が義務づけられてから5年が経ちますが、この件についても相変わらず。先日も大分で、小学生がピーナッツ表示のない「せんべい」を食べて呼吸困難に陥ったという事故がありました。また、オリザ油化の業務用原料を使用した「栄養補助食品」の自主回収が大きな広がりを見せています。原料に使用した乳由来のカゼインナトリウムを納入先に伝えていなかったことが原因とのこと、仕入側の責任も大きいのですが。香料など法令違反の食品添加物使用やバターの異物混入事故など、これまでの事例を見るまでもなく業務用原料は広範囲に影響が及ぶことを自覚すべきでしょう。
アレルギー疾患の子供を持った親や学校現場の人たちは大きな問題なのですが、それ以外ではさほど注目されてはいないようです。3年近く前に実施された生協のネット注文システム利用の組合員対象アンケート調査でも、食品購入時に確認する表示として期限、価格が100%近くなのに対してアレルギーは8%程度の結果。当方の従業員教育でも「最近はアレルギー物質混入による自主回収がみられます。清掃を徹底して防止しましょう、使用していない製品を先に生産する計画を立てましょう」と話してもなかなか興味を持ってもらえない題材です。食品衛生関連の先生方の書かれているコラムなどを見ても、アレルギー表示を取り上げているものはほとんどないようです。
アレルギー表示漏れなどは食衛法19条違反のはずですが、これによる回収命令は見受けることが少ないですし、自主回収がほとんどのように思います。一時、厚労省HPで違反事例が公表されていましたが平成18年以降は記載がありません、何か箱物行政のように思いますが。ちなみに当HPの平成18年の公表自主回収のうち、アレルギー表示関連は13%と相変わらず多いようです。
そして最近は中小業者さん、他業界から食品業界への新規参入組による自主回収も多くなってきているようです。これらの業者さんは食品法令に精通しているようには思えません。リスクコミュニケーションの重要性が云われています、既存の食品業界団体だけでなく、範囲を広げ、食品業者に直結する地方自治体のリスコミが必要ではと考えますが。食品安全基本法の食品関連業者の責務として、食品の安全性の確保については一義的な責任を有する・・・とありますが、これで「何かあれば食品関連業者の責任」では浮かばれません。
このようなアレルギー問題ですが、食品メーカーにとっては訴訟に直結しやすい重大な問題です。食品添加物のようにキャリーオーバーというような考え方は通用しません。原材料から工程での汚染、そして表示まで注意が必要な代物です、特に原材料変更、仕様変更時には。自分の身は自分で守るという考えを持つべきと思います。やられているとは思いますが推奨20品目についても積極的に表示すべきものでしょう。
そして、現在表示が義務づけられている特定5物質に「えび、かに」2品目の追加が検討されています。検査法はこれからということなので実施まではまだ時間がかかるでしょうが、今後の行政の動きに注目が必要です。

2007年5月10日<No.028>
信号機の青色灯にミツバチ?
ゴールデンウィークの5月2日、京都市の交差点信号機の青色部分にミツバチの大群が集結して見えにくくなり(5日には大阪市でも)、警察が付近の歩道などを通行止めにしているテレビ映像が流れました。京都市衛生公害研究所の話では「ミツバチは分封(ぶんぽう)と呼ばれる巣分かれの行動で、都会にもミツバチは営巣するが、なぜ信号機に止まったかはわからない」とのこと。食品工場に設置されている捕虫器には、虫が好む365ナノメートル付近を主波長とするランプ(青色)が使用されています。“ハハンこれでしょう”、こればかりではないでしょうが小生はその一因だと思いますが。
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当家のセイヨウシャクナゲの花が一気に咲き始め
ました。幹周り10cm弱、3mの高さになっています。 |
先日、ある食肉関連の工場を見せてもらいましたが、ありました捕虫器が。ところが、小さな虫がいっぱい付着していたので、「この捕虫器の粘着紙はいつ交換したのですか」と案内して頂いた人に質問したところ、「いつだったかな、昨年の夏かな、隣が畑で入ってくるんです」との返答。これではせっかくの捕虫器が泣いてしまいます。小生も防虫には素人ですが、経験上「境の網戸は細かいものに交換して下さい、捕虫器は作業に邪魔にならない低いところに移した方がいいですよ」と話はしました。内部発生虫が多いようで何のための捕虫器か、機種もバラバラで、次々と販売業者の奨めに乗っかって購入しているのだろうなと感じた次第。
捕虫器だけでは食品工場の防虫は達成出来ません、ハード、ソフト両面を含めた様々な方法を組み合わせる必要があります。食品に混入する虫は飛翔性、歩行性の違いと内部発生、外部からの侵入とがあり、工場内にはどんな虫がいるのかを知ることから始まります。まともな専門業者はまず、この昆虫相調査から入る、そのために捕虫器などのトラップを仕掛けます。そして、その調査の結果から対策を講じます。
外部侵入性の虫が多ければ、施設のどこかに侵入を許すところがあるのでハード的な改善が必要になります。施設を密閉型にして、作業場を陽圧にするというのは大手の工場以外はできないでしょう。一般的には、施設の隙間を塞ぐ、人などの出入口には防虫カーテンを張る、窓には紫外線をカットするフィルムを貼って網戸を付ける、ある程度資金に余裕があれば出入口に前室を作って緩衝区域を設ける程度。これらは虫が光に集まってくるのを防ぐ対策で、それでも作業場に侵入した虫は捕虫器で、ということになると思います。
作業場に伺うと、邪魔になるとかで防虫カーテンを脇に束ねておいたり、わざわざ前室構造にしているのに内外部のドアが開放されているのを見かけますが、従業員はそれがなんのためにあるのか理解していないのでしょう。窓などに網戸が取付けられていても、家庭用(16メッシュ)のものでは小さな虫は通過してしまうことになります。また、虫はエサを求めて臭いに集まります、発酵食品に虫の混入が多いのはこのためです。作業場内の3S、特に清掃の重要性がわかると思います。
生産現場の人たちが気が付かないのはチョウバエなどの内部発生虫です。大きさも1mmチョットで、よく目を凝らしてみないと気が付きません、これには捕虫器が大きな効果を発揮します。内部発生虫に対しては捕虫器ではなくてモニタリング機器という考え方をすべき。。粘着紙にいっぱいに付着していれば、どこかに発生しているところがあります。発生源を見つけて徹底した清掃を実施すること、そして専門業者の薬剤散布も必要になるでしょう。ポジティブリストの問題もありますが必要悪です、責任者が立ち会って細心の注意を払っての実施をすべき。虫が大量に発生してからでは薬剤撒布の効果も薄くなります。発生時期には特にモニタリングに注意が必要となります。
小さな内部発生虫は目に付きませんし、高くは飛びません。ある工場で捕虫器が天井近くの手の届かない高い場所に設置されていたので、「なぜ高い場所に取付けたのですか、粘着紙の交換はどうするのですか」という質問に、「作業の邪魔になるから、粘着紙は専門業者が定期的に交換します」とのこと。これでは現場の人は虫に無関心になりますし、専門業者も実態把握ができないでしょう。あくまでも防虫対策の主体は作業現場です。作業の邪魔にならず、ランプの光が外に漏れない、作業台から離れた場所を選定し、目の高さくらいに設置します。そして、月に一度(付着状況を見て)は自分達で粘着紙を交換しましょう、日付も記入しておけば発生状況もわかります。ランプにも寿命があります、年に一度は交換すべきものです。また、前述のように捕虫器の機種がバラバラではランプ、粘着紙の調達管理も大変でしょう、統一すべきと思いますが。

2007年4月12日<No.027>
保管設備の3Sはどうでしょうか?
食品工場のみなさん、外部者の見学の時に進んで原料倉庫・冷蔵庫などの保管施設内部を案内できますか? なるべくなら見せたくはないと思ってはいませんか? 今回の不二家さんの問題でも、元社長の視察のときには工場幹部は原料倉庫などは見せなかったということも指摘されています。作業場の整理・整頓・清掃がよくできているような工場であっても、付帯設備である原料倉庫・冷蔵庫などの3Sは行き届いていないことが多いものです。
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| 賑やかなユキヤナギが満開となりました。 |
小生もそんな偉そうなことは云えません。自宅の物置は乱雑で、何か必要になったときはいちいち物を動かして探しますが、それでも見つからずにDIYセンターなどに行って目的のものをまた購入となります。日頃、3Sが疎かだったことを反省しますが、喉もと過ぎれば熱さを忘れるの繰り返しです。
食品工場では多品種少量生産の流れや欠品は許されないという小売り業界からのプレッシャーからでしょう、多めの在庫を保管しがちです。それに加えて商品の寿命が短くなり、改廃が頻繁で不良在庫も増え続ける(マスメディアの批判を恐れての自主回収もあるでしょう)。不良在庫は会社の財産で、欠損処理しないとすぐの処分はできないでしょう。その結果、本来このような保管施設はないに越したことはないのですが益々拡大を続けることになります。
一方で、このような付帯設備は作業場などと違って各職場が共通で使用しているのが一般的で、管理責任が曖昧になりやすい。そして企業利益に直接結びつかない施設であり、人件費の低減などの状況から3Sが行き届かなくなるという構図が生まれるのでしょう。結果として、このことが直接の原因ではなくとも、製品不良や異物混入事故の多発に結びつく一因になっているような気がします。
工場に伺って冷蔵庫・冷凍庫の内部を見せて頂くと、冷却装置がどこにあるのかわからないくらいに原料や製品が山と積み重ねられている光景をよく見かけます。また、床にはスノコなどは貼ってありますが、その下にはゴミが詰まっていたりします。ひどいときには冷却装置が破損して水が落下し、床の受けバットが溢れているのを見ることもありますし、庫外に出るときに脱出用レバーが破損していてヒヤッとしたこともあります。冷凍庫といっても半永久的な保管設備ではないのですが、収めておけば大丈夫というような安心感があるのでしょうか。このような状態では“整理整頓、清掃をしましょう”と云っても社長命令でもない限り、誰も好きこのんで寒い環境での作業はしないでしょう。
これほどではなかったのでしょうが、今回の不二家さんでも在庫管理の問題が期限切れ原料使用に発展したようです。トップダウンでないと進まないでしょうが、一度徹底的な保管施設の3S実施が必要ではないでしょうか。在庫が増えるといろいろな問題が発生します。在庫量は適正か、不良品は?、期限切れ品は?を確認し、問題が発見された場合は商品計画、生産計画、資材管理なども含めて在庫を少なくする管理体制の見直しにつなげていくべきでしょう。
そして家庭とは違って、工場には複数の冷蔵・冷凍施設を保有していると思います。在庫の少なくなる時期を見計らって年に2〜3回、計画的に品物を移動しての定期的な整理整頓、徹底清掃は実施したいものです。保管施設の不具合が見つかれば補修し、先入れ先出しがすぐに簡単にできるように工夫・改善して、いつも3Sの崩れない体制を構築すべきと思います。
不二家さんの営業再開にあたっては山崎製パンが導入している、聞き慣れないAIBシステム採用が多大な効果を発揮したという人もいます。(財)食品産業センター主催のAIBシステムセミナーは応募多数につき追加という盛況のようです。このシステムそのものは新しいものではありません、HACCPの土台となる一般的衛生管理を多少進めたものです。形式的になりがちなHACCPシステムの反省?でしょうか、実質的な衛生管理が見直しされるのは喜ばしいことです。この一般的衛生管理の基礎になるのが5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)で、AIBシステムでは特に清掃活動を重視し、大きな1項目として取り上げています。5Sの持つ意味を正しく理解して業務に当たりたいものです。

2007年3月22日<No.026>
また!宮城産カキでのノロウイルス食中毒
マスメディアの加熱報道も収まり、不二家さんもようやく生産再開にこぎつけたようで従業員をはじめ取り巻く人々、食品業界にとっては喜ばしいことです。それにしても何ともその代償は大きかったこと。そんな折りの今月8日、当地の新聞に「宮城産カキで食中毒」との記事が載りました。「東京都内で宮城産生食用カキによるノロウイルス食中毒が発生し、石巻市の仲買業者が営業停止処分。県漁連では今シーズンは全て加熱調理用で出荷することを決めた」という内容です。
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サンシュユ、3週間ほど前に色づきはじめたのですが
寒さでなかなか。やっと開き初めました。
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昨年末はかつてないノロウイルス感染症流行でカキ業界は大打撃をうけ、風評被害だとして打ち消しにやっきとなったようですがやはり発生してしまいました。安全性を声高に宣言したが実害が出てしまった、当地に住んでいる人間としては残念です。信頼を回復するには大変な労力が必要です。県漁連では「週1回のノロウイルス自主検査で陰性であり、検査は適正に行われていただけに、想定外の事態」と困惑しているそうで、これに対して関係者からは検査のあり方を疑問視する声も上がっているとのこと。
そうなのです、カキのノロウイルス検査だけでは食中毒が発生しない保証にはなりません。カキの危害には貝毒もありますが、これについてはモニタリング検査が実施されて健康被害防止の実績があります。しかしノロウルスの場合にはこれと同じ考えは適用できないと考えるべきでしょう。同じカキの養殖棚でも違いが出たり、厚労省通知の検査方法に従っても、検査個数によりノロウルス検出率に大きな違いがあるという報告もあります。そして、正確な検査方法が確立されても、週1回の検査では陰性が判明してから次の検査まで、加えて結果が判明するまでの10日間の安全は保証できない、これは5年前の同様の事故の賠償請求訴訟で示されています。県漁連や宮城県が検査だけで十分だと考えているのであればカキ関連業者は不幸としか云いようがありません。
最近、原子力委員会で食品への放射線照射利用が検討されているようで、この技術が採用できればと思いますがなかなか。消費者団体が反対していますし、志賀原発の臨界事故隠ぺいなどが発覚している現状では現実的ではないようです。そのほかにはと云いますと、情報は少ないようですが1年前に当雑記で紹介したオゾン含有マイクロバブル処理があり、その装置を導入して効果を発揮しているというはなしもあります。零細業者の多いカキ業界での単独での導入には無理もあるでしょう。効果の確認、共同での導入など県や県漁連などの仕事のように思いますが。それが地域振興というものでしょう。
それができないというのであれば、万全とは云えないでしょうが三重方式を見習っては。以前にも述べましたが、三重県では長年の調査から健康被害発生と関連性のある「周辺地域での感染性胃腸炎の流行」、「海域水温が10℃以下」、「カキからのノロウイルス検出」、「50mm以上の降雨」、「カキによる健康被害の発生」、「プランクトンからのノロウイルス検出」などの情報をHPなどで公開し、その状況によって注意の喚起や生産業者の対応策を公開しています(情報公開先進地といわれる宮城では、県、県漁連のHPには詳細な自主検査結果の公表もない?)。
このような内容の追試には時間がかかるでしょう、とりあえずはメンツを捨てて、三重県に教えを請うことも必要ではと思いますが。ノロウイルスについてはまだまだ不明の部分が多いのですが、カキ業界としては座して待つような状況ではないでしょう。宮城の生カキは地域の宝です、今後宮城産のカキが全て加熱加工用とならないように願うばかりです。

2007年2月23日<No.025>
マスメディアの餌食にならないために
「あるある大事典問題」で関西テレビの社長が自民党小委員会によばれ、捏造した制作会社に損害賠償など法的措置を検討していると話したという。この問題では他のマスコミに社長など役員の報酬カットをファクスで流しただけとのこと、何とも身内には甘い。ウィキペディアにはマスメディアの問題を次のように挙げている。
・・・マスメディアは各企業や団体が社会的不祥事を起こしたらその企業・団体を痛烈批判するが、近年はマスメディアの不祥事も問題になっているので「人のことを言えるのであろうか?」と疑念を抱く人もいる・・・。正にその通り、批判はするがされにくい優越的地位。いろいろなところで、強いものが弱いものを徹底的にたたく世の中です。
また、「テレビなどの大衆メディアにおいては、エンターテイメント性への偏重、マスメディア側の正確な知識の欠如、・・・といった種々の問題点がある」とも。これは映像メディアに限りません。不二家不祥事についてののほとんどの新聞報道では「大腸菌陽性でも出荷」、というような表現でした。知識のある人であれば、すぐに大腸菌群の間違いだとわかりますが、一般の人はO−157?そんな危険なものをわかっていて食べさせられていたの、と思うでしょう。マスメディアが大腸菌と大腸菌群の違いをわかっていてそのように報道していたのなら、なおさら悪質です。
行政にも責任があります。国の微生物の規格基準には相変わらず大腸菌群が使われていますが安全性の指標ではありません(それでも規格があり行政検査で陽性となると回収命令?)、一般生菌数と同様の測定意義しかないはずです。最近、リスクコミュニケーションの大切さが云われますが何故取り上げないのでしょう。まあ、食の安全に限ったことではないのですが、決まりなので仕方がありません。
ところで、食品メーカーの不祥事発覚にあたって、メディアからさほど問題ではないということまでほじくられて延々と批判を受け続ける会社と、記事には取り上げられたがあっさりと沈静化した会社とがあります。前者はおわかりの通り不二家で、後者はニチレイグループ、ニチレイフレッシュの子会社「まるいち加工」です。ニチレイによるグループ企業内監査(不二家不祥事を受けて?)の結果、昨年11月半ばに「まるいち加工」で製造された紅鮭製品から食品衛生法の基準を超過した大腸菌群が検出されながら、工場長判断で出荷していたことが判明したというもの。社内マニュアルが守られなかったということは不二家と通ずるものがあります。業務用ということもあったのでしょうがニチレイフレッシュのHPでのお詫びの告知だけでした。
どこが違うのでしょう。発覚した問題に対して雪印事故の教訓を生かした、生かすことができなかったということだと思います。当方の想像になりますが、不二家では社内調査で問題を把握した時点で目先の利益(クリスマス商戦)にとらわれて対策を先送りし、内部告発に至った。スクープがあった時点でマスメディアを納得させる情報を出さずに小出しにした。恐らく出せなかったのでしょう、品質管理に精通した技術屋がリストラ、冷遇されたとの報道もありますから(雪印と通ずる?)。当事者には隠ぺいしている気はなくともメディアには格好の題材になってしまいます(自分たちのことは棚に上げて、報道の影響も顧みず正義の味方気取りで)。
ニチレイフレッシュのお詫びの告知を見ますと、グループ企業内監査で判明してから6日後にHPで公表されており、チェック機能がきちんと働いているとみられるでしょう。その内容は、当該製品、経緯、健康への影響、今後の対策、問合わせ先等が簡便にわかりやすく表現されていました。普段から衛生管理、危機管理がなされていると判断されてメディアの付け入るすきもないように思います。どんなに立派な施設・設備を持っていても、最新の品質・安全システムを導入しても問題は発生します。問題が発生した場合、目先の利益にとらわれずに意欲的に改善に取り組んでいることが明らかであれば強い批判も受けないでしょう。
不二家の不祥事以降、期限がらみ中心にした自主回収がぞろぞろと出てきています。また、不二家では小売などの在庫を全量引き取り廃棄することを決めたようです、何ともったいない。またまた、ゴミの山が増えることになります、何が環境ISOでしょうか。

2007年2月13日<No.024>
再び不二家問題
期限切れ原料使用発覚から一ヶ月たち、ようやく不二家問題は沈静化に向けて進み始めたようです。今回の件で法令違反とされたのは、シュークリームの消費期限を延ばして印字していたことだけ。それはそうでしょう、衛生管理のずさんさはあったにしてもどちらかといえば法令自体があいまいなのですから。ただ、今後はそうはいかないでしょう、厚労省から1月31日に通知「広域流通食品の製造に係わる衛生管理の徹底について」が出ていますし、その中では「衛生管理の指針である衛生規範に従うこと」が明記されています。
不二家問題の本質は食の安全ではなく、ずさんな製品管理、品質管理体制を許した経営にあると云えます。ことの真相はまだ不明の部分はありますが、食品メーカーとしてどうすべきだったのかを推測を交えて述べてみることにします。背景にはいろいろあるでしょうが一番目のキーワードは不二家社内の“ きまり ”でしょう。ヒトが集まれば当然あるべき方向への“ きまり ”が必要になります。“ きまり(基準) ”は、それを作るという場面と守るという場面とがあります。
衛生・品質管理に関する基準は、過去に蓄積された安全、品質に関するデータや種々の法令を基にして作られますが、作業現場で確実に守られるものということが前提になります。不二家問題では基本となる食品衛生マニュアルと、その内容と異なる運用マニュアルが存在したとされています。恐らく、当初は衛生・品質管理部門で基本マニュアルが作成されたのでしょう。しかし現場サイドではそのマニュアルに従っていたのでは生産に無理が生じるために勝手な運用マニュアルを作ったのでは(不二家ではリストラで衛生・品質管理を熟知した技術屋がいなくなったとの報道もありますが、これも大きな原因?)。作業現場で守れないものはマニュアルではありません。作る側にとっては、時間はかかっても実状を把握するための現場とのキャッチボールは不可欠です。
基準を守るということでは、作ったマニュアルの意味を現場従業員に理解してもらい、あるべき方向に導く教育が重要です。外部改革委員会が行った埼玉工場での聞き取りでは、これまで一度も研修を受けたことがないなど社員やパート従業員に対する研修がほとんどなかったことが指摘されています。職場の活性化を図る要素に3C(コミュニケーション、コラボレーション、コーチング)といわれるものがありますが、これらがうまくなされない土壌が作られていたのではと思われます、人それぞれでは管理された状態にはありません。また、マニュアルが生きたものになっているかのチェックもなされていなかったのでしょう。PDCAの管理サイクルがうまく回っていなかったと考えられます。
次ぎに個別の問題になりますが、衛生検査の簡略化、クリーンルームなど検査設備、パートさんが検査していたなど衛生検査の不備が指摘されています。これらはあくまで自主検査であり、検査要員の指導教育と検査に熟知した技術者のチェックがあれば問題ないはずです。ただ、生鮮果実部を一緒にして測定したり、無限大、多いというような記録をしていたりということをみると、おおよそ微生物を扱う基本の考えができていなかったと想像されます(技術屋のリストラも影響?)。検査で製品の安全を担保できないことは明白ですが、工程の改善には有効な役割を発揮します。
そして、今回の発端となった期限切れ原料の使用、食品衛生法違反となった消費期限の延長についてですが、洋菓子のような日配品は見込み生産では原料などの在庫管理は難しい。不二家では販売の多くがフランチャイズ店のようで、どちらかといえば身内という意識で問題が顕在化しにくい、難しい問題からは逃げるという安直な方向を向いていたのでは。見込み生産を行うのであれば精度の高いシステムを作る、それができなければ受注生産にすべきでした。いずれにしても科学的なデータ裏付けなしの期限切れ原料の使用、消費期限の延長は厳に慎むべきものと思います。
これらの結果としてでしょうが、直近1年間の異物混入苦情が1,700件(それでも前年より24%減少)、公表も回収もなしとの報道。当方HPの自主回収情報を見てみました、ありました「'06.11チョコレートへのプラスチック片混入」1件が。かばうわけではありませんが、少なくとも危険異物は公表していたのでは。毛髪、虫の苦情がほとんどでしょうが(最近はほとんど公表されません)非常に多いように思います。ハインリッヒの法則でもありませんが、陰に隠れたものも相当あるのでしょう。このような苦情は作業現場にフィードバックされて改善を図るべきものですが、研修も行われない実状では多額の費用は要しますが公表などの荒療治が必要だったかもしれません。
不二家問題発覚以降、食品の自主回収は期限がらみを中心として多発しています。食品業界一般にこのような問題を抱えている表れとみられます、これを機会にもう一度あるべき姿を見直したい。優越的地位にある量販店など小売業界は、出口検査結果等々を頻繁に要求することになるのでしょう。それでなくとも食品メーカーは様々な保証という名の書類の提出を求められてきたのですが。

2007年1月31日<No.023>
平成18年のできごと
今回は食の安全・安心に関わる動きを、主な行政の動きとそのほかのできごとに分けて述べてみたい。
主な行政の動きとして厚労省関連では、平成15年の食品衛生法改正で懸案となっていた農薬等のポジティブリスト導入が5月29日に実施されましたが、国内ではドリフトなど当初懸念されていたような大きな混乱はみられなかったようです。そんな中で想定外の問題も浮上しました。一つは宍道湖で採れたシジミから基準を超えた除草剤(チオベンカルブ)が検出されたというもの。水田などで使用されて湖に流れ込んだとみられ、厳しい一律基準が適用されるシジミなど魚介類では問題となる。もう一つは北海道で収穫され、基準超の殺虫剤ヘプタクロルが検出され大量廃棄されたカボチャ。約30年前に使用禁止になっているが土壌中に残留して吸収したとされている。安全性が問題になるような濃度ではなく、今後どのような運用がされるのか注目されます。
一方で、輸入食品については基準違反件数、検査命令発出数が大幅に増えました。ポジティブリスト導入後の6月から11月でみると、基準違反数では残留農薬264件、動物用医薬品119件で、それぞれ前年同期の9.3倍、4.4倍になっています(厚労省資料)。同様の食品で違反が続けて2回発生すると、全量検査が義務づけられる命令検査が発出されますが、6月から11月では18件で前年同期の3.6倍になりました。
自主回収でも農薬基準オーバーというのがみられるようになってきましたし、厚労省では輸入食品の残留農薬検査を増やすことにしています。公表など対応はバラバラですが、各地方自治体も検査体制を充実させることになるとみられます。
また、これまではなかったことと思いますが、9月に茨城と滋賀の食肉加工場で(本年1月にも群馬で)食品衛生管理者不在で営業していたとして行政処分がありました。表には出てきませんがこのような事例は結構あるのでは?決まりは決まりです、違反は起こさないようにしたい。
1月20日、米産牛肉から特定危険部位のせき柱が見つかり輸入再停止になりました。その後厚労・農水合同チームが米国加工施設の査察を実施し、安全性が確認されたとして7月末に輸入再開に踏み切りました。牛肉関連業界はほっとしたことでしょうが安心はできません。11月に来日した米国の弁護士は「違反をした食肉工場は加工ラインが早いことで有名、効率優先が招いた結果」として、再び事故が起きる可能性を指摘したとのこと。
農水省関連では、加工食品の表示をわかりやすくという観点で8月に「加工食品品質表示基準改正」の告示、義務づけではありませんが6月に「豆腐・納豆原料原産地表示ガイドライン」、また、2年前に告示された「加工食品(20群)原料原産地表示改正」が実施となりました。
そして今年も「根菜類」、「しいたけ」、「18年産米穀」などの特別調査、7月には米産牛肉輸入解禁・北朝鮮対策としての「農水産物表示緊急特別調査」などが実施され、これら以外でも水産物などの不適正表示が公表されています。もはや一時的な調査・公表ではなく今後も続いていくのでしょう、遡及立ち入り調査もあります、ご注意の程。
公取委の景表法関連では大きな変化(優良誤認表示)がみられます。例年ですと排除命令の発出は2〜3件程度ですが、昨年は8件(22社)になっています。内容は様々ですが、産地、名称、天然などの表示関係がほとんどで、実態調査も結構行われているようです。
国によって対象食品は異なりますが、外国では殺菌のための放射線利用が進んでいます。現在国内ではジャガイモの発芽防止のみに許可されていますが、原子力安全委員会で、その利用の拡大が検討され始めました。放射能の被爆国、行政不信ということもあるのでしょう、消費者団体は反対しているようです。放射能と放射線は異なります、食品に使用する場合は基準が決められていますし、検証もできるようですのでその利用は有効でしょう。食の安全と環境保持という相反する課題を同時に解決出来る技術で、特に食料自給率が低い我が国ではと思いますが。利用を進めている元締めが原子力安全委員会というのが問題なのかもしれません。
主なできごとで振り返ってみますと、食中毒関連では何と云っても昨年末のノロウイルス騒ぎでしょう。昨年末に、厚労省から11月から12月中旬にかけての速報値が出ていますが、過去5年間で一番多かった前年件数の3.9倍(213件)、平成16年患者数の3.3倍(9,650人)と猛威を振るったことがわかります。もはやこのウイルスは環境にしっかりと根付いたのでしょう、いつ事故が発生しても不思議ではない状況にあります。まだまだ不明の部分が多いのですが、ヒトの腸内でしか増殖しないことは判っています。感染しても不顕性の場合もあり現状では万全とはいかないのですが、従業員の体調管理と手洗いを徹底する以外対策はなさそうです。また、ノロウイルスは5類感染症に指定され、各地方自治体での定点観測結果が週報として公表されていて、食中毒に先だっての発生傾向がわかります。このような情報を活用して注意喚起することも有効に思います。
昨年の夏場には、サルモネラ、O−157による食中毒で女児が亡くなっています、何ともむごいことです。秋口には米国広域でO−157感染(死亡も)が発生し、ホウレンソウ・レタスが回収されました。最近食中毒事例の多いカンピロバクターも含めて、共通しているのは少量の菌の摂取で感染が成立するということで、低温管理は防止対策にはなり得ませんのでご注意を。
昨年は暖房器具、電器製品、ガス製品、シュレッダー等々、いわゆる消費生活用品といわれるもので重大事故が多発しました。従来は危険性の高い特定製品に安全基準を設けた規制措置をとってきましたが、生活用品で事故が発生した場合はメーカー、輸入業者に経産省への報告の義務づけ、公表、罰則を盛り込んだ「改正消費生活用製品安全法」が昨年12月に公布、今春施行の運びとなりました。公表された食品の自主回収を見てみますと、重大事故に結びつく恐れのあるものはさほど多くありませんが、多額の費用を掛けて回収、お詫び広告の掲載をしています。前回書きました不二家の例をみるまでもなく、何か事が起こった場合はマスメディアなどにほじくり返され、たたかれて信用を失うということを恐れるためでしょう。東京都には自主回収報告制度があり、報告された内容により取捨選択されて公表されていますが、本来は国がやるべきことと思います、食品業界は特に中小、零細企業が多いのですから。
昨年公表された食品の自主回収件数は前年とほとんど変わりません。その中ではやはり表示関連が多く、相変わらず期限、アレルギー表示関連が多いようです。そして残留農薬基準オーバーというのが出てきていますし、食品衛生法の規格基準違反(本来は回収命令?)も多くなっています。
4月半ばにインターネット販売「冷凍いくら醤油漬け」の賞味期限表示ラベルを改ざんしたとして、アセットアルカディア(株)とヤマト運輸(株)が農水省から厳重注意を受けました。また、10月末から11月初めにかけての日本テレビ・リアルタイム「食品偽装(ある食品卸会社)」では、ヤラセとも受け取れる生々しい賞味期限改ざん現場のビデオが写しだされました。そして今回の不二家の不祥事、それに続いて多発している期限表示がらみの自主回収、消費者にはやっぱりかと受け取られても仕方がないでしょう。消費者の食品購入時の確認項目の調査では、一番目に来るのは期限表示(’04の生協の調査では95%)なのです。
最後に、不二家の件でも売上げ・利益至上主義が云われています。企業にとって利益確保は第1命題でしょうが、それと同様にリスクを取り除く、そのバランスも重要に思いますが如何でしょう。平成12年に発生した雪印食中毒では、昨年9月末にこの事故に関連した民事訴訟がやっと和解に至り、発生してから6年でやっと結末を迎えたようです。そして、事故以来延々と続けられてきた黄色ブドウ球菌毒素の検査も廃止するとのこと、他山の石としたいものです。

2007年1月18日<No.022>
不二屋さん、あなたもですか
1月には何か大きな問題が発生します、一昨年はノロウイルスによる死亡事故、昨年は前年12月に輸入解禁された米国産牛肉への危険部位混入による再輸入禁止など。今年はないだろうと思っていた矢先の11日、「不二家期限切れ牛乳使用事実把握も隠ぺい」という記事に始まり、マスメディアからうんざりするほどの情報が流れてきます、健康被害も起きていないにもかかわらず。今回はそれらの情報からという条件ですが、この問題について述べてみます。
不二屋も調査結果を小出しにし、内容も2転、3転するなど対応も悪いのでしょうが、マスメディアの取り上げ方にも行き過ぎが感じられるのは当方だけでしょうか。社長をエレベーターまで追いかけ回して、言質を取ろうとするテレビの画像は雪印とそっくりです。何とかして、不二家の隠ぺい体質、倫理観のなさ、製品の安全より利益優先、工場の不衛生さなどを際立せようとしているのでしょう。正直者が得をする社会を作るという御旗の元であれば、延々と続いている政治家、官僚の不祥事問題にももう少し切り込んで欲しいものです。
このような問題が発覚すると、マスメディアは重箱の隅までつつくように面白半分で書き立てます。「食品衛生法の規定の10倍の細菌が検出された洋菓子を製造・販売していた、ネズミの大量発生が起きていた」など。食品衛生法には洋菓子の微生物規格はありません、GMPばやりの時に作成された「洋生菓子の衛生規範」があって、行政の判断基準に使われているようですが目標値です。ちなみに、洋生菓子の細菌数は1グラム中10万個、大腸菌群は陰性(生鮮果実部を除く)となっています(10倍の細菌数というのは微生物を扱う人からいうと少し多いかな程度でしょう)。「埼玉工場では04年に1ヶ月で50匹のネズミを捕獲、06年夏以降も2匹捕獲」、当方がコメントすると、モニタリングはされていて明らかに改善がみられるとなります。
さらに「食中毒発生を公表していなかった」という報道も。12年前に不二家の製品で食中毒が発生していたのに公表していなかった、「不二家は保健所に報告して工場を営業停止、消毒など衛生面の対策を講じて商品の回収も実施、保健所は被害者が二十人未満だったことから公表はしなかった」というものです。最近でこそメーカーはお詫び広告を出すようになりましたが、12年前ではこのような措置で問題なかったと思いますが。
マスメディアの論調をみると、不二屋だけが悪者にされているようですが、果たしてそうなのでしょうか、当方には小売業界にも責任の一端があるように思えるのですが。ずいぶんと前から、小売業界は製造業者が欠品を起こすとペナルティーを課すというのが一般的になっています。これでは賞味期限の長い食品ならいざしらず、日配品的な食品では在庫管理を徹底しても期限をオーバーした原料、製品は発生してしまう、一方で廃棄物など環境問題では責められる。事実、埼玉工場では環境ISOの認証を受けていて、工場から廃棄物が増えると是正報告が求められるのでとのこと、同情を禁じ得ません。木を見て森を見ずだったのでしょう。ISO規格にも問題が出ているようで、今度は組織の社会的責任(SR)に関する規格が生まれるようです。
いずれにしても不二屋の対応はお粗末でした。昨年11月にこの問題を把握していたにも関わらず、クリスマス商戦ということなのでしょうが先送りしたこと、問題発覚以後、最近まで期限切れ原料を使っていたことなど。当初、期限切れ原料の使用判断は退職したパート従業員としてたのが実は工場長なども知っていた、そして「ない」といっていたはずの食品衛生マニュアルと「原料消費・賞味期限チェック表」など製造工程にかかわる14種類の記録簿が埼玉県の2度目の調査で出てきたという。社内規定が守られない管理体制を覆い隠したかったのでしょうか。「発覚したら雪印の二の舞になる」という危機感は本当だったのかと疑いたくなります。雪印は6年掛かって、昨秋やっと事件終末を迎えたのですよ。
3年前に厚労省から「食品事業者が実施すべき管理運営基準に関するガイドライン」が出ていて、ほとんどの自治体で条例が改正されています。このガイドラインは食品衛生に関するマニュアルや手順書、点検記録の作成を義務づけています、中小企業といえどもです、ご注意のほど。
1月17日毎日新聞の余録「消費者の心に宿るお菓子の思い出」からの抜粋、「失態の公表を小出しにし、現場のパートに責任を押しつけるかのような経営陣の対応はどう見てもペコちゃんの笑顔にそぐわない。失態を隠した不二屋経営陣は、ブランドを他社の攻撃から守るべき自分らの持ち物だと考えたのだろう。もしブランドとは消費者の心に宿る不二家のお菓子の思い出や、そこではぐくまれた信頼のことだと分かっていれば、こうまで無残なことにはならなかったはずだ」、同感です・・・。

2006年12月20日<No.021>
猛威を振るうノロウイルス被害!
2〜3日前に食肉卸売業者さんから電話をもらいました。「ノロウイルスのニュースで大騒ぎになっているが、私のようなところではどんな対策をしたらいいんでしょう」とのこと。
「まず、従業員の体調を聞いて、嘔吐、下痢等の症状のある人は作業から外す、従業員の手洗いを徹底させる、手洗いには使えないが器具類などは200ppm以上の濃度の次亜塩素酸ソーダで殺菌するなどでしょう」と返答しました。「わかりました」とのこと、これで理解できたのでしょうか。
ここのところノロウイルス報道一色で、さすがに安倍首相も感染防止強化を厚労大臣に指示したという。このウイルスについては培養系も確立しておらず、まだまだ不明の部分が多い、これで少しは基礎研究も進めばいいのですが。テレビでは専門家といわれる人が解説していますが、その内容はいいかげんなものや貧弱なものがほとんどのようで、その影響を心配してしまいます。
行政処分の関係で感染症と食中毒に分けているのでしょうが、予防・対策の面からみれば食水系感染症で一括りにすべきです。全国の食中毒では11月から発生件数が増えて12月には40件近くになっていますが(食の安全協会HP)、国立感染症情報センターの感染症週報では、実は10月から増加の兆候がみられていました。以前にも本雑記帳で述べていますがこのウイルスは環境にしっかりと根付いているのでしょう。そして人の集まる、閉鎖された環境でキバを剥くことになる。環境から排除するためには廃水処理場で断ち切らないと何ともならないと思いますが。
今回ノロウイルス騒ぎでは悲喜こもごもが報道されています(ほとんどが悲ですが)。悲の部分の一つは山口で発生した全国中学校駅伝大会での事故、そしてその感染の可能性が高いといわれるロシアでのフィギュアグランプリファイナルでの日本の選手など。競技会を目標にして長期間練習に励んだ末の結末、何とも残念でならないでしょう。
もう一つは、カキが悪者にされ生産業者は大きな打撃を受けているとの次々の報道。このウイルスが食中毒原因物質に指定された頃は生カキの摂食による事例が多く発生し、行政などのマニュアル類には感染防止対策として必ず加熱して食べるようにと記載があります。農水大臣が今年はカキ原因の食中毒は発生していないと言っても消費者は食べるのをためらうでしょう。このような事態を避けるにはカキ業者自身が商品の安全性をもっと訴えていくべきでした。産地偽装が発覚した時、当地のカキ業界はそれを打ち消そうとやっきとなり、延々と悪者探しにお金を掛けてきました。一方で、このような事態が想定されていたにもかかわらず業界も行政も見誤っていたことは否めないでしょう。そして農水省は業界を救うために税金での補助を考えているという。何かおかしいような気がしませんか。
喜の部分といっていいのでしょうか、検査薬や消毒薬の関連業界は大忙しのようです。ノロウイルスの検査はPCR法が主流でしょうが、装置が高価でだれもが導入できるようなものではないと思います。精度は多少落ちても簡易に、短時間で検出できるものの開発が望まれます。イムノクロマト法による検出が大阪府公衆衛生研究所から報告されています。現在は行政機関にしか配布されていないようですが、一刻も早く誰にでも使用できるようにすべき。また、塩素系の消毒薬は品切れとのこと。マニュアルなどにもノロウイルスの不活性化は加熱か、殺菌剤では塩素系しか効果はないと記載されているためです。しかし、本当に塩素系の殺菌剤しか効かないのでしょうか、培養系も確立していなのに。当方には基礎研究が遅れているとしか思えないのですが(研究者はこのような地道な問題にはなかなか興味を示さない?)。
今、ノロウイルスによる食中毒は飲食店、ホテル、仕出し店が中心ですが、食品工場とて安心できるような状態にはありません。O−157事故以来、大量調理施設衛生管理マニュアルなどで検食を保管するようになっていますが、ほとんどの調理施設では保管はしていないでしょう。また、保健所なども発生施設で手一杯で川上までの遡及調査はしていないのでしょう。
ノロウイルスは100個以下の摂取で感染が成立すると云われています。100個以下というと微生物学的にみるとほとんど無菌に近い状態で、注意していても感染してしまうという数です。また、感染して免疫ができても長続きはしない、回復しても便と共に長期間ウイルスを排出し続けるなどが感染拡大の原因です。食品業界に関わる人は、少なくとも体調の管理(といっても不顕性の人もいるといわれる)、手洗いの徹底をするしかありません。ここしばらくは騒ぎの収まる気配はありません、ご注意のほど。

2006年11月22日<No.020>
自主回収あれこれ
当HPには食品の自主回収情報でのアクセスが圧倒的に多いようで、その関心の
深さが覗えます。ここにきてポジティブリスト制度の影響でしょうか、農薬の基準オーバーというような回収理由に少し変化がみられるようになってきているようです。
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サザンカが咲き始めました。いよいよ冬の到来です。
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11月に入り、アレルギー物質の混入・表示漏れということで、山崎製パンで続けて菓子パンの自主回収が発生しました。数え切れないほどの店舗からの回収、廃棄ということになるのでしょう。
また、お詫び広告掲載でも数千万円以上の費用を掛かることは容易に想像できます。体力のある大手メーカーということであまり企業業績には影響ないのでしょうが大変な損害と思います。
中小ではこうはいきません。大手メーカーと違って、僅かなミスがその企業の命取りになりかねないのです。賞味期限表示ミスや異物混入など、クレームによる回収費用の負担に耐えられるでしょうか。だからこそ中小メーカーはこのような要因を作らないように、情報を収集して品質・安全対策に力を入れる必要があるのではないかと思いますが。従業員にクレームの発生要因や防止法などを教育し、労働意欲を向上させる施策を打って、少なくともヒトの単純なミスによる回収は排除したい。
ことはこのような費用の問題ばかりではありません。回収によって廃棄される食品は莫大なゴミの山になります。最近大企業を中心にCSR(社会的責任)が叫ばれていますが何がCSRでしょうか、食料自給率40%の日本でこのようなことが許されるのでしょうか。11月半ば過ぎに、大阪の食品メーカーから出荷規格外のパン製品の処分を依頼された産廃業者が青森、岩手県境に不法投棄した問題で、メーカーが撤去を申し入れたとの報道がありました。
アレルギー表示は平成14年4月から完全実施されています。翌年2月のイオンのアスパラベーコン巻きへの卵白アルブミン使用は紙面を賑わしましたが、それから3年半が過ぎても記載漏れなどによる自主回収は相変わらず続いています。11月初めに、地方自治体宛に厚労省通知「アレルギー物質を含む食品の検査方法について」が出ています。検出された場合は製造記録の確認、行政措置まで踏み込んだ内容です。これまでは自主回収で済んできましたがこれからはそうはいかないでしょう、ご注意のほど。
自主回収の理由をみると、トップは相変わらず期限表示ミスによるものです(’05年の当方集計では約19%)。アレルギー表示のように実害の可能性は少ないであろうと思われるのに、消費期限はまだしも賞味期限は何とかならないものでしょうか。農薬等ポジティブリストの実施にあたって、欧州では基準オーバーであっても実害が少ないとみられるものは運用上回収命令は出ないとのことでした。基準を作るのが難しいのでしょうが、期限表示も悪意のない軽度のミスによる回収はすべきでないと考えますがいかがでしょうか。
10月末から11月初めにかけた日本テレビNewsリアルタイム「食品偽装(ある食品卸売会社)」では、賞味期限改ざんの実態などが三夜連続で放送されました。「やらせ」であってくれればよいと思いましたが、これで消費者は益々食品業界への不信を増幅することになるのでしょう。小売業界は更に期限表示に敏感になり、返品そしてゴミの山を発生させることになるのでしょう。マスメディアの報道は慎重にあって欲しいものです。

2006年10月30日<No.019>
HACCP、TQC?
20数年ほど前まではTQC(全社的品質管理)運動の花盛りで、社員がその業務を理解して、品質の改善を自主的に進める体制作りを目指したものです。小生も以前勤務していた会社で経営コンサルタントの指導のもとに、この運動を進める立場にかかわったことがありました(ある程度の成果はあったのですが、一部門での発足だったために尻切れトンボになった記憶があります)。
このTQCとHACCPとはどのように違うのでしょうか。HACCPシステムは欧米生まれで性悪説が根底にあり、どちらかといえばトップダウン方式(ISOでは特に)、TQCは日本で発展した製造現場での自主的品質管理活動で、基本的にボトムアップという違いはあるでしょう。また、その目的がHACCPでは食の安全確保で、生物的、化学的、物理的危害のような危害発生防止であるのに対して、TQCでは品質や生産性の向上にあります。そして、HACCPでは認証という形で第3者による評価がありますが、TQCは会社内での評価にとどまることが多い(デミング賞というのはあったがハードルが高い)。
最近は食の安全・安心が注目され、衛生管理のしっかりした業者と取引するという傾向にあり、HACCP認証を取得したということは営業にとって有力な武器にはなります。しかし、ややもすれば認証を取得すれば終わりというような形式的システムになりがちで、基本的には守りの管理でしょう。導入の目的が認証取得ということであれば、得てしてその内容が画一的になるのは避けられません。しかし、危害の種類や衛生管理の方法は工場毎に異なるはずで、それぞれに特徴があっていいはずです。
工場に伺って、「この作業の殺菌条件は?、この冷蔵庫は何度で管理しています?、捕虫器の粘着紙にたくさんの虫が付着していますが見ていますか?」などと従業員のみなさんに質問すると、「わかりません、見ていません、管理者がすることになっていますので」という答えをよく聞きます。食品工場のみなさん、心当たりはありませんか。これでは忙しい業務の傍ら、何から何まで管理者が常時目を光らせていないといけないということになりますし、それは無理というものです。その作業内容・マニュアルを理解させ、こまごまとした事柄は一般従業員の自主性にまかせて、工程に異常があったときは必ず報告するという体制を作るべきでしょう。報告・連絡・相談が気軽にいつも行われる風通しのよい職場作りが必要ではないでしょうか。そのためには時間はかかるかもしれませんが、なぜそうしないといけないのかの教育は不可欠なものと思います、パートさんなどへの作業依存は止むを得ない時代だからこそ特に。
また、HACCPを導入して生産性が落ちたというはなしを良く聞きますが、硬直したマニュアルにがんじがらめになっていることはないでしょうか。HACCPの認証ではコスト、生産性は無視でしょうが、取得側ではそれを無視しては成り立ちません。コスト、生産性を意識して改善を議論し、定期的にマニュアルの変更、整理をすべきです(変更にあたって裏付けデータは必要ですが)。
日本人は熱しやすく、冷めやすいといわれます、TQCが良いといえばそちらに、HACCPが必要だといえばがらりと変わるというように。しかし、どちらにも良い所と悪い所とが存在します。前述したようにHACCPではトップダウン方式で、経営トップの意欲、リーダーシップが強く求められます。衛生管理の改善・向上というような問題は、強力な推進力がないと望めないことは間違いありません。そして目的が食の安全に絞られ、目に見える認証という結果もあります。一方で、従業員の自主性や就業意欲を育てるには弱い、どちらかと云えばコスト・生産性無視、現場の実情とかけ離れる傾向にあるように思います。その点ではボトムアップ方式のTQCや5S活動の方に歩があるでしょう。食の安全確保にとってどちらのシステムが良いとは言えませんし、相反するものでもありません。双方の良いところを合わせて、その企業独自のシステムを作り上げるべきではないでしょうか。

2006年10月6日<No.018>
微生物検査あれこれ
雪印食中毒の集団訴訟が全て和解し、事件から6年でようやく区切りを迎えたようです。そして、徹底した製造工程の衛生管理により再発防止はできるとして、事件以来継続されてきた原因毒素の検査は10月から廃止したとのこと、微生物検査が一般的で、このような検査は日常検査としては実施されていないでしょう。恐らく、大事故となり信頼の回復ということで実施されたのでしょうが、検査の経費が嵩んで見直しが進められたのだと思います。大事故が発生し、信頼の回復ということのために大きな代償を支払っていたことになります。
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キンモクセイ、あっという間につぼみを付けて咲き出し、
何ともいえない香りを漂わせます。 |
微生物は目に見えないので食品を扱うところでは大なり小なり微生物検査はつきものです。HACCPを導入している工場でもシステムがうまく働いているかの検証には必要ですし、検査室を持てない小さな加工場などでも納入先から品質規格書の提出依頼が舞い込み、あわてて検査機関に持ち込むなど。ある程度の規模の食品工場などでは日常的に微生物検査が実施されていて、提出する品質規格書の内容は合理的に作られますが、小さな加工場ではどうしてこんな規格書なの、ということがよくみられます。
食肉関連の加工場でのはなしですが、得意先から品質規格書の提出依頼がきているが見てくれないかとのこと。中を見てみると、微生物規格だけでも一般生菌数、大腸菌、黄色ブドウ球菌・・・と盛りだくさん。依頼する側は、その食品で危害発生する恐れのあるものも、ないものもできるだけ多い項目を並べておけば安心と考えているのでしょうか。今年5月に実施された農薬等のポジティブリスト全項目検査とそっくりです。
また、作成する側も規格書依頼が来たときだけの検査で、積み重ねがなく裏付けのない規格ができてしまう。そして検査機関の結果が規格オーバーになり、規格に合うまで検査が継続されることもある。また、規格を作るにあたっては原材料にも目を向けるべきでしょう。元々が汚れていれば、加工場で適切に処理されてもどうにもならないのですから。契約上の検査です、双方とも規格に対する認識が甘いように思います。
食品工場の微生物検査で価値の高いものは品質・工程管理など、いわゆる自主管理のために実施するのもので、この検査によって品質・工程の異常に有効な手を打てるようになります。また、製品の開発、設計の変更や事故発生時の原因究明にも有効な手段です。一般生菌数などの衛生指標細菌の検査は日常的に実施したいものです。契約上の検査などは公定法で実施した方が無難ですが、自主管理のためのものでは簡易な方法で十分です。今は簡易培地もありますし、小さな加工場でもそれほどの施設や知識も必要なく実施できると思います。そして、その食材に存在する菌を適切に検出する方法を採用した方が有効です。
公定法での一般生菌数(SPC)は、標準寒天培地で35℃で48時間培養後に測定される発生集落数から算出しますが、この培養で生育できない菌などは測定できません。小生の経験でも、例えば低温細菌の汚染が大きい生鮮魚介類の測定などでは35℃で48時間培養より、25℃で72時間培養の方が1オーダー(10倍)も多く計測されるのが普通です。こちらの方が汚染状況を適切に表しているでしょう。
「大腸菌群:アイスクリームから検出、回収−−松山の製菓会社」、8月22日の毎日新聞の記事で、保健所の定期検査で、回収命令が出たとのこと。当地域ではこのような情報はほとんどみかけません、恐らく自治体によって温度差があるのでしょう。行政は規格基準を決めて取り締まるしかないのはわかります。どの程度の汚染かはわかりませんが危害には直接結びつかないと思います、何とももったいない。マスメディアの報道も、ひどいものは大腸菌群であるのに大腸菌検出などと騒ぎ立てます。何とかならないものでしょうか。

2006年9月8日<No.017>
頻繁です、食品表示改正
「わかりやすい表示・・・でもQ&Aはわかりにくい」、食品科学広報センター・メールマガジン8月16日号の表題ですが、確かに。8月1日に加工食品品質表示基準の一部改正が告示されましたが、そのQ&Aの一つ。Q) 「製造者」等の項目名について、食品衛生法による表示との関係を教えて下さい・・・ A) 両法により表示する者が異なる場合は、JAS法に基づき表示する者を別記様式(一括表示)枠内に記載することが必要です。なお、食品衛生法に基づき表示される者についても別記様式枠内に記載することは可能ですが、この場合、どちらの者がJAS法上の表示責任者であるかを合意しておく必要があります、となっています。めまぐるしく表示法令が変わり、その度に食品関連業者は大変です、法令の目的が異なるとはいえ相変わらずの縦割りは何とかならないのでしょうか。
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八重咲きのムクゲ、今年も終わりです。花の色、形は
気に入っているですが、終わると花首から落ちるのが。 |
JAS法ではこれまで、適用外を除く加工食品は必要事項を一括して表示することなっていました。したがって、プライスラベルなどに名称や内容量が記載されていても一括表示として別に表示が必要でした。見直しは、わかりやすく表示されていれば省略できる、また弁当のように外見から判断できる「おかず」は、まとめて「おかず」として記載できるというような弾力化、そして「特色ある原材料」を記載できる場合の具体例や、原料原産地名の表示は原料と原産地の対応が明確になるように表示するなどが決められたということです。基本的にはこれまでの表示で問題ないはずですが。
本年10月1日からは加工食品20食品群の原料原産地表示が実施となりますが、5月には豆腐、納豆の原料大豆原産地表示に関するガイドラインが示され、そして、加工食品原料原産地表示のさらなる推進ということで、のり加工品、緑茶飲料、果実飲料などが対象に上げられ検討されており、原料原産地表示だけでも盛りだくさん。産地偽装への信頼の回復ということでしょうが、その度毎に包装資材の無駄が発生したり、対応への労力も大変なものです。法令にしたがって、まともに表示しているほとんどの食品関連業者には迷惑なはなし、もっと長期を見通した一元的な表示行政が必要でしょう。
平成の初めに食品添加物表示が変わって、小生もその対応作業に携わった経験があり、膨大な包装資材をゴミにしました。また、表示内容の変更では、ひとり作業では結構見落としが起きたものです。今回の原料原産地表示ではその対象となるのか、境目の判断に迷う場合も出てくると思います。そのときは面倒ですが行政の相談窓口で確認することも必要でしょう、無駄なトラブル、ロスを出さないために。
一転して表示違反の取り締まりですが、JAS法による特別調査などは相変わらず進められて違反業者の公表も続いていますし、公取委も負けじと、今年に入ってからの食品表示での排除命令は6件にも達しています。一方食品衛生法では、違反措置は地方自治体の長名で発出されることになっていて、地方自治体毎に調べないことにはわかりませんし、自治体による温度差もあるようです。そして、よほどのことでない限りマスメディアも取り上げません。食の安全に係わるアレルギー表示などは19条違反ですが、現在は自主回収ということで収まっているようです、何か釈然としないものがありますが。聞いた話で申し訳けありませんが、公取委では結構な数の品目のブラックリストができていて、目立つようになると排除命令として公表するとのこと、ご注意のほど。
財政難理由の国家公務員削減が計画され、自治体に引き受け要請が進められているという報道がなされていますが、農水省の食品表示関連部門もその対象となっているいるようです。これまでマンパワーにまかせて、やり過ぎではと思われるほどの取り締まり。これも民間委託となるのでしょうか、これまで同様に続くのでしょうか、今後の動きが注目されます。

2006年8月21日<No.016>
徹底清掃の時期
猫の手も借りたい夏の繁忙期も終わったようです。忙しさを言い訳にして、手抜き清掃した箇所が少なからずあるのでは。堆積した汚れを確認しながら徹底して除去して、次ぎに備える時期と思います。そのままにして、暇になったのでお休みというのでは手痛いしっぺ返しが来るのは必定です。日常の清掃と共に、少なくとも繁忙期に入る前と終わった時は徹底清掃の時期です。
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夏に咲く花木の代表“サルスベリ”。2ヶ月ほど前にウ
ドンコ病が発生し、切り戻しをしたので今が見頃。 |
食品工場の清掃では洗浄と殺菌が中心課題ですが、扱う食材、製品によってその方法は一様ではありません。扱うものが水を嫌うものであれば乾式洗浄法になりますが、最近はアレルギー混入が問題視されることもあり、場合によっては水を使用した洗浄の併用も必要になるでしょう。一般的にはバッチシステムで、洗浄媒体に水を使用する湿式洗浄を用いているのがほとんどのように思います。密閉パイプラインであり、定置洗浄方式を採っているところもありますが、作業場の洗浄については同じです。以下この湿式洗浄法について、身近なものとしてヒトの歯磨きを例に挙げて述べてみます。
細菌の増殖には温度、水分、栄養の3条件が必須で、ヒトの口の中はその条件にピッタリの環境にあります。温度は36〜7℃、唾液で水分は補給されるし、歯の間に残った食べ物のカスからは栄養分がというように。したがって、歯やその周辺の管理が悪いと細菌が増殖して虫歯、歯周病に発展する、それを防止するために歯磨きという清掃作業が必要になります。
一般的に若い人の歯ぐきはしっかりしていて歯の隙間も少ないでしょうが、年と共に歯肉は衰え、隙間が大きくなり食べ物カスが残りやすくなるので、先ずはこれを除いてやることが必要です。歯間ブラシ、歯ブラシなどを使用して物理的に取り除くことになります。食べ物カスが残っていると細菌が増殖し、バイオフィルム(水不溶性多糖類)を生成して歯垢になります。これを除くために歯磨き粉を使用して歯磨きをしますが、除き漏らしたバイオフィルム内では細菌が増殖して悪さをする。また、食べ物や唾液中のカルシウムなどの塩類が歯に付着して歯石が生成し、細菌にとって格好の住み家を提供することになります。歯磨き粉に配合されている磨き砂などではなかなか除去できません、歯医者での除去も必要になるでしょう。口臭除去などを謳い文句に、殺菌剤が配合された洗口剤のような商品が売られていますが、汚れは取り除けません。
HACCPという言葉もなかった20数年前の小生の経験。おいしいと評価の高い低酸性液体調味料を開発して商品化することになり、形態は缶詰でしたが充填設備がありません。充填を外部に委託するという方法になりました。細菌汚染リスクが大きいので熱間充填にして生産開始。販売当初は問題なく進んだのですが、夏場になって“すっぱい”という苦情が出ました。調査したところバチルス・コアゲランスという好熱性のフラットサワー菌の仕業で、缶詰工場のいたるところから検出され、自社でのビン充填への変更に迫られることになったのです。
この工場の製品は酸の強い果実缶詰がほとんどで、pHが低いため、かろうじて問題が発生しなかったのです。調査の過程で、清掃方法に注目しました。大量にお湯を沸かしておき、作業終了時にそちこちにたっぷりと熱湯を掛けるという方法で、好熱性の菌にとっては良い環境になり住み着いてしまったという判断でした。
清掃の考え方は、まず目に見える食材のカスを洗浄前にできるだけ取り除く(ホーキ、掃除機などで、次ぎに荒水洗浄で)。そして洗浄対象物や汚れの成分を見分けて、それに合った洗剤、洗浄用具を使用して擦り洗いをして汚れを対象物から剥がす。平滑に見えるステンレスと云えども細菌から見れば凸凹で、隠れてバイオフィルムを作る空間はあるのです。そして、前述の歯石のような付着した無機塩類は酸を使用しないと除けません。次ぎに適切な殺菌剤を使用して殺菌ということになります。殺菌後は清水ですすいで、キチッと水を切ってできるだけ早く乾燥状態を作るという順になります。
合理化ということなのでしょうか、作業終了後に床に殺菌剤を配合した洗剤を撒いて終了のような方法は邪道です。汚れは取れませんし、施設内はカビの巣だらけになる危険があります。また、ピカピカになってあるべきステンレスのシンクが水アカ(無機塩類)で白くなっているようではきちんと清掃がされているとは云えません。食品では特に、清掃は重要な作業の一つとして作業時間に組み入れる必要があります。

2006年7月31日<No.015>
またシガテラ毒魚の食中毒
前回は微生物による食中毒について述べました。ついでに今回は、発生件数は少ないが重大な危害に発展しやすいマリントキシン(魚毒)食中毒について述べてみたい。
3月に、イシガキダイによるシガテラ食中毒のPL訴訟を紹介しましたが、先月中旬に茨城の飲食店でバラフエダイによる同様の事故が発生したとの報道がありました。教訓が生かされていない、また訴訟問題に発展するのではといらぬ考えをしてしまいます。
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真夏に咲くノウゼンカズラが咲き始めました。これから
毎日、目を楽しませてくれます。 |
シガテラとは熱帯、亜熱帯海域の珊瑚礁周辺に棲む魚貝類によって起こる死亡率の低い食中毒の総称で、原因は石灰藻など海藻に高密度に付着生育して毒を作り出すプランクトン(渦鞭毛藻)を餌とする魚や巻貝が毒化するとされています。中毒を起こす魚は300種とも500種ともいわれ、カンパチやヒラマサでの事例も報告されているようです。有毒部位は内臓だけでなく(多くのマリントキシンは蓄積部位が特定されているので除去できる)筋肉にも毒性があることがあり、中毒の多い原因の一つとされていて現状ではなかなか対応が難しい。
マリントキシンは通常の調理加工処理では不活性化できないことを念頭に、魚の正しい名称(地域特有の呼び名では間違いが起きる)や漁獲海域を確認し、バラフエダイなど事例の多い魚種(約20種程度といわれる)は避けるしかないのでは。卸売市場の監視業務に携わった経験のある知人の話では、見回って毒魚があれば排除する、見たことのない魚は徹底して調査する、また、シガテラ毒素の標準品はなく分析は難しいので現状では貝毒のようにモニタリングはできないとの由。産直など卸売市場を経由しない流通が進展している中、このような食中毒発生の危険性は高くなるのではと危惧されます。
話は変わりますが、先月半ば過ぎにベトナムのレストランでカニスープとエビを食べた観光客100人以上が入院し(20人が心停止状態)、調査の結果、カニスープとエビから麻痺性貝毒が検出された。スープは500g、エビは100gで致死量であったとのこと(食品安全情報blog http://d.hatena.ne.jp/uneyama/)。
食中毒事例はないようですが、日本でも同様の危険性はあります。最近の農水省の調査で、貝毒汚染海域で捕獲されたトゲクリガニから高濃度の麻痺性貝毒が検出されたというもの。よく考えればなるほどと納得できるのですが貝毒という言葉に騙されてしまいます(小生もその部類)。多くのマリントキシンは食物連鎖上にあるということです。
この調査をもとに一昨年、厚労省は二枚貝などの捕食生物についても麻痺性貝毒が基準を超える(4.0MU/g)ものは食品衛生法違反として扱うこととしました。トゲクリガニを漁獲対象としている当地、宮城県ではモニタリングが実施されているようで、頻繁ではありませんが情報が公開されています。。
もう一つ、昨年関西を中心にして巻貝エゾボラモトキ、ヒメエゾボラによるテトラミン食中毒が報道されました。販売店が唾液腺を除去せずに販売したことが原因のようです。神戸ではツブガイとして販売されていた事例もあったとのこと。これらの巻貝はいろいろの地方名があることにも問題がある。
フグは厚生省通知で、その種類と可食部位が決められていますし、地方自治体条例では調理する者の資格が定められています。また、麻痺性・下痢性貝毒は国家的モニタリングプログラムで監視され、規制値を超えたものは採取や出荷が自主規制されます。しかし、前述のシガテラやテトラミンのようにまだまだ規制の枠外にあるものもあります。魚介類を扱う業者も消費者も十分な知識を持つこと、新しい情報への注意が必要でしょう。
マリントキシンによる食中毒は、平均で年31件、患者数60人程度と数は少ないのですが、死亡率は5%程度で微生物原因食中毒と比較してはるかに高い(厚労省資料 1993〜1999)。

2006年7月13日<No.014>
食中毒多発時期です
「大阪の小4女児、サルモネラ菌による食中毒で死亡」という記事がありました、何と痛ましい。食中毒は一般的には「飲食することによる急性胃腸炎」とされ、感染してもたいしたことはないと思われがちですがこのように死亡に至ることもあります。食品を取り扱う方々はご注意を。
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庭の花はお休み中、20日ほど前に咲いたクジャクサ
ボテンの花。刀、鏃型の葉が混在して形は悪いのですが
ご覧のように幻想的な花を付けます(大きさは20cm程) |
食中毒といえばサルモネラ、黄色ブドウ球菌、腸炎ビブリオといわれましたが様変わりしたようです。平成17年食中毒発生状況(速報値)が出ていますが、それによると事件数の第1位はカンピロバクター・ジェジュニ/コリ(645件)で、以下ノロウイルス、サルモネラと続き、患者数では第1位ノロウイルス(8,727人)、以下サルモネラ、カンピロバクター・ジェジュニ/コリの順になっています。O−157を含めて、これらの菌に共通しているのは少量の菌の摂取で感染が成立してしまうということでしょう。
最近は食品を扱う業者さんでは曲がりなりにも低温管理には気を配らないと商売ができない状況になっています。食中毒防止原則の一つの“増やさない”対策は以前と比べればはるかに良くなっているはずです。また、少量の摂取で感染する菌への対策としては“加熱殺菌”が一番なのですが、生食文化がまだまだ残っている日本では無理。
そうしますと防止原則の最後の一つ、“付けない”ことへの配慮が必要になります。仕事柄、飲食店に入ると厨房、特にシンク周りに目がいきます。手洗いと食材洗浄兼用、手洗い用が別に設置されていても物置場というのをよく見かけます。これで満足な手洗いができるのだろうかと疑問に思ってしまいます。また、ピーク時には狭い調理場を従業員が所狭しと動き回ります(威勢良くは見えますが、当方には汚しまわっているように見えます)。確かに中小、零細の多い飲食店などは、コスト面を考えると余裕のある施設、設備は持てないと思いますがそれなりの工夫、整理整頓清掃を徹底すれば作業しやすいし、汚染も防げるように思うのですが。
食中毒発生の原因施設では、家庭を除けば飲食店、旅館、仕出屋が定番となっています。事故が短期間に続けて起きることも度々あるようです。これらの施設の売りはおいしさで、「安全」は抜けている、経営者自体が衛生面への感心が薄いと考えざるを得ません。先ずはお客様に安全で、おいしい食事を提供するという理念を立てるということが先決でしょう。
一方で量販店やコンビニで提供されている弁当などでの食中毒事故発生はあまり聞きません。これらの食材を製造しているベンダーでは、作業方法や管理方法が細かく規定され、生産計画もきちっと立てられているのでしょう。安全な食品の提供が第一とされているのだと思います。前記施設では取り扱う食材のバラツキが大きく、このようにはいかないでしょう。しかし、従業員が“衛生に関する知識”を身に付いていれば、極端な能力オーバーの場合(食中毒発生率が高い、時には受けない決断も)以外には対処できるように思います。
ここのところ、横暴を極めたノロウイルスによる食中毒は陰をひそめ、サルモネラ、腸炎ビブリオ等々従来からの食中毒がみられてきています。1ヶ月後には帰省客でごったがえす盆休みに入ります。食中毒発生が多発し、紙面を賑わす時期です、細心の注意を払いたい。
昨年の食材の汚染調査で、厚労省調査では鶏ミンチ肉の大腸菌検出率80%、サルモネラ検出率33.6%、豚ミンチ肉の大腸菌検出率71.6%、サルモネラ検出率4.6%、新潟県調査では鶏肉からのカンピロバクター検出率53.8%という結果が出ています。食肉などの食材はほとんどが食中毒菌で汚染されていると見た方が良いでしょう。それを踏まえた上での取り扱いということになります。解凍などには特にご注意を!

2006年6月14日<No.013>
気になりませんか、作業場のカビ
当地も梅雨に入り、これから一月半ほどはうっとうしい毎日が続きます。毎年、秋になるとカビ発生による自主回収が多発します。恐らく湿度の高い梅雨時に、作業場内に巣くったカビの胞子が飛散して食品に付着し、徐々に目に見えるまで生育して苦情に至るのでしょう。回収費用を含めて、その損失たるや大変なものと思います。
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雨上がりのニシキウツギの花。「卯の花の匂う垣根に、
ホトトギス、早も来鳴きて、・・・」と歌われるウツギ(卯の
花)の仲間。 |
取引先の視察が多くなっているせいか、最近の食品加工場の大半では壁や天井は清掃がされたり、防カビ塗装が施されているところもあります。しかし、このような工場でも設備の裏側などにカビが巣くっているのをよく見かけます。特に冷蔵庫、ユニットクーラー、冷却機などの冷却設備まわり、シンクの裏側のような水まわりなど。ユニットクーラー、エアコンなどにカビが発生した場合は、作業場全体に胞子をまき散らすので特にたちが悪い。温度が低ければ増殖しないだろうという先入観なのでしょうか。カビの生育最適温度は25℃程度ですが、湿度が高くなると10℃以下の低温でも生育します。冷却設備まわりは夏場は結露が発生しやすく部分的には湿度が高くなる、というのは少し考えればわかるはずなのですが。
餅にカビが生えていても、昔は生えた部分だけ除いて食べたものですが、今の人たちは捨ててしまいます。青カビ、黒カビ、赤カビなど、ほとんどの人はカビを見たら嫌悪感を抱いて大騒ぎすると思いますが、その割にはカビに無頓着な人が多いのではないでしょうか。生えるのは仕方がない、除去してもすぐに生えるのだからとあきらめ、見ないふりにはなってはいないでしょうか。
カビは食中毒菌などと違って、増殖すれば特有の色を持つので目に見えるし、殺菌は比較的容易で取り扱いは難しくないと思われがちです。しかし生えているのがわかるようになった時点では、すでに膨大な胞子が飛び散っているのです(色は胞子の色で、菌糸の状態ではわからない)。飛んだ胞子は付着した先でまた生えるというように始末に負えない。またコーキング剤などに生えた場合は菌糸が中まで侵入してしまうので、生えてしまうと削り取ってしまわないと除去できないなど、対応が意外と難しい。
根本的には作業場の湿度をコントロールするしかないでしょう。カビは食品だけでなく、人の垢、ペンキ、プラスチックまでも栄養源として生育するのですから。O−157事故の後、学校給食などではドライシステムの必要性が叫ばれて、ドライ仕様にしないと改修の補助金が付かないということも云われました。しかし、日本には梅雨という時期もありますし、アレルギー物質などのコンタミ防止には水を使用した洗浄も必要で、完全なドライ状態の保持は困難です。十分な除湿能力のある空調設備が導入できればいいのですが、中小企業では無理のように思えます。
清掃後の水切りの不十分、水ホースからの水漏れ、蒸気漏れなど、作業場を訪問するとよく見られます。まずは作業後の水の排除(結露なども拭き取る)を徹底する、換気をする(扇風機などファンの利用も)など、できるだけ湿度を下げる工夫が必要に思います。その上で、カビが生えているのを発見したらすぐに拭き取って、アルコールのような殺菌剤処理を施しておけばほぼ問題にはならないでしょう。梅雨時は中元の繁忙期と時期が重なります。繁忙期に入る前に一度徹底清掃が必要に思いますが。
このような作業場で見られるカビは、さほど悪さをしないものがほとんどです(クラドスポリウムはアレルゲンの原因といわれていますが)。一方で、強力な発ガン物質のアフラトキシン(日本には生産株はない)や、デオキシニバレノール、パツリンなどのカビ毒を生産するものがあります。そして発酵食品に利用されるすばらしい能力を持ったカビもあります。
日本酒、味噌醤油などの発酵食品はカビ(黄麹菌)、乳酸菌、酵母など微生物の働きを上手に操ってできるものです。プロフィールにもありますが小生は以前、発酵食品企業におりました。麹室(こうじむろ)の中に入り、うまく育ってくれているか、様々な酵素を十分生産してくれているか、良い色・香りがしているか、じっと見つめたりもしていたものでした。
〜 カビの世界は広く、奥深い! 〜

2006年5月26日<No.012>
工場の防虫対策はできていますか?
虫の繁殖時期になりました。雪印食中毒事故が発生した平成12年の夏は、異物混入、異味異臭、カビ発生などの苦情・自主回収が毎日のように紙面を賑わしました。異物混入では虫の混入が一番多く、東京都立衛生研究所で虫体混入調査を行った食品は8〜9月で113件に至りました。健康危害、拡大可能性は低いということだと思いますが、最近はさすがに虫の混入による自主回収は少なくなっています。しかしコープネット商品検査センターのデータによる昨年4〜6月の異物混入苦情では、虫混入が18.8%と相変わらずの1位を占めています。
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花の女王ボタン。今年は寒さのせいか開花が遅く、
先週末が満開でした
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防虫に関しては素人の小生ですが、仕事柄、目を凝らしてみるクセが付いています。
2年ほど前に改装したての鮮魚加工場に伺った時のことです。ハエのような一目でわかる虫はさほど多くは見受けないのですが、よくよく見ると排水系のチョウバエのような小さな虫がいっぱい飛んでいるではありませんか。そこの社長さんとのやりとり、「売り場に小さな虫がいっぱい飛んでいますよ」、「そうかなあ、虫は少ないと思っていたんだが。業者に消毒してもらうか」。
この社長さん、今話題になっている電解水の導入や、床塗装改修をしたりと衛生面には関心のある人ですが小さな虫には気が付かなかったようです。最近は、ゴキブリや大きなハエばかりでなく、良く見ないとわからないような小さな虫の混入による苦情も発生します。
また数年前のことですが、いろいろと防虫対策を取っている食品工場で、作業場に設置された捕虫器に小さな黒い飛翔性の虫がたくさん捕らえられていました。専門業者に鑑定を依頼したところ、この虫は「ハヤトビバエ」で時々大発生し、一般の網戸(16メッシュ)では通過して入り込むとのこと。この結果を受け、網戸を小さなものに更新してからはこの虫はほとんど見かけなくなりました。このように捕虫トラップは様々な情報を与えてくれます。
大抵の食品工場では捕虫器が設置されています。しかし、他人に見られたくないとの思いからか、手の届かない高い場所に設置されていたり(内部発生の小バエなどは人の背の高さ以上は飛ばない)、ランプが切れていたり、虫が“いっぱい”付着していてもそのままというように管理がされていないとみられるものや、外部にランプの光が漏れて、返って外部侵入虫を集めているのではというようなケース等々。せっかく費用を掛けて設置しているのです、有効に活用したいものです。
捕虫器については、イエバエのような飛翔性外部侵入虫に関しては、その名の通り“捕虫器”でしょうが、内部発生虫にはあくまでモニタリングの道具でしかありません。交換日付が記入されていない粘着紙をよく見かけますが、これでは発生状況がつかめません。そして虫がいっぱい捕らえられたままになっていると、現場の作業員は気にも掛けなくなることになってしまいます。捕虫器に虫がいっぱい付着していたら、整理整頓は? 清掃は適切になされているか? の検証が必要なのです。その結果、発生源が排水管であれば、専門業者による排水管の清掃や薬剤散布が必要ということになります。
ハインリッヒの法則でもありませんが、ゴキブリのような目に見える虫でも1匹が見つかったら、その背後には相当数が隠れています。見つけたら、住み家になる可能性のあるところを徹底的にたたく必要がありますが、素人目にはなかなかわかりません。虫の生態に詳しい専門業者に依頼して調査、薬剤散布も必要になるでしょう。薬剤散布にあたっては全てを業者まかせにしないことです。使用する薬剤は農薬にはあたりませんが成分的には同じものがほとんどで、前々回述べたポジティブリスト制度とからんできます。食材を汚染させない管理が求められます。
6月1日から駐車違反摘発を盛り込んだ改正道路交通法が施行されます。全日本トラック協会では(1)荷主や配達先は、車両脇で搬出入に立ち会ってもらう(2)ビルが同じ場合、荷物の納品場所を1箇所にまとめる(3)駐車場確保の協力のお願い などをよびかけているそうです。食品衛生面でも問題が発生するのではと危惧します。近頃一面からだけしかみない法規制が多すぎる。

2006年5月6日<No.011>
○○版HACCP
日本でHACCPシステムが導入されてから10年が過ぎましたがどのように変わったのでしょうか。相変わらずの食中毒も発生していますし、総合衛生管理製造過程認証施設であった雪印乳業では大規模な食中毒事故発生、他の乳業業者でも事故原因の認証返上がみられ、あまり効果を発揮していないようにみえます。
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屋根からの落雪で枝が折れましたが(もったいない)、
清々しいミツバツツジの花が咲きました |
受験勉強には一生懸命になりますが入学してしまえば遊び呆ける(小生もそうでした)、どうもこれにそっくりのようです。一度認証を取ってしまえばそれで万事成功になっていたのでは。認証取得時には分厚い作業手順書や大量の点検記録票が作られたのでしょうが、その必要性が末端まで届いていたのでしょうか。
HACCPシステムがうまく動いているある工場の例。この工場は全体の衛生管理の向上を目指して、8年ほど前に米国水産物HACCP認証を取得しました。当初は厚労省の認証を目指しましたが、使用原料が「柱だけで支えられている市場」を経由したのでは無理ということで、ソフト面での対応が可能という民間の認証に切り替えました。
結果的にはこの選択が功を奏しました。レベルTという高い評価なのですが、6ヶ月毎の更新査察があります。査察が終わったと思ったら、また査察といつも良い緊張感を保っています。また、査察時には指摘箇所のレベルが上がってきますし、手順書や記録表の整理・整頓も指摘されます(変更した時は裏付けとなる検証が必要になりますが)。大雑把な知識しかありませんが、行政の認証ではこのようにはいかないでしょう。
このほか、4〜5年ほど前から年4回の小生の施設巡回や得意先の査察、管理センターの内部検証があり、その内容、改善策がHACCP委員会で討論されます。作業現場は大変ですが、誰が、いつ見に来られてもOKという状況にあります。そして「教育なくしてHACCPなし」、これはこの工場の工場長の信念です。衛生標準作業手順書(SSOP)の作成時、衛生管理の向上を目指すには従業員教育が最重要という結論に達し、小生がこの任を担うということになったのです。従業員教育が効果を発揮するには長期間要しますが、システムの維持向上にはこれがポイントのように思います。
「最近、どういう訳か工場にお伺いする仕事が増えてきています。今まではHACCPというと、認証取得やアピールといった、多分に営業政策的な意図からきたものが多かったのですが、この頃は純粋に今のHACCPを見直したい、とか、品質管理の体制をHACCPを柱として組み直したい、というものが多くなってきています。実際、HACCP、あるいはそれに準ずるような管理を導入されているのですが、単なる“様式”の導入であり、一般的な衛生管理のマニュアルを作り、想定通りのHACCPプランを作っただけの、いわゆる形式的なものとなってしまっているようです。結果として、記録帳票が増えただけ、というのが現実です。昨今のように、ちょっとしたミスが企業の命取りにもなりかねない現状の中で、やっと本来の意味でのHACCPの必要性が認められつつあるのかなと、HACCPフリークの小生としては少々嬉しくもあります。」FOOD・SCIENCEの江井誠さんのコラム。
今、そちこちの地方自治体で「食品の安全性や業界全体の衛生レベルの向上」の目的で、○○版HACCPといった自主衛生管理認証制度が立ち上がっていて、当地域でも2年ほど前に宮城県で、本年4月からは仙台市でも始まりました。一般消費者からは見えにくい食品事業者の自主的な取り組みを積極的に評価、公表するという制度のようです。制度を作って、それで終わりとならないように願うばかりです。
その評価基準を見てみますと、項目数、作業手順書、点検記録票の多さは小規模業者が簡単に参加できるというものではないようです。異をはさむつもりはありませんが、食中毒などの食品危害を起こしているのは弁当業者や飲食店などの小規模業者がほとんどです。食品業界全体の衛生レベルの向上に、この制度が効果が発揮できるのか疑問を抱きます。業界の底上げを図るのであれば地方自治体・衛生部局の指導業務を充実させるのが先決と思いますが。

2006年4月18日<No.010>
喧々ごうごう、ポジティブリスト制度
昨年11月末に、一定量以上農薬、動物用医薬品、飼料添加物が残留する全ての食品の販売等を禁止する「ポジティブリスト制度」が告示され、3月31日に厚労省から「ポジティブリスト制度について Q&A」が示されました。具体的な返答があるのかと思っていたので
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| 品のあるタツタソウの花が今年も咲きました。日露戦争の時、シベリアから龍田丸(軍艦)の乗組員が持ち帰ったことからこの名が付いたそうです。 |
すが、期待はずれの内容に終わったようです。
その一項目。「流通業者から、基準が設けられた物質すべての検査を求められた場合はどうすればよいですか」には、「残留農薬等のポジティブリスト制度は、食品に残留する農薬等の分析を食品事業者等に義務づけるものではありません。従来からの残留農薬に対する取組みと同様、信頼できる事業者と取引する、使用される可能性のある農薬等の種類や方法、残留基準違反事例の有無等を確認する、必要に応じ残留状況について分析する、などの取組みが原材料の安全性の確保のために必要になると思われます」との返答。
FOOD・SCIENCEサイトのコラムで松永和紀さんは、“上手に逃げる「厚労省流」に、つくづく感服する。輸入業界や農業現場で、今起きている混乱を知っているはずなのに、知らん顔。検疫強化のポーズはとり、「変更するかもよ」と公式文書に最初からただし書き。「犠牲者」は末端の生産者や輸入業者、検疫所の職員・・・”と述べています。
食品生産現場などでは流通小売業界から「安全証明、検査成績書」、「食品衛生法11条3項適合証明」などが要求され、「出せなければ取引を打ち切る」というような脅しともみられることが相変わらず横行してしているようです。その結果、これらの要求は川上に向かって「不幸の手紙」として流れていくことになる。ひとくちに農薬検査といっても多額の費用がかかる、また検査の結果の信頼性にも疑問符が付く場合も考えられることをわかっていながら。
農薬ネットの掲示板の投稿内容の一つ、“4月4日の意見交換会で出た話です。ある加工メーカーが川上に対し「保証書」を取っているがそれで十分か?のような質問でした。その時に、保証し得ないのに「保証書」の紙切れ1枚に何の意味がありますか?それよりも、生産情報を入手して下さい。との答えだったと思います。保証をするためには全数検査でもしない限り「保証書」は発行できないはず”。
流通小売業界はこの状況をどのように考えているのでしょう。コンプライアンスの名の下に、保証書を取って責任転嫁の材料とするのでしょうか。確かに公正取引委員会・大規模小売業告示(昨年7月)の「優越的地位の濫用行為」には当てはまらないかもしれませんが、それに近い行為のように思えます。このような要求が過剰になれば生産をやめる農家なども出てくるでしょう、海外でも日本への輸出を取りやめるところも出てくるでしょう。そうなった時に食料自給率40%にも満たない日本ではどのように対応するのでしょう。厚労省などは流通小売業界を対象にして、早急に法令の周知、指導を行う必要があるように思います。
大手食品メーカーには、中国でドリフト対策など農薬管理が十分出来る農場を確保して生産し、検査センターを設置して安全性を確認した原料を調達するという報道がありますが、農家や中小食品メーカーには無理。この部門でも大手以外は生き残れないということになるのでしょうか。
現状での残留農薬基準違反例(三重県・食の安全安心広場サイト'06.03.23)
・概要 残留農薬検査の結果、津市産シュンギクから基準値を超過する
農薬が検出されました。検出濃度による健康への影響はないと
考えられます。 現在、流通段階で疑わしいシュンギクを自主
回収
しています。
・検査結果 ジクロルボス0.18ppm(食品衛生法による基準0.1ppm)
・健康被害等 ジクロルボスのADIは0.0033mg/kg/dayであり体重50kgの人が
毎日 916gのシュ ンギクを食べ続けても安全性に問題がありませ
ん。
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5月29日以降も、このようになる? 安全性に問題ないといいながら、自主回収(回収命令)廃棄。ドイツなどでは安全性に問題ないものは回収はしないとのこと。食料を自国でまかなえない日本で、なんともったいない、傲慢とは考えないのでしょうか。いずれにしてもポジティブリスト制度は開始されますが、行政も運用の仕方には一考あるべきでは。

2006年3月31日<No.009>
宮城のカキの安全安心問題
今冬もノロウイルス食中毒が多発し、カキ原因によるものも結構あったようです。3月一杯で生カキの流通シーズンは終わりますので、今回はカキの安全安心対策を考えてみたい。
2月20日、当地の地方紙に「宮城産カキ販売不振 老舗仲買業者が破たん 同業者に焦燥感」という記事が載りました。2002年の韓国産かき偽装事件以降の販売不振に加えて、昨年10月に宮城県産カキから基準オーバーの大腸菌が検出され、その返品が追い打ちをかけた、約40業者が競うカキ業界には対岸の火事ではないとの焦燥感があるとのこと。
かき偽装事件から4年近くが経過しましたが、宮城県では「オイスターGメン調査」、県漁連等では「産地識別技術導入」など相変わらずの犯人探しにやっきになっているようです。これが一概にどうのという問題ではありませんが、静かになったと思ったら又ぶり返すことで宮城のカキのイメージ低下は更に進むのでは、と危惧してしまいます。
「宮城のカキ」は全国2位(5千トン前後)の生産量で、全て生食用として生産され、食材王国みやぎを代表する水産物とあります。生食用として提供したいのであれば高度な衛生管理が必要ですがほとんどが中小業者です。食中毒を経験した当地のカキ専門料理店では自己防衛のため、生カキはノロウルス汚染の少ない10、11月に限って提供の由。宮城のカキの安全に対する取り組みを進め、広くアピールして信頼を回復する施策が必要ではないか、そのためには三重県が良い例になると思います。
三重県のHPに「三重県 食の安全・安心ひろば」サイトがあり、ネットフォーラム「E−ひろば」が開催されていて、テーマ「みえのカキ安心情報発信中!」は活況を呈したようです。その投稿内容の一つ、「ノロウイルスによる食中毒は私どもカキ生産に関わる者にとって頭の痛い問題ですが、三重県における様々な取り組みをお聞きして、カキの安全性を高めるために大変な努力をされていることが分かり、感心しました。特に長年の調査データに基づいて色々な対策を考えているだけでなく、生産者、加工業者、消費者と関係する人たちにきちんとした情報提供を行うことで食中毒を防止していくという考え方は大変参考になりました。将来、カキ養殖をやっている地域ではこの三重県の取り組みをモデルにしてノロウイルスによる食中毒を防止していくことになるのではないでしょうか(北海道の生産者)」。
「みえのカキ安心情報」サイトには様々な情報が公開されています。その中の海域情報には「周辺地域での感染性胃腸炎の流行」、「海域水温が10℃以下」、「カキからのノロウイルス検出」、「50mm以上の降雨」、「カキによる健康被害の発生」、「プランクトンからのノロウイルス検出」などの情報が一覧で公開され、状況によって注意喚起が促されます。これらは三重県の長年の調査から割り出されたとのこと。縦割り行政が指摘される中で、地域振興部門と監視部門とがうまく連携しているのでしょう。ちなみに出荷量、出荷額とも大幅アップになっているようです。
前回の雑記(訴訟問題)にも示しましたが、カキのノロウイルス検査だけでは安全の担保にはなりません。全数検査はできませんし、検査が判明した時にはヒトの胃の中。最新の衛生管理手法とされるHACCP管理でもこれといった危害防止措置がなければ成り立ちません。いずれ対応策が明らかになる時期は来るとは思いますが、カキ業者は座して待つわけにはいかないでしょう。まだまだわからない部分が多く、ノロウイルス対策は一筋縄ではいかないのです。それまでは三重県のように地道な調査をして、取りうる全ての情報を公開する以外にないと思います。
最新の技術として、オゾン含有マイクロバブルを使用してノロウイルスの不活性化に成功したという産業技術総合研究所の報告があります。これが問題なく効果を発揮するのであれば、大腸菌汚染など他の微生物危害防止にも有効でしょう。当地域にもその装置を導入したカキ業者があるようですが、誰にでも簡単に導入できるものとはいえません。このようなものこそ行政が手がけて情報を公開し、地域振興に役立てるべきではないでしょうか。
国土交通省の調査で「冬の下水処理水中のノロウイルスの残留は夏の60倍だった」という報道がありました。これほどまでに環境に根付いたウイルスは下水処理場で分断するのが良いのですが。

2006年3月9日<No.008>
食中毒に関する訴訟問題
2月20日、熊本のリバーサイドホテルが15億弱の負債を抱えて民事再生法を申請、その要因の一つに、昨年8月に発生した集団食中毒による売り上げの減少があるとのこと。
食中毒を起こすと、先ずは営業禁止・停止処分などの行政処分があります。そして被害者救済、信用の失墜などの社会的責任を負わされる。また、損害賠償訴訟のような民事上の責任を問われる場合もあるし、雪印食中毒事件にみられるような刑事訴訟に発展することも出てきます。これらの処理にあたる当事者の心痛は大変なものでしょう。硬い話になりますが、今回は食中毒に関しての最近の二つの民事訴訟について紹介してみたい。
一つは、平成11年8月に千葉県の割烹料理店が調理提供した「イシガキダイ料理」を客が食べてシガテラ毒素原因の食中毒に罹り、客が料理店を相手にPL法に基づいて訴訟をおこしたというもの。平成14年12月の東京地裁の判決では、PL法に基づき客8人に対して約1,216万円の賠償命令が下されました。
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| 春を告げるフクジュソウがやっと咲きました |
当裁判では、「製造又は加工」、「開発危険の抗弁」の解釈が争われた。東京地裁は「原材料に加熱、味付けなど人の手を加えて新しい属性・価値を付加すれば加工に該当する」、「料理は製造物でこれにシガテラ毒素を含んでいたことは製造物の欠陥であり製造物責任を負うべき」、「法施行までに、このような危険の分散に備えた責任保険制度普及が図られている」、また、開発危険の抗弁に対しては「シガテラ食中毒は公表された事例が複数報告され保健所などでも入手可能であるし、当事件前に提供したイシガキダイで客に同様の症状がみられたことを被告は知っており、これらを総合すれば認識不可能であったとはいえない」としました。「引き渡した時点で入手可能な最高の科学技術の水準が判断基準」とされ、飲食店といえども情報の収集が不可欠なことを示した判決でした。
二つめは、平成14年1月に神奈川県の飲食店で提供された生ガキ(宮城県産?)を食べた多数の客にノロウイルス食中毒が発生した事件。飲食店は保健所から営業禁止処分を受け、多大な損害を被ったとしてパック詰め業者および納入販売業者を相手に民法の不法行為、PL法での訴訟をおこしました。平成15年12月の横浜地裁の判決では、納入販売業者に対する請求は棄却しましたが、パック詰め業者には不法行為責任に基づき約480万円の賠償命令が下りました。
この生カキ生産地の県漁連では週に1回の検査を実施していましたが、「この検査は、ある検査日の翌日に汚染が発生した場合、最大で10日後(次回検査までの6日+結果判明までの4日)に判明する程度の安全性である」、「該当期間には全域で陽性がみられ、被告は事故発生が予見できた」、「被告は〈加熱用として販売〉、〈畜養、浄化という危険性を低下させたカキの購入〉など独自の措置が必要だった」、「現状の制約(法令、検査など)を前提とした安全措置を取る義務があり、零細業者といえどもその責任は免れない」としました。また、「生カキは消費期限が短く簡易検査ができないので、一旦パック詰めされたものはその後の安全性確認は不可能であり、それ以前の段階(パック詰め業者や、訴訟対象でなかった生産者、県漁連)に委ねられるべきもの」とされました。検査による安全性の保証には限界がある、生食用として販売するには情報を収集して、できる限りの安全措置を取る必要があることを示した判決となりました。
このほかの訴訟では、平成10年の輸入瓶詰オリーブによるボツリヌス食中毒でのPL法訴訟判決、また食中毒ではありませんが、以前に紹介した現在係争中の「原料バターの金属片混入」、「原料澱粉の塩素臭」訴訟など米国ほどではありませんが多くなっています。このような食品事故を100%防ぐことは出来ませんが、衛生管理を継続して向上させることによって危険性をゼロに近づけることはできるはず。

2006年2月20日<No.007>
食品取扱い者の手洗い管理
先月下旬からノロウイルスによる食中毒が多発していることを受けて、新潟県は16日に冬期間では初めての食中毒注意報を発令し、手洗いや加熱調理などの衛生管理を徹底するように呼びかけています。今年1月に発生した国内でのノロウイルスによる食中毒、感染症発生件数は、それぞれ21件、48件(広島市食中毒発生情報)でした。ノロウイルスはしっかり環境に定着した感があり、食品取扱い業者はいつ、どこで発生してもおかしくないという前提での対応が迫られています。
食中毒防止の3原則は「付けない」、「増やさない」、「殺す」ですが、ノロウイルスなどは少量で感染が成立するため、低温、迅速処理のような「増やさない」は対策にはなりません。低温では逆に生き延びさせることにもなります。「殺す」対策が一番なのですが、従来の食中毒菌よりも熱や殺菌剤に強いという特徴もあり、加熱調理での殺菌不足や殺菌後の付着による事例もみられますし、風味を重視する日本の生食文化もなくすわけにはいきません。
ノロウイルス食中毒は、食品取扱い者の手指を介して食品を汚染する場合と、汚染生カキ摂取による事例がほとんどです。汚染生カキに関する問題は次回ということにして、今回は手指から「付けない」対策を考えてみたい。
「付けない対策」では、まず食品取扱い者が下痢、嘔吐などの症状がみられたら作業に携わらせない健康管理が重要です。どうしても自主申告によらざるを得ないので、申告しやすい環境にする努力が必要でしょう。また、感染症発生動向調査(各地方自治体から出ている)も参考にして従業員の注意喚起も必要でしょう。そして、何といっても「正しい手洗いの徹底」が最重要課題となります。
食品衛生の基本は手洗いにあるといわれます。食品営業許可を得る際には保健所から、これほどまで必要なの、というような手洗い設備の設置を求められます。しかし、営業後には取り払われていたり、周囲に物が積み上げられて使用できないような代物、また水栓は水だけで冬場は手を濡らす程度と想像できるものなど良く見受けます。このような事例は食品取扱い業者としては論外ですが。
いろいろな機関から「手を濡らして、洗剤を手のひらに取って泡立て、掌部5分、裏側5分・・・擦って・・・。合わせて30分かかる」というような手洗いのマニュアルが出ています。このようなマニュアルに従っていても、従業員全員が等しく正しい手洗いが出来ているのだろうか、いつも疑問に思います。皆さんの作業場できちんと手洗いがされているか自信はあるでしょうか。熱心なところでは、定期的に拭取り検査して基準超過の場合は罰則を科すというところもあるようですが。
よくあるはなし、「手指の拭取り検査を管理に取り入れようと思ってテストをしてみました。見た目として丁寧に洗った人の方が、粗雑に洗った人より菌数がかなり多い結果なのですが」。常在菌、手荒れ状況を踏まえないで、菌数による基準を当てはめようとすると、従業員は混乱してしまいます。目的は食品取扱い者が洗い残しのない正しい手洗いを自ら確認して実行することです。
「ショックを受けた。今まできちんと手洗いをしていたつもりだったが」、手洗いチェッカー(手指全面に薄くローションを塗り、手洗い作業後に蛍光ランプにかざすと洗い残し部が光って確認できる)という器具を使用した教育訓練での従業員のはなし。このような器具の利用も効果的では。
2006年1月31日<No.006>
リスクコミュニケーションのはなし
国や地方自治体の食の安全情報サイトを見てみると、昔とは比較にならないほど行政情報の公開が進みました。しかし、取り組み方はそれぞれの自治体によって様々で、ここまで情報提供が進んでいるのかというところと、相変わらず「寄らしむべし、知らしむべからず」という行政手法から抜け出せないところの二極分化が起きているようです。
国内でのBSE発生を契機として、平成15年5月に食品安全基本法が公布されリスク分析手法(リスクアナリシス)が導入されました。リスク評価(食品安全委員会)、リスク管理(国、地方自治体)とリスクコミュニケーション(関係者相互間の情報交換と意見交換;以下略してリスコミ)で、食の安全・安心を確保しようというものです。
国が主催するリスコミが頻繁に開催されていますが、総花的で消費者、食品事業者にとっては開く意義があまり感じられないようですし、米産牛肉輸入再開にあたってはリスコミが十分でなかったとの批判もあります。消費者、食品事業者と近い位置にある地方自治体とのリスコミ開催が有効なのでしょうが、旧来手法の自治体ではほとんど手が付けられていません。せいぜい義務づけられている食品衛生監視指導計画に対するパブリックコメントの収集程度でしょう。
平成16年2月末に厚労省から「食品事業者が実施すべき管理運営基準に関するガイドライン」が出ています。これを参考にして、地域の実情に合わせて自治体で条例を改正する(地域の実情によって、極端に衛生管理の方法が変わるとは思えませんが?)ということになりますが、これを例にして以下述べてみます。
まず、東京都の例を挙げてみると、昨年10月1日「食品営業施設等における衛生上の措置の基準」として施行されましたが、1年前から見直し案を提示して都民意見の募集、そして募集意見への都の考え方の公表という手順を踏んで条例制定に至っています。東京都ではこれまでも「くらしの健康」などの情報誌、食品安全情報評価委員会の「食品安全情報リポート」、「メールマガジン」などでわかりやすい情報の提供や、「食の安全都民フォーラム」、「食品安全ネットフォーラム」での意見交換も活発に行われていますし、一昨年11月からは「東京都自主回収報告制度」を立ち上げて高い評価を受けています。さらに、都のリスコミの充実について7回にわたって安全審議会および検討部会で検討され、まとめを得ています。
一方で、いつのまにか施行期日の決まった条例改正がなされていたり(条例に目を通していないとわからない)、厚労省のガイドラインが出て2年にもなるのに一向に音沙汰がないところもあります(当方の地域ではこれ)。これで、「条例はこのように改正されています、違反(食品衛生法50条第2項)なので行政処分の対象です」では、その地域の食品事業者は不幸です。
東京都は金があるから、人材が豊富だからという言い訳けは通用しないでしょう。全国食品安全自治ネットワークの幹事である群馬県(熱心だから?)や、懇切丁寧な安全検査情報の提供を実施している新潟県(「数字の羅列」や「検査の結果、基準に違反したものはない」というような無味乾燥なものはない)、その他食品事業者、消費者の側に立って独自の特徴ある情報を提供している自治体などもあるのです。
2006年1月17日<No.005>
従業員の衛生教育
当社の主な業務は案内にありますように、従業員教育とその知識が理解されて実施されているかの検証(施設の巡回指導)を中心に据えています。“ヒト”の教育は難しくてなかなか思うようにはいかないのですが、あえて今回はこの従業員教育について小生の考え方を述べてみます。
プロフィールにも書いてありますように20年ほど前に経営コンサルタントの指導を受けましたが、この時代はTQC運動(全員参加の品質管理)全盛時で、その根幹は一貫した性善説に基づくものでした。しかし近年はISOやHACCPシステムによる品質保証に取って代わられ、TQCという言葉は死語になった感があります。これらのシステムは“ヒトは本来悪いことをするものだ”という性悪説が根底にありますが、最近の社会問題、コンプライアンス問題をみるとやむを得ないことなのかもしれません。しかし主義、説というのは一方だけが全て良い、正しいというのはないと思います。ろくに知識も与えないで、マニュアルで決められた通りに作業しなさい、マニュアルから外れた行動をしたら罰則というのでは従業員の意欲は消滅してしまうでしょう。
従業員教育には集合教育と工場内教育訓練とがあり、いずれも車の両輪のように不可欠なものです。そして、経営部門の理解がないと教育の効果は上がらず、時間、費用の無駄になることは間違いありません。当社の従業員教育は集合教育が主ですが、効果を上げるための、これまでの経験を少し述べてみます。
まず、教育は私共コンサルと企業の経営管理部門の協働作業が基本、その顕著な例を挙げてみます。
ある工場の衛生教育で、当初は工場全員で月1回、1箇所で実施していましたが、“いねむり”が出たりと効果が少ないものでした。人は興味のあるもの、抱えている課題については知りたいと思って勉強しますし、記憶に残るものです。衛生教育と云った類いは、問題を抱えている人にしか知識吸収の意欲は出ないのかもしれません(したがって、この手の教育は常套手段としてオドシが使われる)。
ある時期に工場長が強烈なリーダーシップを取り、それから従業員の意識も大きく変化しました。「会社にとって従業員教育は非常に重要な問題であり、そのために高いコストを掛けている、真剣に聞くという心構えのない人は辞めてもらって結構だ」ということを宣言したのです。それ以降“いねむり”などは全くなくなりました。
そして教育対象を4部門に分けたり(部門によって教育内容が違う)、私共も手段を“視覚に訴えるもの(プロジェクタと自作のパワーポイント)”に変える、現実の課題(食品安全対策組織で収集)、最新の安全情報なども織り込むということで、質問も出るようになりましたし、教育内容の理解も実感しています。
なかなか教育効果が上がらないという場合の原因としては、企業の経営部門に従業員教育を導入する明確な目的がない(頼んでおけば安心など)、教育は作業者だけでよい、改善は経営管理部門の専権事項、コンサルは外部者であり内部情報は秘密、そして教育対象者は手の空けられる人だけ(何故私たちだけが?)などがみられます。
ISOシステムの導入時には品質向上に効果を上げたTQC運動との融合が云われましたが、現在はそうはなっていないのが実情のようです。私共の従業員教育は時間が掛かるかもしれませんが、性善説に基づいて自らの改善意欲を高めるように努めています。
2005年12月26日<No.004>
食中毒より怖い食品クレーム
平成12年の雪印食中毒以後に多発した変敗・異物混入クレームは毎日のようにマスコミに取り上げられ、この影響で倒産に追い込まれた中小企業も見受けられました。この時期ほどではありませんが、現在も多発しています。後始末には広告、回収、廃棄、訴訟など多額の費用を要します。
「原料バターに金属片、シャトレーゼが6億円の賠償要求;8/29読売新聞」、「亀田製菓・製品回収損賠訴訟(6億1,200万円);9/29毎日新聞」など現在進行中の訴訟問題です。食品メーカーにとっては、食中毒も怖いがそれ以上に恐ろしい存在かもしれません。
これらの事故は起こさないのが一番ですが、発生をゼロにすることは無理。どんなに立派な施設・設備を導入してもいつかは壊れます。完璧と思われる管理システムを導入してもほころびは出ます。それを発見して対策を講ずるのはヒトです。ヒトの意識が如何に重要かがわかると思います。
これまでの自主回収情報源としては、国民生活センター(お詫び広告)、地方自治体、企業などのサイトがありました。東京都は昨年11月から、都内に事業所を持つ企業(特定事業所)を対象に、自主回収をした場合は報告させて公表する自主回収報告制度を発足させていて、自主回収の実情が更に明らかになってきました(回収命令等もたまに見受けますが、これは地方自治体毎に発出されるので全体像は捕らえにくい)。全ての自主回収情報を拾うことはできませんが、当HPにもまとめてコメントを付けてあります。そして内閣府は、広範囲な製品に、生命に影響のある情報を中心にした回収情報サイトを07年度にも導入することにしています。
アレルギー関連の自主回収では、ここにきて混入(コンタミ)によるものが見られるようになってきました。行政、企業での検査が進んできている現れで、自社での検証が必要な時期に入ったようです。
12月は自主回収が多発する傾向があります。作業員は、忙しさに追われて整理・整頓・清掃まで手が回らない、注意が行き届かなくなるためでしょう。クレームを起こせば、心を込めて作ったせっかくの製品が無駄になり、何のために働いているのかわかりません。“ひといき入れて”、少なくともチョットした注意で防げるクレームは起こさないようにしたい。
前々回述べたノロウルス食中毒・感染症は流行時期に入ってきたようです(当HPリンク:広島市・食中毒発生情報参照)、ご注意のほど。
2005年12月09日<No.003>
食品表示特別調査
11月16日に、農水省による「マグロ」の表示に関する特別調査を受けて、不適正表示に対する措置として量販店など3社が公表されました。
農水省関連の表示調査では、今年は「そば(加工品)」、「アサリ」、「マグロ」、「果実飲料」、「大豆加工品」、「精米及び加工米飯」、「梅加工品」とチョットやりすぎではと思われるほど(特に生鮮水産物では約一年の間に3回も)。ここ2〜3年前から種々の識別検査技術を開発しながら、遡及調査を含めた表示調査が実施されています。また、これにならって?各地方自治体での表示調査も頻繁のようです。
今年夏、卸売市場(水産)のある仲卸の社長さんのはなし。
「実は半月前にアサリの件で農政局が調べに来て、小売店に産地などの情報を書面で伝えるようにと指導されたんだ。そう言われても市場にはそういう習慣はないし(小生も売買に納品書などのやりとりの習慣がないことは知らなかった)、最近はバラ買いが多くなっているし、売買時にはそんな時間はないと言ったんだが理由にならないとさ。東北で不適正表示が数件あったと報道されたがそのうちの一件だよ」とのこと(幸い悪質なものではなかったため社名の公表はなかった)。このような実情はどこの市場でも同じのようです。
本年1月公表の群馬県仲卸施設表示調査のコメント。
「水産物は容器や容器の蓋を固定するテープ等に表示がされていることが多いですが、この場合、仲卸施設で陳列するに当たり、表示部分が外され、商品と一体的に管理されていないことが多く、不表示または口頭伝達になっており、適正表示率は71.1%です。外箱に表示された水産加工品についても内箱の状態で商品が陳列されるなど、表示部分と商品が一体的に管理されないことによる不表示がみられます。」
来年10月からは加工食品20群の原産地表示が、猶予期間を終わって実施になります。食品表示法令も頻繁に改正されていますし、今後は根拠書類の提示を求められますのでご注意のほど。
今回はJAS法関連表示調査について述べましたが、食品表示についての問題は食品衛生法、景表法・・・と種々の法令にまたがる、また表示側での印字ミスのようなものまで範囲が広いので一度で述べるには無理。後日、別な角度から述べてみることにします。

2005年11月19日<No.002>
ノロウイルス(感染症と食中毒)
今年も残り1ヶ月余り、寒くなる時期を迎えました。食中毒といえば夏場の暑い時期に発生するものと相場が決まっていましたが、最近は少し様相が違います。本年1月に発生した広島の老人保健施設のノロウイルス感染症は死亡者も出て世間を騒がせましたが、昨年12月には過去最高のノロウルス食中毒事故が発生していました。
感染症と食中毒、どこが違うのでしょう。それは、感染症は感染症法、食中毒は食品衛生法という行政による便宜上の区分けで、食水系感染症でくくってしまうと同じものです。ただ、食中毒と判断されれば行政処分が科せられ、感染症であればそれはない(不公平?)。
ノロウイルスでやっかいなのは微量の菌摂取で感染が成立してしまうこと。10月半ばに発生し、6人の死亡者も出ている香川・老人保健施設でのO−157食中毒事故やカンピロバクター食中毒なども同じで、最近の食中毒の傾向になっています。
ノロウイルスはヒトの腸内でしか増殖しない。腸内で増殖したノロウイルスは二つの経路で環境を汚染します。一つは糞便が下水として河川、近海を汚染し、沿岸部で養殖された二枚貝などに蓄積、それをヒトが摂取して感染する。これは生かき摂取等による食中毒事故。
その対策は? 三重県では浄化に加えて、調査結果をもとにした複数の事故発生要因の情報を公開しています(かきのノロウイルス検査だけでは安全担保にならない:平成15年12月横浜地裁判決)。ノロウイルスに関する情報は感染症発生動向調査、食中毒情報等がありますが、前者も発生要因に加えています。生かきは美味、何としても安全に食べられるものを提供したい。
二つめは汚染糞便、吐物がヒトの手などを介して環境、食品を汚染してヒトの口に入る。これは調理人が原因の食中毒、学校や各種施設での感染性胃腸炎など。
その対策は? 何と云っても手洗い。ただ、手洗いといっても人によって千差万別、正しい方法の会得が必要。うまく洗えているか、目で確認できる器具を利用した訓練も有効でしょう。そしてトイレを中心とした手の触れる場所の洗浄・殺菌など。
現在話題になっているインフルエンザなど冬はウイルスの季節。その要因として、ウイルスは低温環境で死滅しにくいことも挙げられる。
11月16日農水省から、マグロなどの不適正表示に対する措置が公表されています。次回は食品表示に関して述べてみたい。
2005年10月20日<No.001>
2007年問題
こんにちは。(有)アドバイザリースタッフの後藤正一と申します。
当社は「食品の衛生管理、品質管理のコンサルティング」を中心とした業務を行う目的の会社です。
PL法施行、雪印食中毒事件、BSE牛発生を契機として食の安全・安心への消費者の食に対する意識の変化や行政施策がめまぐるしく変化してきています。これらの変化に対応できなければ企業の存続は保証されません。中小業者は特にそう思います。
技術者を抱えられない食品関連業者さんは不安だろうと思います。少しでも不安を取り除けたら、また少しでも食品事故を減らせたらという熱き思いで業務を進めています。
コラムといえるかどうかわかりませんので雑記帳としました。私は技術屋出身、どちらかといえば熟慮型でコラムなどは苦手の部類。不定期にはなりますが月に1回程度は更新したいと思っています。 お読み頂いてご意見、反論などお寄せ頂ければ幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。
さて、ここにきて団塊の世代のリタイヤが始まる2007年問題が取りざたされています。その一つが日本の製造業を支えてきた技術屋のリタイヤ。食品関連企業もこの渦の中にあり、対応策をとるべき時期に来ています。
マニュアル、マニュアル。確かに均一な製品を作るには製造マニュアルは必要です。しかし、それは製品、製造プロセスを熟知した技術屋が作ったものでしょう。マニュアルでは対応できない不測の事態や新興感染症などの新たな問題は常に起こりえます。
平成12年、患者数1万4千人にも及ぶ食中毒事件が発生し、あの優良企業の雪印乳業は壊滅しました。経営者の対応のまずさが指摘されていますが、そればかりではないのでは。
それなりの技術者がいれば黄色ブドウ球菌食中毒の最初の発見が牛の乳房炎だったこと、エンテロトキシンが熱では壊れないことは容易に推測できます。雪印乳業では技術者は冷遇され、離散状態にあったとのこと(申し訳けありませんが聞いた話で事実は?)。
目先の利益に走りがちな世の中。一億円を稼ぐのも、一億円分のリスクを取り除くのも本来は同じ価値のはず。
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